こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
愛する妻の命を取り戻すため、
夫は黄泉の国へ旅に出る――
うわ~このキャッチコピー「イザナギ・イザナミ神話」そのものじゃないですか。あるいはギリシャ神話の「オルフェウス」。まあ、その通りなんですが(笑)
昨年の大晦日、安倍首相が昭恵夫人と共に観に行ったという「DESTINY 鎌倉ものがたり」をケイ子と観てきました。
安倍首相は山崎貴監督の作品がお気に入りということで、2005年の日本アカデミー賞監督賞を受賞した「ALWAYS 三丁目の夕日」もきっと観ていることでしょう。
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DESTINY 鎌倉ものがたり
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会 |
原作は「三丁目の夕日」と同じ西岸良平で、1984年から「漫画アクション」で連載が始まり、2000年12月の「まんがタウン」創刊と共に移籍し、現在も連載が続いている人気作品。
主人公は鎌倉に住むミステリー作家の一色正和とその妻の一色亜紀子で、鎌倉が「この世とあの世の境にある町」とされ、幽霊や魔物、果ては宇宙人まで登場するユーモア・ミステリーです。
(取り上げられる事件自体は、けっこう凄惨な話だったりもしますが。)
その主人公二人を演じるのが、堺雅人と高畑充希のNHK大河・朝ドラコンビ。
そこに、編集者の本田(堤真一)やお手伝いさんのキン(中村玉緒)ほか三浦友和、薬師丸ひろ子など「三丁目の夕日」レギュラー陣、死神役で好演する安藤サクラなど芸達者が脇を固めています。
なお、中村玉緒は齢78歳にして始めての現代劇出演となりました。ま、これまで無かったことの方が不思議ですが。
さて、本編の内容は??
映画の冒頭、ミステリー作家の一色正和(堺雅人)とその妻亜紀子(高畑充希)が新婚ホヤホヤで、これから暮らす鎌倉の旧家を訪れるシーンから始まります。
はい、このシーン、アツアツ。見ていて気恥ずかしくなるくらい。
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DESTINY 鎌倉ものがたり
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
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亜紀子はもともと正和の担当で配属された出版社の新人編集者。最初の出会いからピンとくるものがあり、あっという間に結婚へ結びつきます。
でもこれには伏線があり、前世も前々世も、ずーっと二人はずっとカップルで、輪廻転生を繰り返しながら何度も夫婦を繰り返しているのです。
そして、そんな二人の恋路を邪魔し、亜紀子を我が物にしようと画策している魔物「天頭鬼」が介入して来ます。
(結果的には常に正和が勝利し、二人は結ばれている。)
西岸良平「鎌倉ものがたり」
そして、二人が住む鎌倉は「この世とあの世の境」にある町。
道を歩けば、河童や小さな魔物が駆け抜けるという不可思議に満ちた場所。亜紀子はその都度仰天しますが、正和はいたって平気。
それもそのはず、これまでの事件に絡んで何度も魔物や幽霊と遭遇しているばかりか、鎌倉に存在する「魔物の警察署」に協力し、魔物が絡んだ幾多の難事件を解決しているからです。
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DESTINY 鎌倉ものがたり
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
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そんな「魔物と人間が共存する町」に次第に順応していく亜紀子でしたが、ある時、正和と共に迷い込んだ「夜市」で買った「魔界マツタケ」を食べてしまった事から、「肉体から魂が抜けやすい体質」に。
(実は、これを売りつけたのも「天頭鬼」の手下。)
正和が行きつけの飲み屋「静」に居る時に、急な連絡のため駆けつけようとした亜紀子は途中の石段につまづき、その拍子で魂が飛び出してしまう。
それにも拘わらず、そのまま正和の元に急いで(魂だけで実体化できる)、後から身体のあった場所に戻ってみると、亜紀子の肉体は影も形もなくなっていたのです。あらららら・・。
(石段で足を取ったのも、魂の抜けた身体を持ち去ったのも「天頭鬼」の手下。)
静(薬師丸ひろ子)
途方に暮れる亜紀子。とりあえずは、魂のままでも正和と一緒に居られると考えた亜紀子は、そのようにして暮らしていきますが、何故か正和が日に日に衰えて行くのです。
その理由を死神(安藤サクラ)から告げられます。
魂のままでこの世に実体化しているためには、「身近な人」の生気(寿命)を消費しなければならないのだと。う~むぅ…。
死神(安藤サクラ)
意を決した亜紀子は、正和の寿命を守るために「あの世」へ行くこととし、夜、江ノ電に現れる「幻の駅」から死神と共に旅立って行くのでした。
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DESTINY 鎌倉ものがたり
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
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本筋と並行する形で、いくつかのサイド・ストーリーが。一つは、一色家の三代に仕えているというお手伝いさんキン(中村玉緒)の登場。
日露戦争で夫を亡くしたと言ってますから、どう考えても年齢は百数十歳。幽霊とか「この世のものでない」モノたちとも普通に会話したりしているので、少なくとも半分は「人間」ではないのでしょう。
キン(中村玉緒)
また、「月刊推理」の正和担当の編集者(元・亜紀子の上司)である田中(堤真一)は不慮の死を遂げた後、カエルの魔物に転生して正和の前に現れるのですが、残した妻子(市川実日子&粟野咲莉)の事が心配でならない。
(市川実日子は、「シン・ゴジラ」で環境省の野生生物課長補佐役を熱演したアノ人です♪)
時々、隠れて家の様子を窺っていると、妻の里子(市川実日子)は職場の同僚男性とお酒を飲んで帰ってきたりとヤキモキ。
(終盤に、感動の結末あり。)
(市川実日子:田中里子役)
そして、亜紀子がまだ健在な時に、突然家にやって来た貧乏神(田中泯)のエピソード。
正和とキンは闘って追い出そうとしますが、亜紀子は「可哀そう」ということで、しばらく家に居候させることに。
余りの亜紀子の優しさ(お人好し?)にほだされた貧乏神は、残り少ない持ち物の中から食事用の皿を亜紀子に与え、亜紀子は代わりに100円ショップで買った器をあげることに。
(この「皿」が、終盤の大きな伏線になるのですが…。)
貧乏神(田中泯)
さらに重要なエピソード。編集者の本田は、遊園地で亜紀子そっくりの家族連れを見かけます。
もちろんこれは亜紀子自身の肉体。亡くなった奥さんの魂が空になった亜紀子の身体に入り込み、その家族も「そうと知りながら」家族のなりわいを続けているのですが…。
・・そんな幾多のエピソード、伏線が、本筋のストーリーと並行して描かれ、最後に大きく繋がって行くのです。
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DESTINY 鎌倉ものがたり
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
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また一色正和(堺雅人)は、心に秘めたトラウマを抱えていました。それは、幼い頃の母親の思い出。
学者であった正和の父一色宏太郎(三浦友和)は長期出張が多く、その留守中に母親絵美子(鶴田真由)が、どこともなく出かけていく事が不思議でした。
ある日、いそいそと出かけた母親の後をつけると、行った先の一軒家には大作家甲滝五四朗が待っていました。
この事件から、正和は、母が不倫していたのではないか? また、自分の作家としての才能は甲滝五四朗から受け継いだのではないか?…つまり自分は、母と甲滝五四朗の不義の子ではないのか…と疑念を抱きます。
そしてその事は、自宅の納屋から甲滝五四朗の未発表原稿を発見するに至り、正和の確信となったのです。
その未発表冒険譚を読み漁る正和…。しかし、その中には驚くべきことが書かれていました。
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DESTINY 鎌倉ものがたり
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
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江ノ電の「幻の駅」から出る列車に乗れば「黄泉の国」に行くことができる。そこから「愛する者」を連れ帰るというストーリーだったのです。
ただその小説は「未完」であり、どうすれば連れ帰ることが可能なのかまでは書かれていないのですが。
正和は奮い立ち、亜紀子の身体を持つ主婦を発見すると、自ら「黄泉の国」へ乗り込み、亜紀子の魂を奪還することを決意するのでした…。
この映画で最も感動したのが「黄泉の国」を表すCGの美しさ。ただ「美しい」というよりは「見たことのない景色」を見る驚きでしょうか。
世界観としては「アバター」の空中山脈に似ています。そこに、まるでイタリアのアマルフィのように、びっしりと立てられた家々。
その空中を縫って、江ノ電が進んでいきます。
このスペクタクル・シーンのスチール写真は公開されていないのですが、ポスターの一部に取り込まれています。それが以下。
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DESTINY 鎌倉ものがたり
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
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「アバター」のように空中に浮いている訳ではありませんが、美しい水辺に切り立った崖に住居がビッシリと連なる風景は圧巻です。
もっとも「黄泉の国」は、「見る者によって違う風景に見える」という事ですから、コレは正和がイメージした黄泉の国という事になるのでしょうが。
黄泉の国に到達した正和は亜紀子救出の方法を知るため、必ずここに居ると考えた甲滝五四朗を探します。
果たして彼はそこに住んでいました。しかも自分の母親と一緒に。
複雑な想いに捉われる正和。しかし、そんな正和に甲滝五四朗は…
「よく来たな。おい…俺が分からないのか!?」
なんと文豪甲滝五四朗とは、正和の父一色宏太郎(三浦友和)が変装した姿でした。
彼は「文筆家」という職業を毛嫌いする父(正和の祖父)を欺くため、「出張」と偽って借家に赴き、そこで創作活動を行っていたのでした…。
スキっとしますね、この謎解き。
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DESTINY 鎌倉ものがたり
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
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実はこの映画…というより、西岸良平の原作には「根っからの悪者」というのはほとんど登場しないのです。
だから、いつでも安心して読める。…映画でもそういう部分をしっかりと踏まえています。
最後は、正和と天頭鬼の対決となるのですけれど、この点頭鬼自体、どこか抜けていて憎み切れない。
亜紀子を自分の館に監禁しておきながら、ひたすらご機嫌取りをしていて、無理やり自分のものにするということは考えないヤツなのです。
だから、原作も映画も幅広い年齢層に支持される。実際、映画館には家族連れが大勢。
こんなにたくさんの家族連れと一緒に映画を見たのは(同監督の「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズを除けば)「STAND BY ME ドラえもん」以来でしょうか。
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DESTINY 鎌倉ものがたり
(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
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「DESTINY 鎌倉ものがたり」は、12月9日に全国401スクリーンで公開され、公開週末二日間の動員は23万6千人で初登場第2位となりました。
(第1位は「仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー」…うっ、長い。)
翌週12月24日までには観客動員数100万人を突破し、2018年1月8日までの興行収入は24億円の大ヒットとなりました。
これは、抑えておいた方がいい映画だと思いますよ。ふっふっふ。
/// end of the “cinemaアラカルト197「DESTINY 鎌倉ものがたり」”///
(追伸)
岸波
今やヒットメーカーとして確固たる地位を築いた山崎 貴監督は、1964年生まれの53歳。僕よりちょうど10歳下。
1986年に株式会社白組に入社してCMや映画でのミニチュア製作を担当していましたが、2005年の「ALWAYS 三丁目の夕日」でブレイク。
同作品は第30回報知映画賞で「最優作品賞」、日本アカデミー賞で「作品賞」・「監督賞」など主演女優賞を除くすべての部門で最優秀賞を獲得しました。
そんな山崎 貴監督の夢はというと…
「風の谷のナウシカ」の実写版を撮る事だそうです。
いいじゃないですかぁ! 早く実現するといいですね。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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DESTINY 鎌倉ものがたり
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