【2010/6/9】
開催日が近づくにつれ、今日は何をどこまで進めるべきかを書き出し、Mattiとも認識を共有し、ディレクターのLeenaにも伝えて手伝い要員を求めるようにする。
朝食時、日程表を何度もめくっている私に、Anttiが「もっと作業日が増えないか探しているのかい?」なんてひやかす。傍目にも私の作業の遅れがわかるらしい。
しかし、柳の織り作業は1列ずつなので、急ぎたくても大勢では取り組めない。
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柳の織り込み作業 |
また、織り目をそろえつつ柳という自然物の暴れ具合を治める知恵が必要で、だれでもできるものではない。
次第に勘のいいAinoさんという美大生を指名してお願いするようになり、彼女も進んで協力してくれた。
この日は、Mattiと車でOuluへ向かい、先日パソコンでつくった印刷データをアクリルミラーボード表面にプリントすることを発注する。
他に、アクリル用の透明な接着剤など、完成までに必要なものを買いそろえる。
留守の間に新聞社が取材に来たらしい。数日後の記事に、私のが“注目の作品”と紹介されていた。私だけ取材を受けていないのに。
突然、空一面に白いものが流れる。柳の綿毛が飛び始めたらしい。
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summer snow |
風に合わせて、たくさん飛んだり、たちまち消えたり。
誰かが「summer snow …」と言った。
真っ青な空に“夏の雪”。 シュールな眺め。
【2010/6/10】
もうじき始まるビエンナーレのプレイベント「ART Ii Seminor 2010」として、朝から夕方までトークのスケジュールが組まれている。
講堂にて、参加アーティストのうちの4人とヘルシンキから来た評論家が、ひとりずつ画像など見せながらそれぞれのテーマで話をする。
私は、作品が置かれる場や環境からどのようにテーマを引き出し、そこと深く結びついた作品(サイトスペシフィックアート)をつくってきたか、自作を紹介しながら語った。
聴衆には周辺の美術館のキュレーターも来ていたようだ。
トークをしたアーティストがみな異なるタイプだったので、聴講した人々は興味深かったと話していた。
私の作品は「brave」「ambitious」との感想を受けた。
作家同士にとっても、制作に専念して話す時間があまりない分、互いを知るよい機会だった。
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制作中 |
セミナーの後は“Sannaのコテッジでバーベキューとサウナ”という予定が組まれている。
作品を完成させたアーティストもぽつぽつ出始めて“みんなが打ち解けるいい機会”という設定なのかもしれないが、私を含め、制作を進める必要があるアーティストはパスする。
ほかに誰もいない私の現場…。これまでの作品のほとんどは終始一貫してひとりで制作してきた。
しかしここでは、Mattiという技術の達者なアシスタントが“自分の仕事”という意識を持って存在している。
共同作業をするうちに他者に配慮する私の性格も作用して、自分が作業をリードし決断する意志が鈍っている!
折れ続けて完成を阻む柳に苦しみ、虚空に泣き言を言いながら、そんな自分にも怒っていた。
「自分の作品だろう?!」叱咤しつつ薄暗くなるまで作る。
<<2011.4.21 Release by Habane>> |