こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
盗んだのは絆でした。
先週土曜日、本年のカンヌ映画祭で最高賞のパルムドール賞に輝いた是枝裕和監督の「万引き家族」先行上映会にケイコと行ってきました。
是枝監督と言えば2013年「そして父になる」、2015年「海街diary」、2017年「三度目の殺人」など家族の絆、そして人間の絆を描いてきた人物。
実は2009年の「空気人形」(意識を獲得したラブドールの人間以上の献身と純愛を描いた作品)が好みだったりしますけれど。
さて、今回はどのような「絆」が描かれるのか?
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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いつものように、先入観を持たないよう「事前情報」をシャットアウトしての鑑賞。まあ、今回は先行上映会なので、ネット情報がたまたま目に入ってしまうということも少なかったのですが…。
「万引き家族」というタイトルから受けた第一感は、「ひき逃げファミリー」や筒井康隆の「ウィークエンド・シャッフル」のような家族をテーマにしたハチャメチャのコメディーかなと。
それでもって、最後にはホロリとさせられるチャップリンのような人情喜劇ではないのかと。
いやぁ…よくよく考えてみれば、エンターテインメント映画を撮らない是枝監督がそういう映画を撮るわけは無かったのですが(爆)
さて、実際の内容は?
映画の冒頭、父:柴田治(リリー・フランキー)と息子:祥太(城桧吏)のコンビによる早速の万引きシーン。
リュックを背負ってスーパーに入った息子が盗み役で、父は店員の目線を遮るスクリーン役。
チャンス到来という場面で、息子の祥太(城桧吏)は指を組み合わせて不思議な動作を始める。どうやらコレは、盗みモードに入る時の「おまじない」のようであります。
さて、見事な連係プレーで品物をゲットした二人は意気揚々と引き上げていく。
…はい、この辺まではまだ「ハチャメチャ・コメディー」だと思って観ていたのです。
ところがっ!!?
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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帰り道の寒空の下、アパートのベランダに締め出されている小さな女の子を発見。
「またか…」という感じで手を差し伸べ、その子を家に連れて帰る二人。いやいやいや、ちょっと待ってください。いくらなんでもそれは「誘拐」でしょう??
家に帰るとそこに待っていたのは、祖母の初枝(樹木希林)、妻の信代(安藤サクラ)、長女の亜紀(松岡茉優)。
佐々木みゆ
痩せこけて薄汚れた女の子ゆり(佐々木みゆ)の身体をぬぐってやると、いたるところにある痣やヤケドの痕…。親から虐待されていることは誰にでも分かる。
治(リリー・フランキー)や祥太(城桧吏)は、すでにその事を知っていたらしく、腹ペコの女の子ゆり(佐々木みゆ)に食事を与えます。
「今日は泊っていく?」との声かけに「そりゃあ誘拐でしょ?」と、止めるわけでもなく笑う長女。なんか空気感がおかしいぞ??
事ここに至り、観客の誰もが「コメディ映画」では無いことに気づくはず…。
あ、それは僕だけか(笑)
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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住んでいるボロ家の様子からも分かるように、この一家はとても貧しい家族なのです。
父の治(リリー・フランキー)は建設現場の日雇い人夫、妻の信代(安藤サクラ)はクリーニング屋のパート、長女の亜紀(松岡茉優)に至っては覗き部屋のランジェリー嬢のバイト。
息子の祥太(城桧吏)は「学校に行くヤツは、家で勉強ができない可哀そうな奴ら」という言いつけを信じている非登校生徒(不登校にあらず)。
ある程度まとまって収入があるのは、祖母の初枝(樹木希林)の年金のみ。足りない生活費は親子コンビの万引きで糊口をしのいでいるのでした。
数年前でしたか、亡くなった親の死を隠して年金をもらい続けた事件が次々と明らかになって社会問題となりましたが、是枝監督の創作のきっかけもまさにその事件だったのです。
是枝監督はこう言っています。
「数年前に、日本では亡くなった親の年金を受け取るために死亡届を出さない詐欺事件が社会的に大きな怒りを買った。はるかに深刻な犯罪も多いのに、人々はなぜこのような軽犯罪にそこまで怒ったのか、深く考えることになった。」(カンヌ公式上映後、韓国メディア中央日報のインタビューにて)。
是枝 裕和監督
一億総中流社会と言われた時代も既に遠い過去。競争を是とする新自由主義政策によって二極分化が進行し、終身雇用制度も崩れて、非正規職員の増加、貧富の格差拡大…。
僕は労使問題の調整や障害を持ちながら職業人を目指す子供たちの支援を仕事としてきましたので、あの「万引き家族」が虚構の世界のことでは無いことが痛いほど分かります。
でも、この家族たちは誰もが明るい。(お金は無いのだけれど…。)
そんな中で、ふいに治(リリー・フランキー)が息子祥太(城桧吏)にかけた言葉に衝撃が。
「まだ、お父ちゃんと呼んでくれないのか?」
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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そうなのです。
実はこの家族は、実の血縁関係で結ばれた一家ではなく、寄る辺ない他人同士が集まって共同生活をしている「疑似家族」だったのです。(ええ~)
それが明らかになると、虐待されていた女の子ゆり(佐々木みゆ)が家に居続けることになった時、「誘拐だよね~(笑)」と軽く言っていたセリフがストンと落ちました。
やがて、ゆり(佐々木みゆ)も親子の万引きチームに加わって役目を務めるようになり、遂には、治(リリー・フランキー)が居ないときに兄妹で駄菓子屋から万引きをするようになります。
リリー・フランキー
この辺りになりますと、この先のストーリーがどう展開されるのか心配でなりません。
昔、アーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」で、ボニーとクライドがシャレで実行した銀行強盗が成功し、調子に乗って犯罪を重ねるうち有名人となり、最後は警官隊の銃弾をハチの巣になるくらい浴びて死んでいくというコメディー・タッチ&終盤の暗転ストーリーに度肝を抜かれましたが、この人情映画の「必ず破綻するであろう将来」に心が重くなったのです。
そして「家族」それぞれの秘められた過去が語られて行きますす…。
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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心にグサッと刺さるシーンがありました。
覗き部屋のランジェリー嬢をしている長女の亜紀(松岡茉優)に馴染みの客がやってきます。
こうした部屋の仕組みを初めて知ったのですが(ホントです!:真顔)、マジックミラーのこちら側で卑猥なポーズを客に見せながら語り掛け、お客の返事はホワイト・シートに文字で書いたものをガラスに近づけると見える(客の姿は見えない)のですね。
なじみの客には「その上のコース」を提案するという事になっているらしく、「別室に行って直接私に膝枕しませんか?」というような誘いをかける。(ふむふむ、なるほど…)
しかして、その若いお客さんは提案を受け入れ、「別室」に移動することになります。
松岡茉優
若い男性がランジェリーの生太ももに直接膝枕するシーンのエロさに、還暦過ぎのオジサン(僕)もドキドキ。
「ここではお話してもいいのよ♪」
嬉しそうに話しかける亜紀(松岡茉優)に何故か一言も発しない男性客…。
再三の声掛けに遂に言葉を話そうとする彼…。
「ヴォ・・・くっ・・・・あ・・・・・」
ハッと気づきました。この男性は聾唖者だったのです。
おそらくその会話の不自由さゆえガールフレンドなどには縁がなく、なけなしの給料をぶっこんで、この覗き部屋に癒しを求めてきたのでしょう。
思わず胸が詰まりました。
彼と同じような境遇の若い男性は、世の中にたくさん居るはず。ともすれば一生、若い女性に近づくチャンスが無かったかもしれない彼らに、こういう機会を与えている…覗き部屋のそういう側面に思いが至ることはありませんでした。
その時、彼の事情に初めて気づいたはずの亜紀(松岡茉優)の行動に胸が打たれます。
彼女は彼を涙ながらにギュッと抱きしめ、愛おしむように頬ずりするのでした。
その行動の意味は、後に明らかになります。
三兄弟
実は亜紀(松岡茉優)は実の両親と妹の4人家族。しかし(映画の中では事情は明かされませんが)両親の愛は妹にだけ注がれ、彼女は愛されずに育ったのです。
そして彼女は、ある時、家から失踪し、年金暮らしの独居老人初枝(樹木希林)の家に転がりこみ、今では実の孫のように初枝に可愛がられています。
しかし実の両親は、「亜紀(松岡茉優)は海外へ留学している」と偽り、失踪の事実を気に掛けるでもなく、相変わらず妹を溺愛しています。
もしかして実の子ではないのか?はたまた前妻の子とか…いずれにしても、映画の中では事情は語られません。
肉親の愛に飢え続けた亜紀(松岡茉優)は、聾唖者の男性に自分と似たような境遇を見て、彼を抱きしめたのかもしれません。
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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一方、初枝(樹木希林)は夫に捨てられた過去があり、その夫は別の女性と結婚して孫までいました。(すでに亡くなっていますが。)
昔の夫の墓参りがてら、お線香を上げに、その息子と嫁の家に立ち寄る初枝…。夫婦は、帰りがけにお金を入れた封筒を渡します。
若夫婦にしてみれば、初枝は父親の前妻というだけで赤の他人。しかし、父が彼女を捨てたという負い目があるからか、訪問のたびにお金を包んでいるようです。
これはある意味、ユスリ・タカリのような…。
実は、その夫婦には二人の女の子がおり、上の娘は「海外に留学している」と。
そうです!
この若夫婦の長女こそ、初枝(樹木希林)のもとに転がり込んでいる亜紀(松岡茉優)その人なのです。
初枝にとって、この裕福な家族からお金を受け取る行為は、自分を捨てた前夫へのささやかな復讐、亜紀を預かる迷惑料(夫婦は知らないが)…いろいろな意味があるように思います。
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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「万引き家族」の生活にさざ波が立ち始めます。
まずは、父・治(リリー・フランキー)が現場作業中の事故で足を負傷し、働けなくなります。
そして、妻の信代(安藤サクラ)は、クリーニング屋のリストラ候補者二人のうちの一人となり、両者で話し合ってどちらが辞めるか決めるように言われます。
生活がかかっているので、どちらも譲れません。そこで相手が切り札を出してきます。
「あなたが辞めてくれたら、ナイショにしてあげるわよ。こないだテレビにでてた失踪した女の子って、あなたのところに居るでしょう?」(ええ~)
家族の秘密を握られ、やむなく同意する信代。こうして夫婦とも無職状態に。
安藤サクラ
歩くのが不自由になった治(リリー・フランキー)を家において、幼い兄妹は万引きに…。
いつもの駄菓子屋でわずかなお菓子を盗むりん(※報道されてから付けられたゆりの新しい名前:佐々木みゆ)。スクリーン役は兄の祥太(城桧吏)。
うまくいったと店を立ち去ろうとする二人を駄菓子屋のオヤジ(柄本明)が呼び止めます。ドキリとする兄妹。
「これを持ってけ」 …二人にお菓子を渡すオヤジ。
そして、祥太(城桧吏)に言います。
「妹にはコレ(盗むときのおまじないのジェスチャー)をさせるんじゃないぞ。」
…すべて見抜かれていたのです。
「売る前の品物は、まだ誰のものでもない。」
「店が潰れないくらいなら、いくらやってもいいんだ。」
治(リリー・フランキー)の教えは無茶苦茶ですが、祥太(城桧吏)は悩み始めます。
そんなある日、家族は海へ海水浴に出かけました…。
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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夜のシーン、ボロ家の中のシーンが多いので、ここは打って変わっての明るいシーンとなります。
しかし、生活にさざ波が立つ中での明るいシーン…これは逆に「ローソクの炎が消える前の煌めき」と容易に想像が付きます。
本当の家族のように、楽し気で屈託なくはしゃぐ親子。それを砂浜から見つめる初枝(樹木希林)。彼女は小さくつぶやきます。
「ありがとう…」
フラグが立ちました。
そしてその夜… 初枝は帰らぬ人となります。
動転する家族。でも問題は、この家族には葬儀を出すお金など無いこと…。
「しかたない。床下に埋めよう…」
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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思うのです。
数多い年金搾取事件の中には、こんな切ない事情を抱えた家族もあったのではないかと…。
セーフティ・ネット? 生活保護?
破局の後、治(リリー・フランキー)が取調室で独白します。
「俺に教えてやれることといったら、万引きくらいしかなかったんです…」
制度があってもそんな教育は親自身が受けていない。誰も手を差し伸べる人がいない。セーフティ・ネットから零れ落ちる人は必ず居るのです。
現に、収入の道が途絶えたことで絶望し、将来をはかなんで命を絶っていく貧困家庭の事件はいくらでも起きているのですから。
だからと言って万引きという犯罪を肯定するものでもありませんし、政治が悪い・社会が悪いと糾弾する気もありません。
この映画の上映後、「犯罪を肯定する映画だ」とか「安倍政権を糾弾する映画だ」などと決めつける意見も見られますが、僕はそういうメッセージ・ムービーだとは思いません。
誰にも手を差し伸べられない中で、それしか生きていく方法がない。しかもそれは、必ずどこかで破綻する。こういう「不条理」が現実の中に厳然と存在する。
…まずはそのことを、そのまま受け止めるしかないと思います。
少なくともそうすることで、社会の出来事や人々の振る舞いを、今までとは別の目で見ることができるようになるでしょう。
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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「万引き家族」の本当の破局は、思わぬことから始まりました。
兄妹がスーパーに行ったとき(この日は万引きのためではなかったのだが…)、りん(佐々木みゆ)がお菓子の前で「おまじないのジェスチャー」をしているのを祥太(城桧吏)が見つけます。
思わず止めようとする祥太。しかし、りんはお菓子をポケットに入れて店を出ようとし、店員に呼び止められます。
焦る祥太。
祥太は、店員たちの目の前で山積みの缶をひっくり返すと、その一つを(見えるように)手に握って逃げ出します。
一斉に祥太の方を追いかけ始める店員たち。
城桧吏
彼なりの精いっぱいの判断。自分を犠牲にしでも妹を救いたい…。
坂道で挟み撃ちになった祥太は、ガードレールを越えて崖の下に落ちてしまいます。
大けがを負った祥太は病院に担ぎ込まれ、事件を知った治(リリー・フランキー)たちは、すべてが露見することを恐れて夜逃げするしかないと…。
しかし、天網恢恢疎にして漏らさず…家族が家を出たところで、駆け付けた警察官らに包囲されてしまいます。
しかも…
家宅捜索の過程で不審な床下の土盛りが露見し、そこから初枝の遺体が。
一家には、殺人と年金搾取の疑いがかけられ、マスコミにセンセーショナルに報道されることになってしまいます。
取り調べの過程で、治(リリー・フランキー)の本当の名前は祥太であったことが明らかとなります。
つまり、親から愛されることが無かった治は、祥太(城桧吏)に自分の名前を付けて愛情を注いでやろうとしたのではないでしょうか。
また、長女の亜紀(松岡茉優)は覗き部屋でバイトするときの源氏名を「さやか」と名乗りますが、これは実の両親が溺愛した妹の名前と同じでした。
妹のように人に愛されたかったのか、それとも別の意図なのか…。
いずれにしても「万引き家族」の名前の付け方ひとつにも、是枝監督の思い入れが見えてきます。
夫婦の治や信代という名前も初枝の実の息子と嫁の名前と同じであるとか、りんは信代の親友の名前だったとかの諸説もあるのですが、映画の中では確認できなかったような…。
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万引き家族
(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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『犯罪でしかつながれなかった』
この映画の創作を発想したとき、是枝監督は、このようなキャッチコピーを思い浮かべたといいます。
思えば「三度目の殺人」では、実の親による虐待が殺人の動機になり、また「海街diary」は「家族を捨てた父が、のこしてくれた家族。」…血の異なる異母4姉妹の物語。
さらに「そして父になる」では、実の家族と取り違い家族の葛藤がテーマとなっていました。
つまり、是枝監督は「血の繋がらない家族の絆」と「血縁で繋がった家族の悲劇」をずっとテーマとして追い続けているように思います。
結果的に「犯罪でしかつながれなかった」疑似家族が崩壊し、虐待を受ける実の両親のもとに戻されることになったりんは、本当に幸せと言えるのでしょうか。
万引き家族は本当に「犯罪でしたかつながれなかった」のか。
死の直前、海のシーンで初枝がつぶやく一言が耳に残っています。
「ありがとう…」
/// end of the “cinemaアラカルト202「万引き家族」”///
(追伸)
岸波
事件によって引き裂かれる家族。
鑑賞後の気持ちはかなり重いものになりました。
特に、信代(安藤サクラ)には(正当防衛ではあるが)夫を殺めた過去があり、死体遺棄の罪を負えばかなりの刑を覚悟しなければならないのに、「家族」を救うために自分だけで遺体を埋めたと証言し、一人獄に繋がれてしまうのです。
そうするしかなかったのに何という不条理…。何という重さ…。
でも、ある意味この映画は、不条理を理解するフランス人好みのストーリーという気もします。
僕も若い時には、それなりに文芸作品や問題作というのも観てきましたが、歳をとるにつれて「ワイワイ泣ける」とか「スカッとする」とかシンプルに感動できる作品を好むようになりましたね。
だって、せっかくお金払って時間を過ごすのですから、頭を抱えてしまうようなものは今更…と考えるのです。うん、残り人生少ないし(笑)
そういう意味で、この「万引き家族」は爺さん婆さん(失礼!)よりも、むしろ若い人たちに観てもらって、いろいろなことを考えるきっかけにしてほしいと思います。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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be continued⇒ “cinemaアラカルト203” coming
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