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その29

8月15日は、V J day。

 ひょこりひょうたん島の写真が懐かしい。

 最近はやたら昭和回顧番組が多いが時代が戻っているのか。

 戻り過ぎて戦前までいっては困る。

 これからもずっと戦後であってほしい。

 戦後100年、200年と戦後は永遠に不滅です。

「巨人軍は永遠に不滅です」と言ったのはジャイアンツの長嶋選手だが巨人は昔から巨人「軍」という名で好戦的だ。

 日本は8月15日は終戦記念日だが英国ではVJ(Victory JAPAN)DAYだ。対日戦勝記念日と訳すが日本ではあまり知られていない。

 1997年から2000年まで日本人学校の教員としてロンドンに住んでいた。英国はいい漢字でいい感じのイメージだが実は軍事国家だ。

 よく若い兵士の戦死のニュースが流される。ローカルニュースではそのお葬式や家族のようすが放映される。

 親は気丈に振る舞い、妻は憔悴し、何もわからない子は無邪気に霊柩車のあとを歩くおきまりの映像が日常的に流される。

 大きな大戦はないが国益のためにあちこちの局地戦に普通に、ためらいなく軍隊が派遣されているのが現実だ。

 1998年に現在の天皇が訪英した。

 エリザベス女王の国賓としての天皇訪英は在英日本人会にとっても大イベントだ。

 日本人学校の私の仕事はバッキンガム宮殿への英国王室と天皇皇后両陛下の馬車パレードを日本人学校の児童が日本国旗の小旗をふって沿道で迎えるという行事だ。

 表現は悪いが子供をだしに使うよくあるイベントで、おもてなしだが、うらがある。

 日本大使館の職員と2,3度打ち合わせをし現場にも行って整列場所など確かめた。

 期日がまじかになり大使館から当日英国のPOW(prisoner of war)団体が日本国旗を焼いて反日活動をするので注意するよう連絡があった。

 翌日、日本の文科省から反日活動、特に日本国旗を焼く示威行動を児童に見せないようにとの連絡があった。

 しかしどの場所で反日示威活動が行われるのかはわからない。不安な気持ちで当日を迎えたが、想定外ははじめから起きた。

 1時間以上の余裕をもってパレード会場に着いたが大変な人だ。

 バッキンガム宮殿に近いためふだんの世界中からの観光客に加え、エリザベス女王や日本の天皇をみたいという英国人であふれている。

 事前に確かめた整列場所も人であふれている。花見のように朝から場所取りをすればよかったが時すで遅しだ。

 しかたないので各担任の先生に児童を人と人の隙間に入れてできるだけ日本国旗が天皇から見えるよう児童の移動を指示した。

 集団がばらけ児童の引率管理的にはリスクがあるがしかたない。

 道路の向こう側はやや余裕があった。その場所に児童達が集中して旗をふればインパクトがある。

 10メートルおきに並んで厳しく警備している警官に横断の許可を求めたがノーだ。

 つたない英語で自分たちは日本人学校の教員、児童であり天皇の歓迎行為は私たちの義務であることを必死でつたえたが答えはノーだ。

 これ以上の説得は諦めて各担任と連絡をとり、児童の配置状況の確認して沿道で待機した。

 間もなく遠くの方で煙があがった。反日示威活動が始まったらしい。

 想定外に広がった児童たちの一部は当然に遭遇しているかもしれないが、もう身動きができない。すべてが終わるのを待つしかない。

 目の前をエリザベス女王と天皇の馬車が通り過ぎたのと同時に帰りの集合場所のビクトリア駅に走った。

 各学年各クラスを順番に並べて整然とバスに乗せるのは難しい。集団移動ができず集合時間もばらばらだ。

 クラスがそろえば学年、組、関係なくバスに定員ぎりぎりまで詰め込んだ。

 最後のクラスが学校へ帰校するバスに乗り、私の長い一日が終わった。今思うと、あの混乱の中、全員よく帰校できたと思う。

 その晩、テレビでニュースを見たが反日活動が大きく取り上げられていた。

 日本国旗を焼いたり沿道の最前列に並んだPOWの団体が天皇通過の直前に一斉に背を向けて示威行動している。

 現場の警察は見守るだけで取りしまる様子はない。児童の日の丸の旗も人波にかくれて、はっきりとは見えない。

 福島国体の天皇歓迎時の整然とした記憶と比べれば大失敗だ。

 翌日、思うような天皇歓迎ができなかったことを日本の父に電話したが、父の返答は「POWの反日活動を児童に見せるのも教育だ」というものだった。

 この時は、改めて父の度量の広さを見直した。

 その後、何故か大使館や文科省、在英日本人会からは何のお咎めもなかった。

 今、思うと責任が自分たちに及ぶのを恐れ、事なかれにしたのかもしれない。

 英国のPOWのメンバーは90歳絡まりの年齢だが毎年8月15日になると日本大使館の前でデモをする。

 車いすや杖をつきながらのデモに彼らの執念を感じる。いじめた方は忘れるが、いじめられた方は忘れない。

 ロンドンのチェルシー地区に英国陸軍博物館があり、その中に当時の日本軍のPOWに対する虐待行為の展示があるがあまり知られていない。

 日本人として赤面するような内容だ。

 たまたま家族で行ったが、娘達にかける言葉がなかった。

 今回はギャグもオチもないが何もないと終われない。

 ので最後に、昔のテレビ番組に「名犬ラッシー」があったが犬の種類はコリーらっしい。

 (2015.8.17)アンブレラあつし

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