【『うた恋い。』(超訳百人一首/杉田圭:著)より抜粋】
◆君と別れた朝 やけに冷たく見える白い月が空にあった 今も明け方の時間は君を思い出してせつないよ
「ありあけの つれなく見えし 別れより あかつきばかり うきものはなし」〈壬生忠岑〉
◆あなたが私を忘れても平気よ でもあなたは永遠の愛の約束を破るから罰が当たって死ぬかもね 残念だわ
「忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人の命の をしくもあるかな」〈右近〉
◆きれいな花も咲いたままではいられない ぐるぐる思い悩んでいたら 私もあっという間におばさんになっちゃった
「花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に」〈小野小町)
◆あるかないかの想い出さえも積もり積もって 今はもう君のことがとても愛しい
「筑波嶺の みねより落つる みなの川 恋ぞつもりて ふちとなりぬる」〈陽成院〉
◆君がいないと夜の長さが全然ちがう ひとりの夜はすごーくすごーく長いんだ
「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかもねむ」〈柿本人麻呂〉
◆ぼくは働きマン 雨で服が濡れても乾かすヒマはない 今日も夜通し 田んぼのボロ小屋で仕事中
「秋の田の かりほのいほの とまをあらみ わが衣手は つゆにぬれつつ」〈天智天皇〉
◆私が待っている間 どこかで遊んでいるあなたには ひとりで寝る夜がどんなに長くて悲しいかわからないのね
「なげきつつ ひとりぬる夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る」〈右大将道綱母〉
◆一生君だけとあなたは誓うけど人の心は移ろうわ だから私は最高に愛されたまま今日死にたい
「忘れじの 行く末までは かたければ けふを限りの 命ともがな〈儀同三司母〉 |