スナック「レインボー」に行っていたのは約40年以上前だ。あの時すでに70過ぎの高齢のご夫婦で店をやっていたと思う。
福島大学の卒業生のたまり場的な所でもあるらしく、来店記念に名前と卒業年を書いた小さな紙片が、壁面に何枚も貼ってあった。
福大だけでなく医大や、県外の大学名もあったと思う。
薄暗い店なので、壁に顔を近づけないと紙片の字は読めないが、もしかしたら知人の名前があるのではないかと探し見ることもあった。
私は福大卒ではないが、もしかして高校時代の知人がいるのではと思ったからだ。
マスターはいつも蝶ネクタイで、ママさんも綺麗にお化粧をして、愛想よく接客していた。
カウンターに一人ポツンと座っていると、ママさんが話しかけてくれる。マスターも話し好きだ。
ギターがあって、客がギターをひきながら歌い、他の客も合せて歌うこともあった。
「ザ・ 昭和」のスナックだったが、「♩僕が初めて、君を見たのは・・・」の「白い扉」ではなかったと思う。
ある時、つき合っていた彼女と一緒に行き、ママさんに紹介した。ママさんが「美人だね、お似合いだよ」と言ってくれた。
ママさんに誉めてもらい確信した私だったが、「縁」が無かったのか、その後、彼女にはふられた。
それ以来、レインボーには行かなくなった。
彼女にふられた事をママさんに言いたくなくて行かなかったのだが、今思えば、それも大人げなかったな。
「♩恋人にふられたの、よくある話しじゃないか」とママさんが、
「♩世の中、変っていくんだよ。人の心も変るのさ」とマスターが励ましてくれたかもしれない。
二人とも鬼籍に入られたと思うが、ご存命だったらキセキだ。
彼女とは「縁」がなかった事、レインボーのママさんに話しておくべきだったと、今になって後悔している。
「♩七色の虹が、消えてしまったの、シャボン玉のような私の涙」だが、虹もシャボン玉も儚く消え、涙も涸れて消えれば、つらい思い出も、やがては忘れるのか。
未練が残っているのは、あの時に全ての涙を流さなかったからなのかもしれない。
タケヒコオーナーさんのコメントだが、誰のリクエストも無いのに「♩涙のリクエスト」を熱唱し、「♩最後のリクエスト」と歌いながらも、最後にならずに「♩ぎざぎざハートの子守歌」を、続けて熱唱する若者がいたような気もする。
チェッカーズの「♩涙のリクエスト」だが、「♩最後のコインに祈りをこめて・・・」とか「♩ダイヤルまわす、あの娘に伝えて・・・」とか、昭和の電話の風景でナケル。
(2024.1.13)アンブレラあつし |