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 Report by MARUYAMA Yoshiko
 Mp3 by H/MIX GALLERY "氷雪の森林"
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【2011/6/1

 原発事故の実状は、事故直後の報道よりもはるかに深刻であることが明らかになった。

 世界有数の地震国日本に、アメリカ、フランスに次ぐ54基も原子炉をつくりながら、その安全対策の無策ぶりが露呈され、もう凍り付きそうだ。

 そんな折り(もう2週間以上前のことになるが)渋谷の小さな映画館UPLINKで、フィンランドでの放射性廃棄物最終処理場建設に関するドキュメンタリー映画を見た。

 『Into Eternity』- 邦題 『100,000年後の安全』という。

「100,000年後の安全」
「100,000年後の安全」
http://www.uplink.co.jp/100000/

 放射性物質が無害になるまでの10万年間を無事に保管し続けるために、フィンランドは世界のどの国にも先駆けて埋蔵場所建設を決定し、現在建設中という。

 その計画は、岩盤を地中へ向かってぐるぐる廻るように掘り、地下500メートルの深層に広大なシステマチックな施設を造る。完成は100年後。

 建設期間の長さもさることながら、施設の耐用年数10万年という、かつて人類が創ったことのない建造物に取り組んでいるのだ。

 さて、その10万年の間、どうやってその危険な埋蔵物が地上の生命体に危害を与えないようにするか?幾人かの関係者が真剣にコメントする。

 ネアンデルタール人の時代から現在までが1万年という時間スケールから考えると、10万年の間には、戦争、地震、噴火、6万年ごとの氷河期到来の可能性もあり得るため、人類は滅亡するかもしれない。

 その結果、まったく異なる生命体に交代しているか、もしくはネアンデルタール人程度に退化しているかもしれない。

 彼らにどうしたら地下の危険物を掘り返さないように警告できるのか?

 文字か、マークか、絵か?(ムンクの「叫び」の絵も提案された。)

「100,000年後の安全」
映画「100,000年後の安全」より

 さまざまな意見が出た結果、警告は却って好奇心を刺激したり、危険を理解しても掘ろうとする不届き者もあり得るので、いっそ、地下の最終処理場の存在が永遠に忘れ去られるほうが安全だという結論に至る。

 映画の最後の「忘れることを、忘れてはならない」というメッセージは、なんだか滑稽にも感じるが、最終処理場を持たないまま稼働している、フィンランド以外の世界中の原発保有国の方が愚かで無責任に他ならない。

 フィンランドこそが真っ当と言える。

 それどころか、10万年間も責任を果たそうとしているとは、なんという未来への誠意なのだろう!大変な重荷と犠牲を未来へ残してしまった日本は、何も言う事ができない。

 このドキュメンタリーを見て、昨年、フィンランドでのビエンナーレ参加の折りに、印象として感じたフィンランド人気質というものを、ますます確信してしまった。

「100,000年後の安全」
映画「100,000年後の安全」より

 冷静に物事の本質を見極め、因習、しきたり、世間体、恩義などの、判断を迷わせる要因に左右されずに、真に大切なことを選び取り、そして速やかに実行する。

 これが私の印象だ。彼らの選択は、自分自身の人生についても、社会や環境への対応も、自分の正直な気持ちにとって最良の選択を実行しているように見える。

 端から見ていて、意図がすっきりとわかりやすく、信頼できる気がする。

 そんなフィンランド人の一面が、原発対策にも現れていると感じた。

<<2011.7.16 Release by Habane>> 【シリーズ完結】

葉羽葉羽

 本編と関連するエントリーがアップされたので、追加させていただきました。

 なお、後継シリーズについですが、丸山芳子さんは新たな展覧会に向けてノルウェーに旅立たれました。

 タイトルは未定ですが、次回の制作展示の模様をリアルタイム更新でお贈りしたいと考えておりますので、ご期待くださいませ。

 

 

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 フィンランド滞在制作日記
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