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Written by まっさん命の小柴
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まっさん命の小柴まっさん命の小柴

 前回に引き続き、さだまさし 40周年記念コンサートツアー「さだまつり」の前夜祭“ しゃべるDAY”の模様を再現中継します。

 今回は『妖怪かっと飛ジジイ』の前編です。

 

決死の「ゴー・アラウンド」

 文化放送のディレクターに「いなせの吉住」という男がございまして、これが浅草生まれの浅草育ち、チャキチャキの江戸っ子ですから、もう威勢がいいったらありゃしない。

 三社祭の時は仕事をしないって、そういう男なんです。

 この「いなせの吉住」がゴルフを始めたんです。

「まさしさん、ゴルフ教えてくださいよ」

「教えるってほどじゃねぇけど、じゃあ一緒にやるか」

「やりましょうよ」

 そんな話を前からしてました。

熊本カントリークラブ

 ある土曜日のこと。

 その日は、僕は熊本から「セイ!ヤング」の生放送をやる予定でした。

 不思議と昼間は何の予定も入っていなかったので、夜までに熊本に移動すればよかった。

 そこで吉住に、

「おう、吉住。俺、土曜日は移動だけだから、その日に熊本でゴルフをやるか」

 で、いよいよ、吉住とゴルフをやることになりました。

 熊本空港カントリークラブ。熊本空港から車で5分と近い。

 ここで11時16分スタートの予約が取れました。

「よし、それに間に合う飛行機を取れ」

 8時15分のJAL、それに私どもは乗りこんだんでございます。

JAL

 もう、楽しみが胸の中でいっぱいに膨らむわけです。いいお天気でした。東京は(笑)。

 あのような恐ろしい事件が待ちかまえていようとは、「神」のみぞ知れども、「髪」の少ないわが身には知る由もなかった・・・。(笑)

 飛行機が飛び立ってある程度の高度に達すると、水平飛行に入っていくわけですね。そうすると、機長のあいさつというのが行われます。

 機長あいさつというのはお客さまを安心させ、落ち着かせるためのあいさつですから、落ち着いた男の方がふさわしい。

 普段、もうメチャメチャしゃべってるようなヤツでも、機長あいさつのときだけは無口を装います。言葉と言葉の間で、無口を演技するんです。

 普通の機長あいさつはこうです。

「〈低い声で〉操縦室より・・・ご案内申し上げます。本日も・・・え、日本航空をご利用くださいまして・・・誠にありがとうございます。え・・・当機。定刻どおり・・・羽田空港を飛び立ちまして、順調に・・・飛行を続けております。え、航路上の・・・お天気でございますが、あ・・・おおむね良好、という・・・予報が入っております。快適な空の旅をお楽しみいただけるかと、存じます。短い・・・空の旅はございますが、・・・あ、どうぞ、ごゆっくり、おくつろぎくださいませ。レディース・アンド・ジェントルメン・・・」(拍手)

 この後英語に行く、普通はこんな感じです。ところが、熊本へ飛んだ時の機長は違った。

熊本空港

「〈甲高い声で〉操縦室でございます。当機7分ほど遅れまして、えー、羽田空港を飛び立ちまして、現在水平飛行に入っております。高度3万3千フィート、およそ1万メートル上空を順調に飛行を続けております。えー、ただ、強い向かい風を受けております。秒速30メートルほどの強い向かい風を受けております。うー、関係上、皆さまの熊本空港ご到着が若干遅れるやもしれません。えー、また九州地方、大変雲の多いお天気になっております都合上、降下の際、あるいは着陸の際に、かなり強い揺れがあるかと存じます。まぁ、そこはそれ、飛行の安全に関しましては万全の態勢を取っておりますので、どうぞご安心くださいませ」

 英語あいさつ、なし(笑)。

 8時15分に飛び立った私たちの飛行機、定刻で行けば9時45分くらいに着く予定だったんです。だいたい1時間半から1時間40分。

 そしたら、10時15分くらいだったでしょうかね。随分遅れてるな、とは思っていたんです。機長がまた出てきました。

「操縦室です。えー、当機ただいま、うー、熊本空港の上空まで到達いたしております。えー、ですが、現在、熊本空港上空に積乱雲が発生いたしております関係上、この中を降下、着陸いたしますのは、えー、危険な場合もございますので、天候の回復を待っております。皆さまの熊本空港ご到着、はなはだ遅れまして大変ご迷惑さまでございます。えー、積乱雲でございますが、ま、ほどなく通過してくれると思っております」

 そんな「ほどなく通過」なんてするわけないじゃん、積乱雲が。

積乱雲

 どうすんだろうと思ってたら、10時半になってとうとう下り始めた。で、着陸の態勢に入った。

 着陸するかなぁ、と思っていると、「あ、だめだこりゃ」というので、いきなりグーッと上がっていくんです。

 車輪が付く直前に着陸を回避して再上昇であります。これを「ゴー・アラウンド」といいます。

 ちなみに車輪が付いた場合は、「タッチアンドゴー」といいます。しかし、あまりにも急角度に機首を上げすぎますと失速状態になります。

 こんなことは操縦のイロハですから、みんなわかっております。

 私どもの飛行機も雲の中をダーッと揺れながら、雲のないところまでバーッと駆け上がっていきます。すると、また操縦席からの声です。

「操縦室でございます。ただいま着陸を試みましたが、視界が悪すぎるため着陸を回避いたしました。えー、皆さまには熊本空港ご到着、遅れまして、はなはだご迷惑さまでございます。いましばらく天候待ちをいたしますので、このまましばらくの間、お待ちくださいませ。なお、他社便もまだ一便も着いておりませんので、どうぞご安心ください」(笑)

「どうぞご安心」って言われても、別に全日空と競争してるわけじゃないんだから。着いてくれりゃいいんですけどもね。

他社便

 結局、8時15分に羽田空港を飛び立った私たちの飛行機が着いたのは、午後12時5分でした。

 いいですか。8時15分に羽田を飛び立ってるんですよ。その飛行機が着いたのが、午後12時5分。グアムへいけるっていうの。

 12時5分に、よーやくたどり着いたんですよ、福岡空港へ〈爆笑・拍手〉

 福岡へ行ってどうする?熊本へ行けよ、熊本へ(爆笑)。

   後編へつづく⇒
  (参考図書:自由国民社「さだのはなし」)

 

(追伸)

 明けまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 このあとは、
27 妖怪かっ飛びジジイ後編
28 まさし版 解説「君といつまでも」編
29 無賃乗車と大学生のお兄さん編
30 さだまさし経歴編

 ~を月1回程度のペースで予定しています。

まっさん命の小柴まっさん命の小柴&さだ研【2013.1.5アップ】

 

 

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