こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
もうひとつの体。もうひとつの運命。
会津には映画館がほとんど無いので不自由していますが、これを見逃すわけにはいきません。
ジェームズ・キャメロン監督の最新作「AVATAR(アバター)」!
|
AVATAR
アバター
(C)2009
Twentieth Century Fox.
All rights reserved. |
行ってビックリ、観てビックリ・・・時間ギリギリに駆けつけたワーナーマイカル・シネマズ福島の駐車場は、既に超満員。
前評判どおり、偏差メガネをかけて観るタイプの全編フル3D映像の注目度は絶大でした。
ケイコ、どうしよう? もう、一緒に座れる席は最前列しかないよ。
とりあえず切符買って、それぞれに隙間を探して移るしかないわね。
ええー! いいのかな、指定席なのにそんなことして?
結局、僕は最前列、ケイコは後ろの空き席に移動してばらばらに観ることになったのですが、初めて経験する最前列の中央席って大変なんです。
何が大変って、スクリーンの幅に合わせて、左目で左端を右目で右端を見なくちゃならないので、もはや人間業ではありません。
なので人間である僕は、止むをえず誰もいない左端の席に移動。
スクリーンをナナメに一望することに。
しかあしっ!!
この時はまだ気付いていなかったのです。
こういう位置で3D映像を観ると、どういうことになるのかを。
と、解説を始める前からスリルとサスペンスをはらみつつ、とりあえずは、始まりはじまり・・・
『タイタニック』でアカデミー賞を総ナメにしたハリウッドの巨星ジェームズ・キャメロン監督が創り上げたエピック・アクション・アドベンチャー。
構想14年、製作4年の歳月を費やし、満を持して放つ超大作であります。
構想14年・製作4年、合わせると18年・・・あれ?
~と思って確認すると、『タイタニック』が公開されたのが1997年。
ということはこの「AVATAR」、『タイタニック』が完成する前からキャメロン監督の意中にあったワケです。
実際、キャメロン監督が後に「AVATAR」となる80ページの脚本を書いたのが1994年。
そして、予定としては、『タイタニック』を完成させた翌年、1997年の夏には「AVATAR」の製作を開始するはずだったのです。
それなのに何故、それが為されなかったのか?
彼が思い描いた目くるめくイマジネーション世界を映像化するためには、当時のテクノロジーでは到底不可能と判断したのが理由でした。
|
AVATAR
アバター
(C)2009
Twentieth Century Fox.
All rights reserved. |
そんな“超映像”の舞台は、地球を遥か遠く離れた衛星パンドラ。
時は22世紀。
緑豊かな衛星パンドラには、龍や巨大人など息を呑む幻想美と生命力に満ち溢れた神秘世界が存在していたのです。
「ジェイクか? 新たなスタートを切らないか?」
~そんな言葉でスカウトされたのは、戦闘で下半身不随となった元海兵隊員のジェイク・サリー。
アルファ・ケンタウリ星系にある衛星パンドラの「アバター・プログラム」に参加しないかという誘いでした。
衛星パンドラには、青色の皮膚と尻尾を持つ身長3メートルの原住民“ナヴィ”が生息していました。
彼らの居留地の地下には稀少鉱物の大鉱脈が眠っており、それを手に入れるためには、ナヴィたちを立ち退かせる必要があったのです。
しかし、パンドラの大気は地球人にとっては有害なもの。
そこで、人間とナヴィのDNAを掛け合わせたナヴィそっくりの生物“アバター”を作り出し、その脳波と同調することで人間の精神が乗り移り、“ドライバー”として自由自在に操ることを可能にしたのです。
このアバターたちをナヴィにスパイとして潜り込ませ、内部から彼らの弱点を探って侵略の手引きをする任務が「アバター・プログラム」なのでした。
|
AVATAR
アバター
(C)2009
Twentieth Century Fox.
All rights reserved. |
自分のアバターを得たジェイクは、車椅子生活から“自由自在に移動できる肉体”を手に入れ、早速、スパイとしてナヴィの集落へ。
そこで部族長の娘ネイティリと出会い、そのいきさつから彼女が何も知らないジェイクの指導役に。
彼女とともに、この美しい星の大自然と共生するナヴィの暮らしを体験するジェイク。
彼らナヴィの敬虔な生き方を知るにつれて、自分の使命に疑問を抱き始めます。
彼らの文明に土足で踏み込みながら、自分たちの資源を手に入れるためだけに、この優しい世界を滅ぼす権利が人類にあるのか?
やがて、ジェイクとネイティリは恋に落ちてしまいます。
パンドラでの二人の未来を夢見るジェイク。
しかし、彼の本体は人類の宇宙基地の中にあり、リアルでは決して成就できない恋。
そんな時、一向に成果の上がらないアバターの諜略活動に業を煮やした司令部は、力での制圧を決断し、ナヴィの信仰の樹木をミサイルで破壊する。
食料を手に入れるための弓と矢しか持たないナヴィたちに対し、圧倒的な近代戦力の威力。
凶悪な火力で次々に殺されていく、罪もないナヴィの原住民や森の動物たち。
身動きできないジェイクの採るべき道は、いったいどこにあるのか・・・?
人類の一員である自分の任務ともう一人の自分であるアバターの想いの葛藤・・・
まさに、冒頭のキャッチフレーズ“もうひとつの体。もうひとつの運命。”です。
|
侵攻軍の機工兵団
(C)2009 Twentieth Century Fox.
All rights reserved. |
“敵役”となる人類侵攻軍の司令官を務めたのがスティーブン・ラング。
自分勝手な“正義”を振りかざしながら、平気で虐殺を命じる憎憎しい役柄を見事に演じています。
彼の出自を調べてみると、ジェームズ・キャメロン監督が演出した1986年の「エイリアン2」のオーディションを受け、採用されなかった過去が。
キャメロン監督は彼のキャラクターを覚えていて、この「AVATAR」に起用したとのこと。
幸運は、どこに転がっているか分かりません。
また、ジェイクとともにアバターの人格を手に入れてナヴィに潜入する植物学者のグレイス博士を演じたのが「エイリアン」シリーズのリプリー役、シーガニー・ウィーバー。
「AVATAR」の製作途中まで、彼女の役柄は“シプリー”という名前だったそうな。
うん、やっぱり役名を変更してよかったんじゃないかな。
ちょっと、過去の名作にこだわリ過ぎて“あざとい”感じがしますもの。
|
ナヴィの聖地
(C)2009 Twentieth Century Fox.
All rights reserved. |
しかし、この「AVATAR」の映像世界は、素晴らしいの一言。
「スパイダーマン」や「トランスフォーマー」など、いかにも“お子チャマ向け”のお遊び映像ではなく、かといって、「マトリックス」や「スターウォーズ」のようなメカニックなスピード感でもなく、この地球とは全く別の進化を辿った異世界を表現するために欠くことのできない3D映像であったと思います。
衛星パンドラの壮大な世界観・・・巨大な岩塊が宙に浮かぶ“聖地”は、「ラピュタ」や「ナウシカ」の世界観を彷彿とさせられました。
そして、CGであるはずのアバターやナヴィたちの精密な動き。
キャメロン監督は、このリアルな動きを表現するために、従来の6倍の大きさを持つモーション・キャプチャーのステージを用意し、上下左右に120台もの3Dデジタル・カメラで俳優の動きを撮影しました。
また、一台のカメラ本体に二台のハイ・デフィニッション・カメラを装備したリアリティ・カメラ・システムも考案し、3D映像としての立体感や奥行き感を出すことに成功しています。
キャメロン監督のイマジネーション世界を現実のものにするためには、やはり、ここまでの技術進化を待たねばならなかったことが理解されます。
|
開発責任者パーカー(左)
(C)2009 Twentieth Century Fox.
All rights reserved. |
しかし、この映画の真の魅力は、やはりその深いテーマ性ではなかったかと思います。
侵略軍である海兵隊の司令官はスティーブン・ラングが演じる大佐ですが、裏で糸を引いているプロジェクト・マネージャーがRDA社の鉱物資源開発の責任者であるパーカー。
このパーカーは、自分の成績や株主の顔色ばかり伺っている俗物なのですが、それを好演したジョヴァンニ・リビシという役者さんは、似ているのですよ・・・
・・・・そう、ブッシュ(前)アメリカ大統領本人のタイプに。
人類の幸福に結びつく資源を確保する戦いは“正義”だとして、何の武力も持たない原住民たちを容赦なく虐殺していくその姿。
平和的に暮らしていたナヴィたちを守ろうと侵攻軍にタテつこうとするジェイクらを“テロ”と断じる姿勢。
キャメロン監督は決して「イラク」や「アフガン」を口に出しませんが、そういう暗喩を感じながらこの映画を観る観客は多いはず。
そして、侵攻軍の圧倒的な火力に対し、パンドラのあらゆる生物達が力を結集して正々堂々と生命の尊厳をかけて挑むけなげな姿に喝采を送るはず。
|
ジェームズ・キャメロン監督
(C)2009 Twentieth Century Fox.
All rights reserved. |
だがしかし・・・・
しょせんジェイクのアバターは仮の姿であって、本体は逃亡した宇宙船の中。
その眠っている本体に目標を変えて、容赦なく襲ってくる大佐・・・まさに血も涙もない戦法。
果たして、ジェイクはこれをどう凌ぐのか?
はたまた、アバターであるジェイクとネイティリの恋は、どういう結末を迎えるのか?
うーん・・・・・・言いたいけど、ここは言えません。
ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかも言えません。
そこは是非、劇場で確かめてくださいね!
/// end of the “cinemaアラカルト105「AVATAR アバター」”///
(追伸)
岸波
せっかくこの映画を観るのであれば、やはり、ベストな指定席を確保するのが第一条件です。
僕ら夫婦は、開始時間ギリギリに映画館へ入ってしまったために、とんでもない条件で観るハメになってしまいました。
特に僕の場合、最前列の端席。(中央だともっと見えない)
“飛び出す”ばかりでなく“奥行き”を大切にした複雑な映像処理のため、“見えているのに理解できない”という状態になってしまいました。
まあ、頭の中のCPUの処理が追いつかないということでしたね。
ましてや僕は、乱視と近視と老眼(それぞれの程度は軽い)のメガネをかけ、その上に偏光メガネを二重にかけなければならないワケで・・・。
もはや“苦行”しているような気分でございました。
2009年のコミック・コンベンションで、キャメロン監督自身が「AVATAR」のテーマについて、こう語っています。
「アクションとアドベンチャーのファンの一人として自分がわくわくするような内容を少しと、同時に良心を持ったもの・・・映画を楽しみながらも、自然界との関わり、人間同士の関わり方について、人々を多少なりと考えさせるようなものを製作したい」
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
|
ナヴィ族の女戦士ネイティリ
(C)2009
Twentieth Century Fox.
All rights reserved. |
eメールはこちらへ または habane8@ybb.ne.jp まで!
Give
the author your feedback, your comments + thoughts are always greatly appreciated.
To
be continued⇒ “cinemaアラカルト106” coming
soon!
<Back | Next>
|