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その129

貧乏ドンマイ、温泉三昧

 前号で「木枯らし一合、熱燗二合」などと書いたが、最近は熱燗で酒を飲む人は少ない。

 日本酒ブームだが、昔より部屋の暖房が充実しているせいか、冬でも冷や酒をグラスで飲む。

 白い割烹着の女将さんが、客の好みで熱燗、ぬる燗、人肌と微妙な酒の温度を聞いて、袂を押さえてそっとついでくれる昭和の風景が昔あったな。

 熱燗とっくりを持った指の熱さを冷ますのに、彼女が自分の耳たぶを、そっとつまんだりして、その仕草が色っぽい。

 なんて、いつもの昭和ノスタルジーさんの妄想風景だ。

 ところが現実は、昔は若かったかもしれない女将さんが、熱さに動じることなく素手で熱燗とっくりを、しっかり掴み鍋から取り出して、ガラスコップと一緒にカウンターにどんと置く。

 彼女は指の皮が厚くなっていて熱さを感じないのか。

 ダーウィンの進化論は正しく人は環境に適応する。

「面の皮が厚い人」は世の中の荒波にもまれた進化形の人なのだな。

 私の手は進化してないので熱燗を持つ事はできず、しばらく冷めるまで待つしかない。

 待つ時間にお通しを食べてしまうが、お通しのオカワリはしにくい。

 過日行われたワインのボジョレヌーボーだが、ボジョレって地名らしい。

 ヌーボーは「新しい」という意味なので、「ボジョレの新酒」ということか。

 新しく思いついたダジャレを「ダージャレ、ヌーボー」とはいわないか。

 ことさら新しい事をすることもなくヌボーっと生きている私で、チコちゃんに叱られそうだ。

 ワインといえばソムリエだが、子どもに将来なりたい職業を聞いて「将来はソムリエ」と答えた子どもに「ソレムリ」と冗談でも言ってはいけないな。

 大人のつまらないダジャレで子どもの夢を潰してはいけない。

「利き酒師」なんて職業もあるが、私は悪フザケ師で、くだらないオヤジギャグをふりまいている。

 テレビで温泉とグルメ番組は定番だが、食レポと温泉レポートの日本語が意味不明なことがよくある。

 食レポだが「百聞は一見にしかず」で言語で味を伝えることにそもそもムリがある。ツーカ、味覚は所詮、個人的なものだ。

 一言「ウマイ」でいいのだが、番組のシャクがあるので、ついついシャベッテしまう。

 人気のタレントが、日本酒を試飲してコメントするが「すっきりしてキレがありますね」って、ワインやビールでも同じコメントが使えるな。

 このコメント、高齢者の排尿促進のサプリ宣伝にも使えそうで可笑しい。

 若いネーサンがツーぶって酒の感想をノタマウ時代は、イトオカシでイトアワレナリだ。

 温泉レポートも同じフレーズで「このお湯、すっきりしてキレがありますね」って意味不明だが、湯加減もいい加減が大事なので、そんな事どうでもいいカゲンか。

 白濁がウリの温泉が実は入浴剤を使ったとか、源泉かけ流しが実は沸かし湯だったりとか温泉アルアル、アルカリ泉だ。

 気がつかなければ客にとってはいい思い出だったに違いない。人は真実を知るで不幸になるな。

 温泉旅行に行かなくとも妄想すれば温泉気分を楽しめる。

 まず、入浴剤を風呂にいれて、長めに湯につかる。スーパーで閉店間際で安くなった刺身や惣菜を食卓に豪勢に並べる。

 ビールは缶ビールでは、高級旅館らしくないので瓶ビールを準備する。ケチって発泡酒を買ってはいけない。

 日本酒やワインも用意するがワインは安くても冷やせば同じなので高いのは買わない。

 録画しておいた温泉グルメ番組を見ながら、飲み食いする。高価なカニ料理をテレビで見ながら、カニかまを食べる。

 布団も事前にしいておいて、いつでも寝れる態勢だ。

 適当に酔って眠りにつけば、自宅だろうが高級老舗旅館だろうが目をつぶっているので同じだ。

 枕が違えば、どんな高級老舗旅館でも高級ホテルでも眠りにくいが、自宅のいつもの寝床なので安眠できる。

 何よりも嬉しいのが、目が覚めれば我が家なので、旅先から帰ってきて「やっぱり我が家がいいな」なんて言う必要がない。

 交通費、宿泊費ゼロで、温泉入浴剤を替えれば日本全国温泉三昧の究極のエコツーリズムが楽しめる。

 テレビは贅沢三昧の温泉旅行だが、私は貧乏ドンマイの妄想旅行だ。

 (2019.11.30)アンブレラあつし

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