【2010/5/13(続き)】
朝から太陽光が燦々と差し込み、突然夏が来たかのような一日だった。
いきなりみんなの装いはTシャツに早変わり。部屋にいるのがもったいなくて外に出たら、レジデンスの隣に住むアーティストSannaから声がかかり、ビエンナーレ作品の設置場所を案内してもらうことになった。
方向音痴の私ひとりでは、たちまち迷子になりそうな道筋を、地図にラインを記しながら歩いた。
Ii川という大きな川のほとりの街であるから、ボートを所有している家が多くあり、今回私がビエンナーレの作品としてプランしていた“木の葉の舟”(テーマについては後ほど書くことにする)が林の中に設置されたとしても、日常光景と変わらないものになると気付いた。
こういうことは、現地に来て初めて実感するものだ。テーマは変わらなくても、形の再検討が仮題となった。
街を創立した英雄3人のブロンズ像が川のほとりに立っていた。
Sannaの作品で、Ii市を紹介する印刷物にも載っているシンボル的な彫刻だ。
彼女は、この街の最初のアーティストらしく、そんな街でアートをやって行くことにおいて、周囲住民の理解を得るのは大変だったと言う。
夕方になり、KulttuuriKauppila Art Centre設立メンバー3人のひとりであるアーティストAntti Ylonenさんの家に招かれた。
彼は2度来日したことがあり(東京都杉並区善福寺公園での国際野外展「トロールの森2002」と福島県原町のコンサートホールに設置されている檜の木彫を滞在制作)、パートナーのKaisa Keratarさんと共に、Ii川の中州である大きな島の森の中に暮らしている。
家に至るまでの道は、まるで樹々に招かれるように、けがれのない自然の世界に吸い込まれるような眺めだ。
森を含めた敷地の中に、住まいとアトリエとサウナのそれぞれの家屋を持っている。浴槽は持たずにサウナを持つのは、このあたりでは一般的らしい。
彼らの住まいは、ここにもとからあって放置されていた古い家屋を大切に修繕し、薪で火をおこす大きなオーブンもそのまま利用しながら、居心地のいい手作り風の部屋を整えている。
Oulu空港に到着した私を迎えにきたAnntiiさんの最初の印象からは想像もつかなかったが、彼は奥さんも同様にインテリであり、料理の腕前は相当なもの。
ワインの選定もすばらしく、日本でお店を持ったら高級レストランになるだろう。
キッチンには、来日の折りに東京の合羽橋で買ったという「小料理」と書かれた提灯がぶら下がっていた。料理には自負があるらしい。
夫婦共に日本が大好きで、Kaisaさんの方は日本語学校で勉強までしたらしい。
彼は、私が2008、2009年続けて参加してきた国際野外展「トロールの森」の10周年展「トロールの森 2011」に招かれるのを、とても楽しみにしているそうだ。
>>丸山作品・・・「オアシス」と「渇き」参照http://members.jcom.home.ne.jp/maryoshi/artworkindex/work-j_ins.html
Kaisaさんは、フィンランドの北方であるラップランドの出身だという。忙しい身ながら、私の時間があるうちに案内してくれることを提案してくれた。
願ってもないこと!最も興味のある地域だ。
アーティストである夫の丸山常生も来週、短い間だけIiに来てパフォーマンス公演をすることになっているので、「ぜひ今度は二人ともサウナを体験しに来て!」と誘われた。
絶品のディナーの後、周囲を散策すると、忘れがたい風景ばかりが次々と現れた。カメラを持って出なかったのが残念!眼に焼き付けておこう。
彼らがIiのなかでも、この島を住まいとして選んだこだわりが充分理解できた。
料理やワインばかりではなく、彼の作品の丁寧な仕上げぶりも、この暮らし方も、すべて彼らの人格だ。
ふたりからの暖かいもてなしに感謝しつつ、サイクリングして帰る風の気持ちのいいこと!
これは今日一日の気持ちよさなんだ。
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