【2010/6/6】
いよいよ、むいた柳の織り込み作業開始。
子供達とのワークショップでむいた柳は水をかけ、密閉して保存しておいたが、すでに折れやすくなっていて苦戦する。
早くも、柳という素材との試行錯誤の日々が始まる。
|
“背骨”への取り付け |
柳は採りたてを使用直前にむくのがベストらしいことは、後々、失敗を重ねた結果、習得することになる。
とは言え、むいてくれるアシスタントが常時いるわけではないので、ビニールシートで小さなプールをつくり、むいた柳を水の中につけ込んでストックする。
【2010/6/7】
アートプロジェクトにとって、作業手伝い要員が足りないのはいずこも同じらしい。このビエンナーレも時間給制で手伝う若者を募集しているようだ。
私とMattiはどちらも、人を巻き込んで人海戦術を指揮するよりは、黙々と独力でつくりあげるタイプだ。
そんなタイプ同士が組んだせいか、単純作業にあまり積極的ではない働き手にやる気を起こさせられないでいるうちに、若者はどこかに呼ばれていなくなる。
新鮮な柳は周囲の土手からは採り尽くしていた。
折れ続ける柳に手こずり、人手や車が足りなくて素材も入手できず…。黙々と織り続けていると、「テルベ!(ハイ!)」と声がかかった。
柳むきに参加したテキスタイル学校の生徒数人が、自転車で通りかかったのだ。つくりかけの作品を「ビューティフル!」と言ってくれる。
作業を終えて戻ると、レジデンスの扉の前に箱がある。
柳むきワークショプをしたOlhava schoolの子供達からの石が届いていた。
|
箱の中の石 |
彼らの柳がどんな作品になるかを説明した際、「葉の舟の周囲に石で文字を書くから、君たちの石をちょうだい」と話したからだ。
自分のサインと共に、メッセージやイラストも描いてある。
焦燥感を引きずった心境に、ほほえましい贈り物がうれしかった。
【2010/6/8】
葉の湾曲をつくるために、Mattiが“肋骨”の枝に紐をかけて引き上げる工夫をする。
一方私は、「Leaf Boat」に乗せる水滴の鏡面に印刷する画像のレイアウトをイラストレータで作成し、パソコンの得意なJanneの協力で印刷原稿にする。
|
“Leaf Boat” |
|
夕刻には元文部大臣Tyttiさんが参加アーティストを激励に見え、一緒にSannaのアトリエでディナーだという。
遅れている作業を中断し、後ろ髪を引かれつつご挨拶に行くと、なんと5/14にOuluのギャラリーで私に声をかけた女性ではないか!
「Ouluで会いましたね。」とにっこりされた。驚くとともに、その気さくさに親しみを感じた。
|
ディナーの風景 |
フィンランドの現大統領も女性で、国民の支持が厚いと聞いている。
フィンランドでは、公的な場でも家庭でも、役割としての男女の性差が日本よりずっと少ないのはすばらしいことだ。
Tyttiさんは、ここKulttuuriKauppila Art Centreの活動を、精神的にも資金的にも応援して下さっているらしい。
|
Tyttiさんと私 |
|
ディナーの後、制作中の作品を見て回られ、私の作品テーマの説明をうれしそうに聞き、「フィンランドの歴史を勉強されたのですか?すばらしい作品だと思います。」と評価してくださる。
<<2011.3.23 Release by Habane>> |