【2011/7/22】
昨夜、制作したおかげで、今日は余裕をもって最後の仕上げに取り組める。
文字の形をした"廃墟"に、かつて街だった人間の暮らしの名残を表現する。
積み上げた石垣が崩れたように、規則的に立っていたポールが折れ曲がったように…。
部分的に細部を作ると、幹が幹線道路に見えてきた。
そびえる山々に取り囲まれ、唯一ここだけ、人の暮らしの痕跡が大災害後の静寂のなかにうずくまる。
それが大自然と対話を始める。…HORER DU MEG? きこえるかい?
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完成作品「From the Ruins」「廃墟から」
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夕方近くになり、私にしては珍しく、余裕を持って作業を終了した。道具類を片付け、まだ取り組んでいる仲間の作業を手伝ってあげよう。
キャロラインは、ベトナム難民として子供の頃にオーストラリアに渡り、そこで成長後、ノルウェイ人アーティストと結婚してオスロで暮らす。
女性としては低音の声で、いつも静かに話す人だ。彼女の制作現場を初めて訪ねる。
海岸なので海風が寒いらしく、結構いつも着込んで作業に出かけている。その日もジャンパーを着て、作業椅子にかけていた。
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各作家の作品:Caroline Ho-Bich-Tuyen Dang[Tidal Wadding]
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作品は、木の枝を使ったシンプルな構造が浜辺から海に向かって連なり、満潮時には大方が海水につかる。
波の動き、潮の満ち干などの現象をしなやかに受け止める力作だった。
自然に挑まず、静かに添う作品のたたずまいに共感するものがあり、その作者が同じアジア人であることがうれしかった。
私が訪ねる直前に、彼女の夫から携帯電話に連絡があったらしく、なんと、オスロでテロ事件が起こったという!
爆発や発砲事件があったとか…。事件を聞きつけたみんなの顔が険しくなる。なぜ、オスロで?!政治的背景に、さっぱり見当がつかない。
明日のオープニングは予定通り行うらしいが、はたして観客は来てくれるだろうか?
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