こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
守るべきものは、誇りか、愛か
2009年「アマルフィ 女神の報酬」に引き続く織田裕二の外交官・黒田康作シリーズの「アンダルシア 女神の報復」を観てまいりました。
正確には、この間に、今年1~3月にフジテレビ木曜劇場で放映されたテレビドラマ「外交官 黒田康作」が挟まれるのですが、残念ながら観ておりません。あらららら・・。
(織田裕二&柴咲コウという『県庁の星』コンビの共演でした。)
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アンダルシア 女神の報復
(C)2011 2011 フジテレビジョン/東宝/電通/ ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー
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前作の「アマルフィ」(第33回日本アカデミー賞「話題賞」受賞)は、フジテレビが過去最高となる制作費を拠出し、イタリアの風光明媚な世界遺産をロケ地に取り入れながら、“イタリア全土で大規模テロ勃発!”というスケールの大きなサスペンス・アクションを見せてくれました。
こういうスタイル、今までの日本映画では考えられませんでした。
世界の観光名所巡り・大仕掛けのアクション・美女・ギャンブル・洒落た会話と言えば、「007シリーズ」の十八番ですが、僕は好きですねぇ、こういう映画ならではの世界。
まあ、黒田康作は無口なので、“洒落た会話”という部分が脱落するワケですが。
さて、今回のヒロインは、「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(2010年)の森雪役などで大ブレイク中の黒木メイサちゃん。
彼女が銀行勤めのバリバリのキャリア・ウーマンとして、今回の事件、国際テロ組織の陰謀に巻き込まれていくのです。
さあ、その顛末やいかに!?
最初の舞台は、スペインとフランスの国境地帯にあるアンドラ公国のスキー場。
軽快に滑り降りていたスキーヤー(日本人男性)が、いきなり自分からバリヤー・ロープを飛び越えて崖下へ真っ逆さま!
ええー!なんでー!? ・・・つかみはばっちりでございます。
ところが重傷を負いながらも死に切れず、ビクトル銀行の幹部通訳を勤める新藤結花(黒木メイサ)に携帯電話をかける。
(もちろん、映画のスポンサーであるドコモの携帯。あはは!)
てっきり助けを頼むと思いきや・・・「ルカスに会わせろ。」 (あれれ?)
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アンダルシア 女神の報復
(C)2011 2011 フジテレビジョン/東宝/電通/ ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー
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「私はルカスの通訳を務めているだけです。そんな権限はありません。」
~と答えながらも、どことなく電話の相手が通常の状態でないことに気付く。
場面転換しホテルの一室・・・
何故か、先ほどの瀕死の男がホテルの椅子で頭を打ちぬかれて死んでいる。 (あれれ?)
その傍らには黒木メイサ。(あれれ?)
彼女は死体に驚く様子もなく、部屋にあったパソコンを立ち上げようとしていますが、パスワードがかかっていて失敗。
断念すると、やおらパソコンをバッグに詰め、窓から柔らかい雪の上に投げ落とす。
そして部屋の中を偽装工作。
映画を観ている観客は、「どう考えてもアンタ犯人だよね。で、殺害の目的は、そのパソコンの中にある重要情報。だけど無理だったから後から回収することにして、いったん逃げるんだよね。」と誰しもが思う・・・
ところがっ!! ~と、こんな感じのスリリングな導入でございます。
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アンダルシア 女神の報復
(C)2011 2011 フジテレビジョン/東宝/電通/ ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー
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このアンドラ公国の日本人投資家殺害事件の報が、おりしもフランスで開催されていた「マネーロンダリング規制強化に関する国際会議」に随行していた外交官黒田にもたらされる。
殺害された日本人投資家の川島は、実は警視総監の息子。
そして黒田は、外務省の秘密組織「国際テロ対策室」の特命チームのメンバーであります。
アンドラ公国に到着した黒田は、インターポール捜査官の神足誠(伊藤英明)が黒木メイサから事情を聞いているシーンに登場。
(あれ?逃げたんじゃなかったの・・)
黒木メイサは、遺体の第一発見者としてインターポールに通報したらしいことが分かります。
いきなり乱入してきた外交官に迷惑顔の伊藤英明、「何か」に対して極度の怯えを見せる黒木メイサ。
窓の結露を見て腑に落ちない顔の黒田ですが、場面は切り替わってその夜・・・。
部屋のドアがノックされる音に不審なものを感じた黒木メイサは逃走。
それを張っていた伊藤英明と別な場所で張っていた黒田がこれを追跡。襲撃犯も交えて4者入り乱れる壮絶チェイスが開始されます。
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アンダルシア 女神の報復
(C)2011 2011 フジテレビジョン/東宝/電通/ ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー
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ていよく黒木メイサを救い出した黒田は、彼女を保護するために同僚の外交官安達(戸田恵梨香)が駐在するバルセロナの日本領事館へと向かいます。
そこでま、たも正体不明の武装グループの襲撃が。
唯一銃を持つ伊藤英明が応戦しますが、実は彼、銃の腕前はからきしダメ。
この辺「何だかな」と感じますが、どうやらこれは、伊藤英明が東大出のエリート警察官で「銃は射撃練習場でしか撃ったことがない」というキャラ設定によるもののようです。
彼は、かつて警察組織を「内部告発」しようとし、それが上層部の逆鱗に触れてインターポールに“左遷”されたという過去があるのです。
(インターポール出向って“左遷”なの!?)
襲撃犯の正体が国際テロ組織ではないかと考えた黒田は、馴染みのジャーナリスト佐伯(福山雅治)に相談。(又も出ました!)
彼の情報によると、どうやら日本人投資家殺人事件の背景には、マネー・ロンダリングを行う国際テロ組織がいるらしいと。
一方、伊藤英明は、ビクトル銀行のルカスと呼ばれる黒幕が、アンダルシア地方で巨額の不正融資を行っている事実を突き止めます。
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アンダルシア 女神の報復
(C)2011 2011 フジテレビジョン/東宝/電通/ ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー
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そして突如、ビクトル銀行が絡んだ巨額の架空投資詐欺事件がマスコミにすっぱ抜かれる。
慌てたのは、実の息子がマネー・ロンダリングに手を染めて殺害された警視総監。
インターポールの伊藤英明に対し、「架空投資詐欺事件のみ決着させて、投資家殺人事件は闇に葬れ」との極秘指令が。(←オイオイ)
そして警察は、黒田の動きを止めるために、邦人テロ対策室の上司安藤(鹿賀丈史)を拉致。(←オイオイ)
拉致され、連れて行かれた先に待っていたのは何と内閣総理大臣。
「殺された男は自分の政治団体の会計責任者でもあるから黒田に手を引かせてくれ。」
~と、だんだんハチャメチャな進行に・・。
仕組まれた罠、錯綜する情報・・・
折りしもアンダルシアの某所で、ビクトル銀行のルカスらとテロ組織ARMがマネー・ロンダリングのための資金受渡しを行うという重要情報がもたらされる。
任務中止の命令に背いてアンダルシアに向かう三人。
彼らを待つ運命とは? そして「真犯人」とはっ・・・!??
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アンダルシア 女神の報復
(C)2011 2011 フジテレビジョン/東宝/電通/ ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー
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~場面運びがテンポがよく進み、風光明媚なスペインの風景も美しいのでスルーしてしまいそうですが、はっきり言ってこのストーリー、破綻しています。
トータルを見て初めてわかるのですが、投資詐欺事件に関連して川島を陥れた犯人の動機がよく分からない。
陥れたのはメイサです。(ま、冒頭やタイトルで明らかですが。) |
(※犯人名、反転表示)↑
(ただし川島を殺してはいません。自殺です。)
一応、「家族に迷惑をかけても平気なボンボンが許せなかった」と説明はあるのですが、納得できるでしょうか?
(彼女は、事業に失敗した父の一家無理心中に巻き込まれて母親と妹を失い、自身の額にも癒せぬ傷を負うという過去がある。)
また、冒頭のパソコン操作シーンも「情報を取るため」ではなく、「自分とやり取りした証拠のメールを抹消するため」だったので、それならば何も苦労してパスワードを考えるより、水をぶっ掛けるなり、踏んづけてハードディスクを粉々にしてしまえば済む事。
危険を冒してまで部屋から持ち出す必要はない。
さらに、ホテルの部屋で自殺した川島の言葉も変。
「自分に何かあったらビクトルと関わった証拠を隠蔽してくれ」と、メイサに頼んで銃で自殺。
川島としては、暴力団などからマネーロンダリングを頼まれた資金を流用し、ルカスの架空投資詐欺に引っかかって、もう自分の命はないと思いつめたのでしょうが。
“自分に何かあったら”・・・って自殺。ワケが分かりません。
いったいこれは原作がテキトーなのか、脚本がやっつけ仕事なのか。
あ! そう言えば「アマルフィ」では、脚本担当のクレジットが抹消されたまま公開され、これに日本シナリオ作家協会が「脚本家軽視の疑いあり」として制作者に抗議を申し入れた事件がありました・・。
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アンダルシア 女神の報復
(C)2011 2011 フジテレビジョン/東宝/電通/ ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー
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「アマルフィ」のシナリオは原作小説作家の真保裕一と監督の西谷弘が共同執筆ということになっていましたが、真保裕一が「小説家仲間にこれが自分の脚本だとは思われたくない」と話してクレジットを辞退したという事情が「月刊シナリオ」(2009年11月号)誌上で明かされています。
(またやっちゃったな・・。)
それともう一つ、今回のタイトルの「アンダルシア」ですが、この映画の主要な舞台は、アンドラ公国とスペインのバルセロナ。
何とアンダルシアが出てくるのは、映画も終盤に近づいた90分後、「テロ組織の資金受渡し場所」としてやっと登場。・・・で、あっという間に終わり。
「アンダルシア」をタイトルに持ってきた意図がさっぱり分かりません。
さらに言うと、この受け渡しシーンにインターポールが踏み込む大銃撃シーンがクライマックになると誰もが思う。
ところが、銃声一発で踏み込んだことを暗示したのみで、いきなり翌日の新聞で、テロ組織とビクトル銀行幹部が捕らえられた見出しが大写し。
おいおい。いくら何でもそれはないでしょう。
前作「アマルフィ」でも途中で予算オーバーし、パタパタまとめに入った感がありましたが、今回はあまりにも酷い。
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アンダルシア 女神の報復
(C)2011 2011 フジテレビジョン/東宝/電通/ ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー
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ほかにも突っ込みどころはたくさんあるのですが、そこは“武士の情け”です。
(十分、言っちゃった感もあるけど(笑))
日本映画にしては意欲的な取り組みと、このシリーズを好意的に観てきた僕としては実に残念な結果となりました。
でも、黒木メイサちゃんて、その演技力といい、バタ臭い顔といい、なかなかいないタイプの女優さん。
今後がますます楽しみでございます。
だけど、そのメイサちゃんが悪女役って…。
彼女を悪女役にしたことで「女神の報復」を受けたのは、この映画自体…だったかもしれません。
/// end of the “cinemaアラカルト128「アンダルシア 女神の報復」”///
(追伸)
岸波
映画の主要な舞台の一つになった「アンドラ公国」、この映画で初めてその存在を認識しました。
Wikiで調べてみると、ピレネー山脈東部に位置するスペインとフランスにはさまれた山がちの内陸国で、国土面積が468平方キロ。
日本では金沢市の面積とほぼ等しい小国だそうです。
さらに、「ウルヘル司教とフランス大統領を共同元首とする議会制民主主義・・」。
ええー、フランス大統領が元首!? (しかも「共同元首」って何だ・・?)
細かいいきさつはWikiの「アンドラ」で見ていただくことにしまして、この「フランス大統領が元首(の一人)」という部分は、フランス大統領自身も忘れてしまったことがあるそうです。
どういう場面かというと、第一次世界大戦の終戦にともなうベルサイユ条約が締結された時。
アンドラ公国も小規模な国軍を拠出して連合国側で参戦していたのですが、「元首」であるフランス大統領がそのことを忘れて調印から除外。
形式的には、唯一、第一次世界大戦を継続したまま第二次世界大戦に突入する結果となりました。
←(おーまいがっ!)
ちなみに、第一次世界大戦に参戦した「アンドラ国軍」は士官1人、参謀4人、兵士6人の合計11名でした。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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アンダルシア 女神の報復
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be continued⇒ “cinemaアラカルト129” coming
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