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その258

「親孝行したい時に、親はなし」のはなし

 普段、あまり外食はしないのだが、過日、インド料理店に行った。ランチセットが980円で安い。

 カレーとナン、ミニサラダ、飲み物はラッシーにした。ラッシーはインドの定番ドリンクで牛乳から作るらっしー。

 ラッシーで思い浮かぶのは「名犬ラッシー」だが、犬がラッシーを飲んでも恐らく名犬にはなれない。

 会計時に小銭が多くあったので、小銭入れから五百円玉と百円玉を5枚出して支払おうとしたら、インド人らしい若い店員が、私の膨らんだ小銭入れを見て、「30円出せば50円のお釣りになります」と言う。

 私の小銭入れは透明で外から中が分かるのだが、結局、硬貨を数えて支払うのが面倒なので、紙幣で支払う事が多く小銭が増える。

 油断すると手榴弾のように膨らんで暴発寸前になる。

 インド人の店員が何を言っているのか、一瞬、理解できなかったが、10円硬貨を3枚出せば、50円硬貨1枚のお釣りで財布の全体の硬貨の数が減り、財布が軽くなるという意味だ。

 しかも今の50円硬貨はサイズが10円硬貨より小さい。サスガ、数字に強いインド人だ。

「インド人もビックリ」なんて言うCMが昔あったが「インド人にビックリ」だ。

 日本人は小学校で九九を習うが、インドでは9×9以上のフタ桁のかけ算も暗記するらしい。日本でフタケタの九九を教えようとしたら、親からフザケタことをするなと言われるのか。

 今は多くの会計レジが自動機械精算なので、お釣りが出てきたら札はその場で確かめるが、硬貨は全部一緒につかんで確かめることもない。いちいち数えて確かめていたら後ろに並んでいる人の迷惑になる。

 コロナ以前だが、コンビニレジの若い女性が、お釣りの金額が一目で分かるように、彼女の手のひらに硬貨を並べて、私の手を取って釣り銭を渡してくれた。

 若い女性はアジア系で日本人ではない。彼女の母国では、このように釣り銭を丁寧に渡す習慣があるのだろうかと驚いたが、私をかなりの高齢者とみての親切心による行動だったのかもしれない。

 感激した私は、できれば、ずっと彼女の手をつかんでいたかったが、今の時代セクハラ、カスハラおじさんになる。

 今は地方でも外国人の労働者が多くなって、いろんな分野で働いている。

 円安で以前ほどのウマミはないと思うが、多くが母国の家族に仕送りをしていて、若いのにエライ。頭が下がる。

 自分の事を言うと、学生時代に親から仕送りしてもらったが、親に仕送りした事はない。

 社会人になってからも、たまに小遣いを貰っていた。

 今年の春に母は亡くなったが、長年の母の願いは、皇居を見ることだった。

「その内、その内」なんて返答していた私だが、願いをかなえてやれなかった。

 母が亡くなり相続関係で戸籍簿を取り寄せたら、出生地が東京神田末広町になっている。

 東京で生まれたと聞いてはいたが、神田の生まれ「江戸っ子」ではないか。母の父、私の祖父は銀行員で満州の支店にもいたらしい。

「♪ここが、ここが二重橋、記念の写真をとりましょね」は「♪東京だヨ、おっ母さん」の一節だが、「親孝行したい時には、親はなし」だ。

 カンダ生まれでナンダ、カンダとだ教えてくれた母も今はいない。

 (2024.11.23)アンブレラあつし

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