こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
邦画史上最大の茶番劇。
いやいや、もうコレだけで笑っちゃいますよね~! GACKTと二階堂ふみのW主演による「翔んで埼玉」をケイコと観てまいりました。
監督はフジテレビドラマ制作センターの武内英樹。そう、あの「テルマエロマエ」や「のだめカンタービレ」などのメガホンを取り、イタリアウディネ国際映画祭マイムービーズ賞はじめ数々の受賞歴に輝いた日本屈指の演出家の一人。
面白くならないワケがないのです(笑)
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翔んで埼玉
(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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映画の原作は、「パタリロ」で知られる魔夜峰央の同名漫画作品なのですが、この「翔んで埼玉」が「花とゆめ・別冊」に連載されたのは、なんと1982年(昭和58年)という大昔。
「なんでそんな過去の作品が?」という疑問がわくでしょうが、その件に関しては後ほど。
どうでしょう? 「翔んで埼玉」の作画タッチ、時代を感じさせますね。
そして、W主人公の左が壇ノ浦百美(二階堂ふみ)、右が麻実麗(GACKT)。映画スチール写真と同じ形に並べてみました。
いずれも原作キャラの雰囲気が良く出ています。
では早速、映画の内容を。
映画の冒頭、両親と娘を乗せた白い車が埼玉の郊外っぽい田舎道をノロノロと進んでいます。
今日は娘の結納の日。同じ埼玉出身の彼と結ばれ、このド田舎から脱出して東京に新居を構えられる事を喜ぶ娘。その話を郷土愛・埼玉愛に燃える父親は苦々しく聞いています。
母親は埼玉県のライバル(笑)千葉県出身なので、どちらでもいいと思っている(大笑)
するとカーラジオから埼玉に伝わる都市伝説をテーマにした「翔んで埼玉」というラジオドラマが流れ始め、番組ファンの両親は熱心に聞き入ることになります。
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翔んで埼玉
(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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僕はこの出だしに大いに納得。というのも、テレビCMなどに流れた予告編では、東京都民に迫害されている埼玉県民が一人のヒーローのもとレジスタンスを仕掛けるという破天荒なストーリー。
もちろん舞台はこのリアル現代ではなく、パラレルワールド(並行世界)における架空の日本。
とは言え、そんな荒唐無稽な設定を真正面から投げかけられれば「どうせ何でもアリなんだろ」と引いて観てしまうのが人の常。
そこでこのような「作中作」の設定を用いれば、メタな立場の理性的な登場人物がそこに居ますので、「現実の中で起こる話」として一定の緊張感が生まれるのです。
この僕の解釈はもう一回ひっくり返されるのですけれども(笑)
作中作「翔んで埼玉」の世界では、神奈川県と都会連合を形成した東京都が域外との間に柵を設け、埼玉や千葉の域外から都内に出入りするためには関所で高額の「通行手形」を入手しなければなりません。
しかもどうやらこの「通行手形」、更新のたびに高額な更新料を徴取されるらしく、都市側にとっての大きな財源となっているらしい。
このあたり、トランプの「メキシコの壁」みたいで笑っちゃいますけど。まさかトランプ、「翔んで埼玉」を参考にしたんではあるまいな(笑)
境界の関所
都内側は摩天楼や高級市街地が広がっているのに対し、域外の埼玉側は一言でいえば「荒野」。あぜ道とぺんぺん草しかない(笑)
そんなんだから、もちろん医者も居ない。病気になったら祈祷師の所へ行くしかない(笑)
もしも都会にあこがれ、不法に関所破りをしたらどうなるか?
都内には、通行手形を持たない埼玉県人を一発で見分けるカメラを装備した特殊警察SAT(Saitama Attack Team=埼玉強襲部隊)が取り締まりを行っており、たちまち摘発されてお仕置きの上、強制追放の措置が取られるのです。
トランプ…。
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翔んで埼玉
(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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そんな中、アメリカから見目麗しき男子高校生:麻実麗(GACKT)がやって来きます。
彼は、歴代東京都知事を輩出している名門校白鵬堂学院、3年A組に転入するために帰国したのでした。
麻実麗(GACKT)
女子比率の高い白鵬堂学院ではイケメンの帰国に大騒ぎ。たちまち取り巻きが形成される。
そんな彼をよく思わない人物が一人。それは、現東京都知事の長男で同じ3年生に在学する生徒会長:壇ノ浦百美(二階堂ふみ)。
壇ノ浦百美(二階堂ふみ)←一応男子役
麻実麗(GACKT)がキャンパス内を見廻ると、掘っ立て小屋に隔離されている3年Z組という生徒たちを目にする。
聞けば、彼らは埼玉県人だけのクラスであり、姿が眼に入るだけで口が「サイタマ~」になってしまうので隔離しているとの事。
何たる侮辱。いわれなき迫害。
そんなZ組の女子生徒が病気に苦しんでリヤカーで運ばれてくると、生徒会長:壇ノ浦百美(二階堂ふみ)は「埼玉県人に与える薬などない!その辺の草でも喰ってろ!」と。
……。
これを見ていた麻実麗(GACKT)は、そっと掘っ立て小屋を訪れ、持っていた薬を分け与えるのでした。
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翔んで埼玉
(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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生徒会長:壇ノ浦百美(二階堂ふみ)は、女子生徒の人気を集めるイケメン麻実麗(GACKT)が気に入らない。
父である都知事:壇ノ浦建造(中尾彬)に諫言し、麻実を退学させようとしますが、麻実は大手証券会社社長の御曹司で巨額の寄付金を収めているからできないのだと。
都知事:壇ノ浦建造(中尾彬)
一計を案じた壇ノ浦百美(二階堂ふみ)は、生徒会総会の場で在校生に麻実麗(GACKT)を紹介がてら、『東京空気テイスティング』で恥をかかせようとする。
『東京空気テイスティング』…それは、ワインのテイスティングのように瓶詰の空気を嗅いで、それが都内のどの街のものなのかを当てるというクイズ。
いやいやいや、絶対無理だろ、ソレ!
しかも麻実はアメリカ帰りの帰国子女。そもそも現在の東京の空気なんて分かるはずないじゃん。
しかし… 全問正解です(大笑い)
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空気テイスティング
(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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百美(二階堂ふみ)は異能の帰国子女麻実(GACKT)に次第に惹かれていくようになります。(男同士だけど)
しかしそんなある日、大事件が発生。突如公園で鳴り響く「サイタマ警報」!
早速、特殊警察SAT(埼玉強襲部隊)が出動すると、カメラが判別したのは、何と麻実家のお手伝いさん。彼女をかばおうとする麻実(GACKT)。これが悪かった。
麻実(GACKT)はSAT(埼玉強襲部隊)から追われる身となり、彼に心を許した百美(二階堂ふみ)は一緒に逃避行をすることに。
麻実に惹かれる百美
実は、麻実(GACKT)は『埼玉解放戦線』の主要メンバーで、いつか東京都知事となって通行手形を廃止することを目指していました。
執拗に彼らを追いかけるのはSAT(埼玉強襲部隊)ばかりではありません。壇ノ浦都知事(中尾彬)の命を受けた執事の阿久津(伊勢谷友介)が率いる特殊部隊も。
実は阿久津(伊勢谷友介)は埼玉同様に迫害を受ける千葉県民で、千葉解放戦線を率いる首領。埼玉の方法論とは異なり、東京にすり寄ることで通行手形の廃止を目論んでいたのです。
執事の阿久津(伊勢谷友介):千葉解放戦線
千葉解放戦線の手によって追いつめられる麻実と百美。遂に、魔の手に堕ちる時がやってきます。
その時… 突如現れた白馬の侍装束!(と、オートバイの一団)
彼こそは、埼玉解放戦線を組織した伝説の埼玉県人:埼玉デューク(京本政樹)。20年前に正体を暴かれ、行方不明となっていた都市伝説の人物。
その活躍によって窮地を脱しましたが、一難去ってまた一難。今度は百美が埼玉風土病「サイタマラリア」を発症。
止む無く戦線から離脱して家に帰るのですが、そこで百美は、父の壇ノ浦都知事と神奈川県知事(竹中直人)の密談を耳にし、「通行手形」制度の陰に潜む闇を知ることになります。
果たして、埼玉解放戦線の命運は?
そして、麻実と百美(男同士です)の愛の行方は!!?(笑)
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翔んで埼玉
(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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もともと、魔夜峰央が「翔んで埼玉」を37年前(1982年)に連載した時、ストーリーは未完のまま中断しています。
連載は「花とゆめ」(白泉社)1982年冬の別冊、1983年春の別冊・夏の別冊の3回のみで中断。
当時、彼は埼玉県所沢に住んでいましたが、近所には編集長と白泉社編集部長が住まいを構えており、連載中の「パタリロ」の打ち切りをいつ通告されるのか、ストレス極まる中で描いてしまった(笑)のが本作。
魔夜峰央氏は「AERA dot.」のネットインタビューで次のように答えています。
「あれは一時的な気の迷いだったんでしょうね。錯乱していたのかもしれない。おっかない看守がふたりいて、独房の片隅で何とか自分を発散したい、ここから逃げ出したい!と、もう半狂乱で描いていたんでしょうね。相当追い詰められていたのではないかと。」
魔夜峰央氏(と奥さん)
ちなみに、原作の中では茨城県も埼玉県以上のディスられ方をしているのですが、それは奥さんが茨城県出身だったため。(映画版で茨城県は登場しない)
「身内の地元なら少しくらいおちょくってもいいか」と考えたそうですが、その後、奥さんの親戚から猛クレームを受けたそうです(笑)
時は流れて2015年。ネットで「翔んで埼玉」の衝撃的な内容が口コミで広がり、宝島社から復刊されることに。
刊行後、たちまち50万部を売る大ヒットとなり、実写化される運びに。宝島社では舞台となる埼玉県や所沢市などにお伺いを立て、埼玉県知事上田清司は『悪名は無名に勝る』と御墨付きを与えたのは有名な話。
埼玉県知事:上田清司
映画広報でもちゃんと謝っています(笑)
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翔んで埼玉
(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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さて、百美が暴いた「通行手形」の真実。歴代東京都知事は、手形から生じる巨額の収入を懐に入れ、それを金塊に換えて秘密の場所に埋蔵していたのでした。
その隠し場所として怪しいのは、埼玉よりさらに奥地の群馬。
群馬県は密林状態で、未確認生物の巨大な足跡が発見されたり翼竜が飛び回るデンジャラスな土地。このため行き来が厳しく制限されている。
単身潜入した百美でしたが、ゴリラのような未確認生物に捉えられ、火あぶりの刑(というか単なる食糧?)の危機に。
ところがどっこい、終業のベルが鳴るや、未確認生物たちは着ぐるみを脱ぎ捨てて「あ~今日も終わった」と。
つまりコイツら、都知事に雇われたエキストラで、埋蔵金の洞窟に人間が近づかないように演出をしていたというオチ。
さあ、この真実を埼玉解放戦線の麻実に伝えねば!
一方、麻実の方では、阿久津(伊勢谷友介)が率いる千葉解放戦線の大部隊が県境へ向かって進攻している情報を得、埼玉解放戦線の各支部長を招集して、迎え撃つ準備を。
ところがコイツら、もともと郷土愛なんか無いものだから、誰もが闘いに腰が引けている。あまつさえ、所沢と大宮は埼玉ナンバーワンの地位を巡ってケンカを始める始末。ホント、どーしよーもない連中なのです。
みんな引き上げようとした所にやって来たのが3年Z組の面々。
3年Z組下川信男(加藤諒)
東京で自分たちが、いかに悔しい思いをしているか、本当はどんなに故郷埼玉を愛しているか、心を一つにする大切さを切々と訴えたのです。
いやぁマジ、ここで涙が流れました。恥ずかしいですが。(うっうっ・・)
下川の訴えで心を一つにした埼玉解放戦線。千葉解放戦線の大部隊と県境の川を挟んで対峙します。
場は一触即発!!! 百美の情報は間に合うのか!?
この対決シーン、大笑いです。
いや別に、肉弾戦を繰り広げるとかではなく、互いの県出身の有名人を幟に掲げて競い合うという…
ちなみに千葉解放戦線が出してきたのはX JAPANのYOSHIKI(笑)
交互にカードを切りますが、ちょっと弱めのタレントとか出てくると味方からブーイング。
で、千葉県側が「家政婦は見た」の市原悦子を出してくると「おおー!!」という埼玉側の感嘆の声に加えて、「ホントはちょっとリスペクト」みたいな呟きも(大笑)
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千葉解放戦線
(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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言ってみれば、こんなバカバカしいストーリーなのですが、そんな役柄を誰もが大真面目に演じている。そこが凄い。
徹底的にバカバカしいストーリーは徹底的に本気で演じるのが吉ではないでしょうか。
逆のパターンで思い出すのが小栗旬の「銀魂」。この映画、役者たちが役柄ではなく素の自分に戻って茶化し合う(ように演出した)シーンが満載でした。
それはそれでウケると思うのですが、ストーリーや世界観に没入するということはありません。テレビでお笑い番組を見ているような気分なのです。
しかし「翔んで埼玉」はみんな本気。むしろそこが可笑しくてしょうがない。
よくぞやってくれましたとエールを送りたいです。
また終盤のサプライズは、事件解決後、婚約会場に到着した3人の親娘が、車から降りようともせずにラジオドラマのエンディングに感動して嗚咽する婚約者を発見して以降の流れ。
漫画には、そもそもこの「現実パート」は存在しないのですが、ここから後、埼玉解放戦線の物語は都市伝説などではなく、実際に過去にあった英雄譚を描いたドラマであったことが判明します。
すなわち、ラジオドラマを聞いた埼玉県人が、過去の英雄たちの所業に触れて郷土愛を取り戻すところまで含めて「作中現実」だったのです。
これにはすっかりしてやられました。降参です。
そんな二重構造、三重構造のこの話。クライマックスでは、東京=神奈川の陰謀に気づいた埼玉解放戦線と千葉解放戦線が手に手を取り合い都庁へ向かって進撃を開始します。
迎え撃つ機動隊の盾軍団。
彼ら、虐げられた民衆の叫びは天に届くのか!!!
はたまた麻実と百美の愛の行方は!? ←(またかよ)
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翔んで埼玉
(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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まあそんなワケで、捧腹絶倒のこの映画。邦画の流れは「カメ止め」からはっきりと潮目が変わって来たような気がします。
最強の敵(ライバル)同士が最後には手を取り合って巨悪に挑むという姿も、RPGの鉄板スト-リーみたいで最高!
これは抑えておいた方がいい映画ですよ。
/// end of the “cinemaアラカルト214「翔んで埼玉」”///
(追伸)
岸波
映画のエンディングで、はなわ君が歌う「埼玉県」という歌が流れます。
この歌詞がまた最高に笑かしてくれます。
最初の「だんだんだんだだんだーん だんだだ埼玉」は「ダサイタマ」と聞こえるし、「どんなに歩いても海がない」のところは、映画の中でも埼玉県人の最大のコンプレックスになっています。
どうしても海を求めたくて、埼玉から太平洋まで三代にわたり地下水路を掘って海を引き込もうとしたエピソードとか(笑)
やっと太平洋に届いたと思ったら「淡水だー!」って、霞ケ浦だったり(笑)
はなわ:テーマソング「埼玉県」
一番腹を抱えたのは、「巨乳好き男性」が日本一多いのは埼玉県、だけど埼玉県の「貧乳率」は日本一、いつでもすれ違い~ みたいな部分(笑)
あと、劇中で捉えられた麻実が踏み絵ならぬ「埼玉名物・草加せんべい」、しかも埼玉マスコット、シラコバトのイラスト入りを踏めるか踏めないかで大騒ぎするトコ。
そう言えば、埼玉解放戦線があいさつ代わりに交わす「さいたまポーズ」もツボでしたね~ (エンディングでたくさん出てくる)
もう、最初から最後までネタが詰まっているので、油断大敵。悲しい気分のときには絶対推奨の映画ですね~ 一発解消!(大笑)
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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さいたまポーズ
(C)2019 映画「翔んで埼玉」製作委員会
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be continued⇒ “cinemaアラカルト215” coming
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