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by Maruyama Yoshiko / Site arranged by Habane |
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【2011/11/17】 自ら回復しようとする力 脳梗塞によってダメージを受けた脳の内部では、再び手足への指令を伝達するために、破壊された部分を迂回して神経細胞がつながろうとするらしい。 自ら回復しようとする力を持っているのだ。 この夏、東北の被災地、原発の西20キロを通過する国道399号を通ってみた。
4月、5月と合わせて3回目になる。放置されたビニルハウスや耕作できない田には、一面にさまざまな草が繁茂し、道路面にも、路肩から太い蔓性植物が食指のように這い出ていた。 復興を願う象徴のように咲くひまわりの花がしばしば眼にとまった。 人の姿を全く見ない土地で、遠くを黒ネコが歩いていた。 義妹から借り受けた放射線量計は、福島県内399号路上でも地域によって全く違う値を示し、密閉した車内でも9.999マイクロシーベルト以上で計測不能の点滅になるところもあれば、原発から約20キロ真西なのに0.5マイクロシーベルト程度だったりする。 植物や動物、昆虫は放射能を知覚するだろうか? 車窓から見る路肩の野草は、住民が減少して通過する車両がわずかしかないせいか、道路にはみ出すように生い茂り、花をつけていた。 植物は季節が来れば花を咲かせ、実をつける。 イノセントな、たくましい姿に、ヒトもこのように生きよと教えられる。 自ら回復しようとする力をつけて。 今後、この地域の人々はもちろんのこと、動植物にも、深刻な影響がでないことを切に祈りたい。
今月3日から始まった国際野外展「トロールの森 2011」(11/23まで)では、開催地である都立善福寺公園の西側の傾斜地に、水の流れに浮かぶ木の葉をつくった。
この流れは、公園の中心である善福寺池を湧水させた伏流水(地下水)が関東西部の山地から流れ着く位置に配置してある。 伏流水のイメージをかたちにしつつ、私たちを取り巻くさまざまなサイクル、時の流れを表している。 天体の運行の、地殻変動の、動植物の営みのサイクル。 その流れに浮かぶ木の葉は、それらの長大な時間の流れの上でほんの一時生きる、この世のあらゆる生き物だ。 もちろん人間も。ささやかな存在だが、生命体のエネルギーがカオスのように、神経細胞のように、その生を全うしようとしている。 3月に被った災害という試練は、まだ継続中だけれど、私たち生き物の回復力を信じて、希望をもって生きていこう、そんな思いを作品にした。
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