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 #146 扶氏医戒12箇条(上)

by 葉羽
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1 人のために生活して、自分のために生活しないことが医業の本当の姿である。 安楽に生活することを思わず、また名声や利益を顧みることなく、ただ自分を捨てて人を救うことのみを願うべきであろう。 人の生命を保ち、疾病を回復させ、苦痛を和らげる以外の何ものでもない。

2 患者を診るときはただ患者を診るのであって、決して身分や金持、貧乏を診るのであってはならない。 貧しい患者の感涙と高価な金品とは比較できないだろう。医師として深くこのことを考えるべきである。

3 治療を行うにあたっては、患者が対象であり、決して道具であってはならないし、自己流にこだわることなく、また、患者を実験台にすることなく、常に謙虚に観察し、かつ細心の注意をもって治療をおこなわねばならない。

4 医学を勉強することは当然であるが、自分の言行にも注意して、患者に信頼されるようでなければならない。 時流におもね、詭弁や珍奇な説を唱えて、世間に名を売るような行いは、医師として最も恥ずかしいことである。

5 患者を大ざっぱな診察で数多く診るよりも、心をこめて、細密に診ることの方が大事である。 しかし、自尊心が強く、しばしば診察することを拒むようでは最悪な医者と言わざるをえない。

6 不治の病気であっても、その病苦を和らげ、その生命を保つようにすることは医師の務めである。それを放置して、顧みないことは人道に反する。たとえ救うことができなくても、患者を慰めることを仁術という。片時たりともその生命を延ばすことに務め、決して死を言ってはならないし、言葉遣い、行動によって悟らせないように気をつかうべきである。

 

 

 

葉羽 「扶氏医戒12箇条」について

 "扶氏医戒12箇条"はベルリンの医聖フーフェランドの書『Enchiridion Medicum(「医戒」)』を江戸時代の蘭方医緒方洪庵が和訳した「扶氏経験遺訓」の巻末に掲げられた12か条の戒めです。それを体現した人物の一人として二本松藩藩医小此木天然の孫、小此木信六郎(日本医科大学初代理事長)が知られています。


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