疾走する磐越号 by 葉羽
なっちヤンの撮る磐越号を見ていると、時おり、深い悲しみを感じることがあります。
これは、そんな珍しい一枚。
なっちヤンは、その生涯をかけて故郷の森を育んで来ました。
しかし現在は、安価な外来材の輸入によって、国産の杉材が収入に結びつくことは稀です。
その冷徹な事実を踏まえ、彼は今、森を託してくれた人々を一人ひとり尋ねながら、その権利者にとって不利になる造林契約の変更をお願いして廻っています。
約束が違うと罵られることもあるでしょう。
でも、収入を放棄してもらわねば、その山を守るコストさえも出ないのです。
杉林植樹は国策として長い期間をかけ、進められたもの。しかし状況が変わった今、その後始末は全て地方自治体に、そして現場に押し付けられています。
時代が変わったとはいえ、誰よりも森を愛する彼が、自分自身の人生を否定するかのような行為をしなければならないという悔しさは、計り知れないものがあるでしょう。
彼は、そんなことをおくびにも出さず、僕と会うごとにいつも満面の笑みで迎えてくれます。
彼の強さの理由は、いったいどこにあるのでしょう。
(photo by なっちヤン「疾走する磐越号」)
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