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「AUTUMN」(Music Material)
by 岸波(葉羽)【配信2019.11.10】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 あなたのせいで、残りの人生楽しくなるなんて

 遅ればせながら、先週末、吉永小百合と天海祐希の『最高の人生の見つけ方』をケイコと観てまいりました。

 ところが・・・

 実は、ケイコはこの映画・・4日前に見てきたばかりだったのです!

 どうしてそんなことになってしまったのか?

最高の人生の見つけ方

(C)2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会

「ネ。小百合ちゃんの『最高の人生の見つけ方』を観に行かない?」

「ん・・あまり気乗りしないなぁ。何となく想像つくじゃない?アメリカ版の原作もあるし…」

「だったら一人で観て来るよ。どうしても今週中に行かなきゃいけないから」

「え、何で?」

「フォーラムのタダ券、期限が迫ってるの」

ええ~そんな理由!! ヾ( ̄0 ̄; )ノ

 ということで、ケイコが行って来たのですが、その後、映画がいかに良かったを語る事、語る事・・。

 つい・・・

「じゃケイコ、僕も行くから、もっかい行こ!」

 ~と相成った次第。

 さて、それではこの映画、どんだけ良かったか、始まりはじまり。

 

 映画の冒頭、JAXAの基地から宇宙ロケットが打ち上げられるシーンが。それを感慨深げに見上げながら一筋の涙を流す男(ムロツヨシ)。

 それ以上は説明されず、場面は転換してスーパーの売り場を俯瞰するシーンに。何やら吉永小百合扮する主婦北原幸枝が商品を見つめたまま固まっている。

 彼女が見ているのは「これを食べていればガンにならない」と書かれた食品。

 通りがかった母娘が怪訝そうに声をかけると、それでも反応が無いので去ってしまう。

幸枝(吉永小百合)

 実は幸枝(吉永小百合)はガンを告知され、これから家族に告げて入院する手はずを整えているところ。

 しかし家に帰ると、家事も何もせずただただテレビのお笑いを見るばかりのダメ夫(前川清)と中年に差し掛かって部屋に引き籠りバトルゲームに熱中する息子(駒木根隆介)という切ない現実が。

TVに興じる夫(前川清)

 結局、本当のことを言うことができず「ちょっと検査入院してくる」とだけ。二人は全く興味が無さそう。

 いや、これはキツイ。しかし当世、こんな家族は結構居るかもしれないと思いが至り、暗澹たる気持ちに。

(やはり観に来なかった方が良かったか?う~むぅ・・)

 一方、病院には、ホテル事業で大成功を収めた女社長剛田マ子(天海祐希)も入院してくる。

マ子(天海祐希)

 幸枝が大部屋なのに対しマ子は特別個室。しかしそこで事件が起きる。

実は、マ子もまた幸枝と同様、末期のガンなのですが。

 秘書の高田学(ムロツヨシ)がヘビースモーカーであるマ子に「院内では絶対にタバコを吸わないでくださいよ」と注意したにも関わらず、その目を盗んで喫煙…。

 これにスプリンクラーが反応し、マ子の居る階には一斉に天井から水が噴き出して場は騒然、阿鼻叫喚の巷。あらららら・・。

 この騒動をきっかけに、強制的に別の階に移動させられて、幸枝とマ子は二人部屋に入居することに。

幸枝とマ子

 そんな二人が病院の庭で歓談していると、一人の少女(神崎真梨恵:鈴木梨央)が通りがかり、辺りをうかがいながらタバコを取り出します。

「子供がそんなもの吸っちゃいけません!」と制止しようとする幸枝。

 タバコを吸うマ子と吸わない幸枝を指して…

「あなた達、吸っても吸わなくてもガンになったでしょ!関係ないじゃん!」と毒づく真梨恵。

 しかし、タバコを口にくわえようとした真梨恵はその場に倒れ、搬送される騒ぎに。幸枝がふと我に返ると、彼女のポーチが落ちている・・。

 後日、真梨恵に落とし物を返そうと小児病棟を探すと、そこには多くの子供たちの姿。

 ”病気で苦しんでいるのは自分たち大人ばかりではない”・・幸枝は子供たちの苦しみを知らず、あの時きつく言い過ぎたのではないかと後悔します。

真梨恵(鈴木梨央)

 そんな時に見つけた真梨恵の小さな弟。

「お姉ちゃんにコレを返したいんだけど、どこに居るの?」

「お姉ちゃんは死んだ」・・ショックを受け、言葉を失う幸枝。それでも真梨恵の落し物を返さなくてはと弟に渡そうとすると…

「もういらない。そんなの捨てて!」

 この弟君は、両親が病気の姉ばかり可愛がって、自分に構ってくれないことを恨みに思っていた様子。

 マ子と同室の部屋に戻り、ポーチを開けてみると、そこに入っていたのはお薬手帳。さらに見て行くと、そこに真梨恵が書き込んでいたのは…

「大切な人に好きだという」「スカイダイビングをする」「ももクロのライブを観に行く」等々・・果たせなかった少女の願いリストでした。

 かくして・・・

 幸枝とマ子は、自分たちの人生の最後に、真梨恵が夢見て果たせなかった願い事を代わりに果たそうと旅に出る決意をするのでした。

 以上が、ほぼ物語の導入部。こうして普通の主婦と富豪の女社長の大冒険が繰り広げられて行くのですが・・。

最高の人生の見つけ方

(C)2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会

 原案となったのは2007年12月に全米公開されたジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン主演によるアメリカ版「最高の人生の見つけ方」(原題:The Bucket List」。

 主人公を女性コンビに置き換え、現代日本に設定を移してリメイクされました。

 ちなみに日本版映画のロゴは、アメリカ版をリスペクトし、アメリカ版が国内で上映された時のロゴと同様になっています。

アメリカ版ロゴ

 ただ・・原作が非常に高評価の名画であったことから、日本版の公開に当たっては「原作の方がいい」・「原作と設定が違う」といった非難も受けました。

 僕は原作の方は観ていませんが、先入観を無くして観れば、日本版「最高の人生の見つけ方」も十分に感動できるハートフル・ストーリーであったと思います。

 特に、家事をしないダメ夫や中年引き籠りの息子など、現代日本の病巣(もちろん一部ですが)とでも言うべきテーマを織り込み、そこから翔いていく「普通の主婦」の行動はカタルシスのあるものでした。

「原作の方がいい」は個人的感想としても、「原作と違う」はむしろ褒め言葉として使うべきではないか、と僕は考えます。

 また、映画冒頭に登場し、ストーリー進行の中でも重要な役割を果たすマ子の秘書高田(ムロツヨシ)の熱演が凄い。この役はもう彼以外に思いつかないほどに。

マ子の秘書高田(ムロツヨシ)

 幸枝とマ子の二人旅行と言っても、どこで客死するか分からない女社長を放っておくわけにもいかず秘書高田(ムロツヨシ)も同行。

「スカイダイビングをする」では、本当に大丈夫かどうか、高田(ムロツヨシ)を先に蹴落として様子を見るシーンに大笑い。(おーまいがー!)

 コレ、本当にやったのかな? …やったんだろうな(笑)

最高の人生の見つけ方

(C)2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会

 そして驚いたのは「ももクロのライブを観に行く」で、本当に横浜アリーナで開催されているバレンタイン・イベントのライブに主人公たちが登場していたこと。

 もちろん、会場のモノノフ(ももクロファン)にも予め周知してあったのでしょうが、この会場の熱気と言うか大盛り上がりの様子がビシビシと感じられる。

 まあ、おそらくこの手のライブには決して行く機会が無いであろう僕ら夫婦としては、刮目のひと時でした。

ももクロライブにて

 よくアーティストの伝記映画でライブシーンが撮られることがありますが、おそらくその観客は動員されたエキストラ。

 しかし、この観客たちは本物のモノノフ・・熱量が絶対的に違う。

 そうした中で、秘書の高田(ムロツヨシ)も主人公二人をサポートすべく、舞台に上がって迫真の狂乱ダンス。凄いんですよココ!

 このライブシーンが見れただけでも、僕ら夫婦の"冥途の土産"です(大笑)

 彼もいい役者さんになりましたね。僕ら夫婦とも大好きなのです。

舞台で踊る高田(ムロツヨシ)

 以前は、超個性的で喋りまくる変なキャラクターが多かったと思います。例えばamazonのWebドラマ「宇宙の仕事」(2016年)。

 個性的という意味では佐藤二郎と双璧ではないかな?しかしムロツヨシの方は、よく見るとイケメン(笑)

 それでいて彼の目は一抹の気の弱さを感じさせるところがある・・つまり無理してオチャラケやっている。(それも演技かもしれないけれど)

 本当は気が弱くて他人の気持ちをソンタクするのに行動はオチャラケ・・そんなムロツヨシがズバッと嵌まったのが今回の「最高の人生の見つけ方」ではないでしょうか。(大好きだよ~ ムロさん!)

最高の人生の見つけ方

(C)2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会

 そして吉永小百合さん。この「最高の人生の見つけ方」で121本目の映画出演だそう。既に押しも押されもせぬ日本の大女優。

 だけど何でしょうね、この大女優感を感じさせないフレンドリーな佇まいは。

 多くの映画に出演しているけれども"演技派"と呼ばれることはあまりない。だけれども、幾つになっても多くの日本人に支持され続けている。

 きっとそれは、彼女が自分自身が持っている本来の優しさと印象の異なる役をずっとやらずに来ているからでしょうか。

 けれどもそれでいい。

 アクの強い役を演じられる役者さんはいくらでもいるでしょう。彼女が無理にそこに入っていく必要はない。

 逆に、彼女がそこに居るだけでホッとする・・内面の優しさがにじみ出てくる女優さんなどそうそう居るものではない。(いや、思いつかない…)

 だから敵も居ない。まるで聖母のような存在。まだ若い時に一時的にそう感じさせる女優さんは居るでしょうけれど、吉永小百合はそれをずーっと失わずに年齢を重ねている・・これは奇跡的なことではないでしょうか。

 だから、この映画の幸枝に誰もが共感する。

 え、アナタは共感しなかったって!? フッ・・まだまだだな(笑)

 そして一方の天海祐希さん。

 今回の役作りに当たって減量したのでしょうか、気は強いけれど”余命いくばくも無い”風情が良く出ていました。

実際、ストーリーの中でも幸枝より先に亡くなってしまいます。

 幸枝に共感して「願い事リストの旅」を決意した時、どのウィッグで出かけようかと今のウィッグを取り外すとそこは丸坊主だったのに驚愕!

 放射線治療の副作用という事なのでしょうが、まさか役のために髪を剃った??

 あまりの衝撃に二度見する前に場面が転換してしまったのですが、実際どうだったのか。

 いずれにしても、天海祐希さんも、幾つになっても本当に美しい人ですね。

最高の人生の見つけ方

(C)2019「最高の人生の見つけ方」製作委員会

 さてストーリーの方は、同志のマ子に先立たれ「願い事リスト」の最後の一つ『宇宙旅行をする』だけクリアできないままとなりました。

 しかし、そんな幸枝がマ子の秘書高田に呼び出されます。出向いてみると、マ子が莫大な遺産の相続人に幸枝を指定していたとのこと。

 もちろん受け取れないと強硬に拒む幸枝。

 しかし高田の説得により、相続した遺産を全部JAXAに寄付して火星行のロケットを建造し「サッチー&マ子号」と名付けることに。

 …ここで映画冒頭の打ち上げシーンに繋がるのですが、それを見送るのが高田一人であったことから、おそらく幸枝もまた帰らぬ人となったのでしょう。

 あるいは、火星ロケットの中には二人の遺影や遺骨が積み込まれているのかも知れません。

 打ち上げは成功。JAXAに湧き上がる歓声。

 そして高田は一人屋上で、ももクロライブのときと同じように踊りながら「イケー イケー!」と号泣。こちらまでもらい泣きしそうです。

 ああ・・ 久しぶりに日本映画で心が動きました。

(・・あれ! カリスマ彰と同じ終わり方だ!?)

 

/// end of the “cinemaアラカルト229「最高の人生の見つけ方”///

 

(追伸)

岸波

 ガンで余命宣告・・現実は重いですが、この映画には色々な形の”救い”があります。

 その一つ・・映画の終盤近くで祥子は少女真梨恵と再会するのです。

 "ええ~!"ですよね? 死んだはずなのですから。

 実は、姉に嫉妬した弟君がウソを付いていたというワケ(笑)・・幸枝は彼女の手帳を返そうとしますが"もういらない"と言われます。

「だって私、死なないから♪」

 少女は毎日の注射漬けという現実を克服し、それを嫌がらない事で自分の健康を取り戻していたのです。(ホントに良かったなぁ真梨恵ちゃん!)

 また、二人は「願い事」を達成するたびに少女の手帳のリストのハートマークを塗りつぶして行くのですが、マ子と幸枝のロケットが飛び立った時、手帳の最後のハートマークを塗りつぶした人物がいます。

 なんとそれは、あのダメ夫だった前川清。

 彼は、終盤の願い事エピソードの一つ「大切な人にありがとうを言う」で心から改心し、夫婦仲を修復。幸枝の本当の理解者となっていたのです。(いいシーンだなぁ、ココ!)

 しかもそれだけで終わらない。

 サッチー&マ子号が無事打ち上げられたニュースを勤め先で知って、心から喜んでいる人物が一人。何とそれは、あの引き籠りだった幸枝の息子でした。

息子:北原一慶(駒木根隆介)

 幸枝は自分の余命がいくばくも無い事、姉が妊娠していて(もしかすると結婚できなくて)シングルマザーになるかもしれない事実を息子に打ち明け…

「もしそうなったら、今度はあなたがお姉ちゃんと赤ちゃんを守ってあげて」と切々と訴えたのです。

 そうか、彼も心から立ち直って仕事に就いたんだ…。登場人物の誰もが救われる。誰も不幸にならない結末。感動です。

 最後に・・僕が最初のケイコの誘いを躊躇して行かなかったのには理由がありました。

 主人公たちと同様、ガンと闘っているケイコに、敢えて闘病者のストーリーを見せたくなかったからです。でもケイコは一人でも観に行った。そして僕にも見て欲しいと…。

 結果、この映画を観て本当に良かったと思っています。

 死は誰にでも必ず訪れるもの。だからこそ限りある人生を一生懸命生きる・・心に残る映画となりました。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

完成披露ジャパン・プレミア

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト230” coming soon!

 

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