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by Maruyama Yoshiko / Site arranged by Habane |
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【2011/12/11】 海の息 先月、福島県南相馬市原町区を訪ね、海岸のほうへ歩いて行くと、海から不思議な波音が聴こえてきた。
今までに聴いたこともない音。 波が砂浜にざぶんと落ちる音と重なるように、波がつくる風のような音がする。
これは上空に吹く風音とは違う。 たとえば、重傷の肺炎患者の呼吸音のような、ややこもった、ごうごうという音。 質感の異なる音が混ざり合って反復するサウンドが浜に漂い、まるでスティーヴ・ライヒ。 私の脳にはたちまち視覚的なイマジネーションが立ち現れる。
辺りを歩けば、津波にもぎ取られて土台のみ残された家屋や、ぽつりぽつりと散乱する個人的な所有物が眼にとまる。 『「栄光の架け橋」原町第二中学校』という文字がかすかに読み取れるCDが砂まみれになっていた。 あの日以来、草に覆われた夏を過ぎて、枯れ色に包まれた遺物は土に馴染んでしまっている。
知り合いのサウンドスケープ研究者によると、震災時の津波の影響なのか、波音に変化が生じているらしく、現在調査中とのこと。 偶然にも、それらしき現象に遭遇したのだろうか? あの波音をもう一度聴きたい!可能なら録音したいと思い、ひと月後、再び訪ねた。
復旧作業の関係で前回の海岸には近づけず、少し位置をずらした。 あの音は、もう鮮明には聴こえなかった。
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