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その30

残暑おしまい申し上げます

 英国にいた頃、旧ユーゴスラヴィアが内戦状態になり民族、宗教も絡んで長い間混乱した。

 最終的にNATOが軍事介入して停戦になったが英国の空軍基地から毎晩
のように爆撃機がとんだ。

 新聞記事に「1945年以来のヨーロッパ人同士の本格的な戦争」という見出しがあった。第二次大戦以来の欧州を舞台にした戦争だ。

 戦場が遠いため街にはそれほどの緊張感はないが新聞、テレビには戦争が取り上げられる。

 不謹慎だが戦時下って、どんなものか興味があった。

 ロンドンから車で2時間くらいのところに空軍基地がある。興味本位で週末の家族旅行気分で行ってみた。

 町の名は調べたが詳しい場所はわからない。基地の場所の表示もない。考えてみれば当たり前だ。軍事施設をわかりやすく案内するはずがない。

 しばらく車でぐるぐる巡り、ようやく基地らしい施設が見えた。爆撃機の尾翼が遠くに林立している。

 道路に一台の車が停まっていて中から、こちらの様子をうかがっているように見える。

 それまでは意識しなかったが、ここは軍事基地だ。家族連れを装ったスパイと間違われては困ると思い、あわてて引き返した。

 もしかしたら車のナンバーを控えられたかもしれない。

 基地からほど近いところに、ちょっとした街があって昼から開いているパブに入った。

 古びた壁に何枚も集合写真が貼ってあり、各人の名前らしい署名がしてある。

 店の人に聞いたら第二次大戦でドイツに、ここの基地から空爆したらしい。

 命がけの出撃前にとった搭乗員の集合写真だ。英国空軍の兵士の他にアメリカ空軍の兵士の集合写真もある。

 ドレスデンの無差別爆撃もここから出撃したのか。これらの若い兵士の何人が無事に帰還したのかなど、いろんな思いが頭をよぎった。

 店の話では最近は基地が近くても現役の兵士が来ることはないという。

 その晩のニュースはNATOが誤爆し多くの民間人が犠牲になったことを伝えた。

 NATOの司令官の会見は心よりの哀悼と原因を現在調査中というおきまりのものだ。原因がわかったところで命は戻らない。

 新聞記事は戦争記事もあるがスポーツや芸能記事も相変わらずある。

 ウエストエンドではミュージカルやショーが華やかに行われている。

 国民総動員体制の緊迫した戦争ではない。サッカーも競馬も行われている。これが戦時下か。

 日本もはじめはこんなものだったのだろう。

 日常生活の中で人を殺せば殺人罪だが戦争は勲章が貰える。

 英国は戦争をやめない国なので日本のような終戦記念日はないが、第一次大戦が終わった日を記念日にして国を挙げて戦死者を弔う。

 国民は赤いポピーの花を胸につけて弔意を表す。退役軍人は勲章をつけて誇らしげに行進する。

 第二次大戦、フォークランド、そしてイラク戦争参加者も行進する。

 これが軍事国家だ。かつて世界中に植民地をつくり資源を収奪し自国語を強制した歴史だ。

 その原動力は当然に軍事力だ。

 日本も大英帝国のマネをしてアジアに侵略し結果的に失敗し反省させられたが英国は負けないので反省などしない。

 英国は基本的に、かつての戦争と侵略を詫びることはない。

 負けなければ過ちではなく謝罪の必要などないのだ。すべては結果論だ。

 ヒットラーも負けなければナポレオン以来の欧州統一の英雄だ。

 ユダヤ人大量虐殺の戦争犯罪の責任は確かにあるが、それぞれの欧州国家の多くの国民に反ユダヤの偏見思想があったことは間違いない。

 実際にユダヤ人を強制収容したのはナチスだが、それを多くの欧州の市民が見過ごし、あるいは手助けしている。

 欧米がレイシズム(差別主義)に非常に敏感なのは基本的に人は偏見を持っており何かのきっかけで表面化することをよく知っているからだ。

 シェークスピアの「ベニスの商人」の悪徳商人は何故かユダヤ人だ。

 大学のカナダ人の英語の先生に、この設定について偏見を助長する差別主義ではないかと質問したことがある。

 彼の返答は「シェークスピアが彼の戯曲の中で意図的に悪徳商人をユダヤ人にしたとは思えない。当時の地中海の交易を主に担っていた商人の多くがユダヤ人であったという史実によるのではないか」というものだ。

 さらに彼自身は「ベニスの商人」の作品に反ユダヤ主義は特に感じないという。

 ロンドンにJ・J地区と呼ばれる住宅街がある。

 Jはジャパニーズとジューイッシュだ。

 J・Jにいい意味はない。J・Jの共通項は「金儲けがうまい。ずるい所がある。ルール無視で独善的」などか。

 例えば、日本人にとって勤勉は美徳だが欧米人にとってはルール無視の労働観だ。

 最近になってブラックが話題になるが、昔から日本はグレーだ。

 私もかつての長時間労働を勲章のように後輩に自慢していたことがある。

 過日も残暑厳しい中、勤勉に上野に行って勤勉に水撒きをしてきた。

「焼石に水」は無駄なことだが「やけになり水撒き」は愚かなことか。

 前回と今回とマジな内容になっている。次回は自戒を込めてダジャレ全開、戻ってコンカイおやじギャグにしたい。

 寒いギャグで残暑♪オシマイ申し上げます。

 暑さでアイスキャンデーズも溶けてスーっと消えてしまった。

 普通の女の子には戻れないし普通のおじさんにも戻れないと思う。

 (2015.8.29)アンブレラあつし

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