(丸山芳子)天声人語で「永訣の朝」の記事を見て。
       
【2025/2/25】 「ひとりいぐも」
先週、朝日新聞の「天声人語」は、宮沢賢治の詩「永訣の朝」に触れていた。
賢治の妹の24歳のトシが、臨終の床で賢治に雪を取ってきてほしいと頼む。賢治が松の枝からすくった雪を食べさせると、Ora Orade Shitori egumo(わたしはわたしで、ひとりで逝くね)とトシが言ったという。
そうか!2018年の芥川賞を受賞した若竹千佐子さんの小説「おらおらでひとりいぐも」は、このトシの言葉にかけていたのか・・・今ごろ気がついた。
思わず書棚に手を伸ばして、もう一度読んでしまった。忙しい最中だっていうのに・・・
この小説は映画化されたほどに話題になったらしいので、読んだ人が多いと思う。
著者の出身の岩手弁で、早くに夫に先立たれた74歳の女性の心中が詳らかにえがかれている。
私と同じ東北と言えども、福島弁とずいぶん異なる岩手弁。東北は広く、方言は文化だ。
そして、老いてひとりになることの悲喜こもごもは、もしも私が先に逝かねば、この主人公と同じ立場になるかもしれない現実として、えがかれた心情がリアルに感じる。
だけど、こちらの「ひとりいぐも」は、トシの悲しみを突き抜けて、逝くまでは生き抜く目標を見出したところにあった。
       
葉羽 悲しみで終わらないところが素敵です。
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