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 Report by MARUYAMA Yoshiko
 Mp3 by H/MIX GALLERY "氷雪の森林"
 Site arranged by Habane
 

【2010/6/11

 開催前日。

 以前から希望を出していた石の運搬がようやく実行され、道路工事現場から大きな石と砂が運ばれてきた。

 ずっと待っていたよ。

 ショベルカーから地響きを立てて落ちる大石。歓声をあげた。

ショベルカーに運ばれてきた大石
ショベルカーに運ばれてきた大石

 作品が完成したアーティストが増えてきたことで、手のあいたサポーターが来てくれ、数人で石を配置する。

 葉の舟の両脇に、日本語「きこえるかい?」、同じ意味のフィンランド語「kuuluuko?」を石の配置で書き表わす。

 石が置かれたことによって作品の空間が定まり、急流の川の雰囲気が漂い始める。しかし、まだ石が不足していた。

 そこで、いつも幼い娘を連れて散歩をしながら話しかけてくれていた隣人に、彼の裏庭に転がっている石をいただけないかと訊ねると、「よろこんで!」と言ってくれて、文字が完成。

 きこえるかい? kuuluuko? ・・・川や木の葉などの自然がヒトに、歴史という時間が人間に、日本人とフィンランド人が互いに呼びかける・・・そんな声を、大きなIi川のほとりの葉の舟のまわりに漂わせたい。

(写真下:室内から窓越しに見た光景。葉の舟の手前に石の文字「きこえるかい?」の一部が見える。)

「きこえるかい?」の一部が見える・・
「きこえるかい?」の一部が見える・・

 気持ちに余裕ができ、Sannaの運転で一緒に森から採ってきた新鮮な柳によって、ようやく念願の葉の形ができた。

 不要になった“肋骨”の枝先を断裁するとき、作業中初めてMattiがカメラを向ける。まるでテープカット。

 柳との長い試行錯誤の終了を噛み締めているMattiの心境が伝わった。

配置完了!
配置完了!

【2010/6/12】

 さあ、作品の完成リミットは夕方6時のオープニング前だ。葉の上に乗せる“水滴”アクリルの楕円箱の制作が残っている。

 言い合わせたわけでもないのに、私もMattiも「焦ることはない、それまでに完成すればいいのだ」と腹が据わっていた。

 いずれ冬の雪が乗ることも考慮して、葉の舟の強度を補ってからアトリエに行き、MattiとSannaと共に“水滴”制作に取りかかる。

 透明アクリル板とミラーボードを重ねて楕円形にカット。ミラーボードの画像の間にガラスで作った平玉を接着。

 これは、フィンランドの数多くの湖沼、そして多難なこの国で生きてきた人々のイメージでもある。

“水滴”アクリルの楕円箱
“水滴”アクリルの楕円箱

 窓越しに来賓の姿が見え始めても、一向に焦りの心境にならないのはなぜだろう?

 最後の作業を楽しんでいる私は、いつからこんなに楽天家になったの?

 “水滴”の側面になる環になった帯を接着する作業。

 Mattiが側面リングの接着面に2種の接着剤を絞り出し、Sannaと私がリレーしながらヘラで即座に混ぜ合わせる。

 付近にいた人を呼び、接着剤をつけた側面リングを「せーの!」と裏返してミラーボードの縁に乗せる。

 Mattiが告げる「2 minutes」。

 接着剤が固化するまでの2分間を8人で押さえながら、体だけ揺すって2分間の歌を歌ったり、「これをビデオで記録したらどうだ?」とか言っている。

 なぜかみんな、このオープニング直前のスリリングな共同作業に喜々としている。舞台裏で進めている作業がコメディーのようで、カメラに収めた。

舞台裏の作業

舞台裏の作業

 天板のアクリル板を付け、大急ぎで作業着からオープニング用に着替え、MattisとSannaと、近くにいたLinusを呼んで、4人で水滴ユニットを作品現場まで小走りに運ぶ。

 葉の舟に乗せ、とうとう作品が完成!

 みんな、安堵と喜びと楽しい作業の余韻とが混ざり合った大笑いがしばらく止まらなかった。まるで画竜点睛、作品に大事な瞳を加えるセレモニーのようだ。

 オープニング7分前。間に合った…。

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 フィンランド滞在制作日記
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