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by Maruyama Yoshiko / Site arranged by Habane |
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【2011/12/29】 吹雪の新潟をゆく 下書きのまま時が経ってしまったが、2週間前、調査のため新潟市を訪ねた。 天気予報は、その日を狙ったかのように「雪で、平地でも積もるでしょう。」と言っている。 昼頃に到着した現地は、ウェットな大粒の雪が降っていた。 仕方がない、観光などはできそうにないから、ピンポイント的に見たいところだけ廻ろう。 循環バスの1日チケットを購入して、まずはエネルギー補給のために本町市場で下車。 なにか新潟らしいものが食べられるかな!と期待したが、食材は売っているものの、食事ができる店はほんの少ししか見当たらず、そそられないのでパス。 循環バスは1時間に1本で、まだしばらくは来ない。 次の目的地、歴史博物館まで歩くことにする。約1.5キロぐらいあるけれど、ぶらぶらと古町の風情を見ながら、道中で昼食としようか。
しかし、雪国は甘くなかった。強風と共に吹き付ける雪。傘で防がなければ、たちまち雪だるまになりそうだ。 傘を盾のように前に構えなくてはならないので、歩きながら見えるのは足元だけ。 立ち止まり、食べ物屋の看板はないかと見渡すが、凍える街は遠くまで人通りもなく、お店も扉を閉ざしている。 ガイドブックの華やいだページとは印象が違うのは、今日の天気のせいなのだろうか? ラーメン店ののぼりが見えた!もう新潟で“どさんこ”でもいい、迷わず入り、生気を取り戻す。 とにかく目的地に着いて屋内に逃げ込みたいので、古町の風情を探している場合ではない。 シンプルに行ける信濃川沿いの幹線道路に出て、水気の多い雪道をゆく。 突風が吹き付けて、ああっ!とうとう新品の傘の骨が、2本曲がってしまった……がっくり。 傘の骨を押さえつつ、ただ苦行のように歩くのみ。 いったい私はなぜ、よりによって吹雪の新潟を歩いているんだろう…? 新潟市歴史博物館は展示物は多くなかったが、湿地を肥沃な農地へと開拓してきた先人の努力がよくわかり、興味深かった。 雪のせいか入館者がとても少なく、映像のプログラムの鑑賞者は私ひとりだった。 続けて2本見ながら、雪で湿った衣服を乾かし、疲労を癒す。 循環バスが廻ってくる時間を見計らって、信濃川対岸に渡る。 朱鷺メッセの地上125メートルからの展望は、ここへ来てよかったと納得できる光景だった。 建物上面が雪をかぶってその形をクリアに見せている。
遠い海の上空にまだらのグラデーションがみえるのは、そこでの降雪の状態のせいだろうか? 翌日、現地ではめずらしく終日快晴となった。 バスでやや広範囲に市内を廻り、この土地の環境が大まかに把握できた。 地元の人に昨日の吹雪の体験を話したら、「本当の新潟を体験できてよかったですね!」と笑われた。 「あれがここの冬の7割…いや、脅かしちゃいけないから、5割ってことにしておきましょう。」 海上の空気のまだらは、海から上昇する水蒸気であることがわかった。 日本海からの湿気をたっぷり含んだ大気が上陸して山々を越える際に豪雪を降らせ、乾いた大気となって太平洋側へ流れる。 晴天続きの東京の冬は、日本海側の豪雪のおかげとも言える。
大気が廻って気象をつくり、川と海がせめぎ合って砂丘をつくり、人は砂丘を貫き、潟から排水して農地をつくる。 2日間の新潟市滞在で、地上をとぼとぼ歩いたり、高層ビルからの俯瞰でこの土地を感じ、地球表面を循環している大気や、この水の土壌での人々の永きに渡る試行錯誤の成果を実見できた。 大きな2つの河口がある極めて湿潤な地が、今や豊かな農地と都市に変わっていることに感慨深かった。
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