浅田次郎の短編「かくれんぼ」に次のようなくだりがありました。
『・・・街頭テレビが設置されていた。十五インチほどの小さな受像機が櫓(やぐら)の上に置かれており・・・「一番たくさん人が集まったのは金曜の夜だな。三菱ダイヤモンドアワー」「力道山、か。・・・』
街頭テレビは見たことがありませんが、小学生の頃に金曜夜8時からプロレスを見ていたことは、よく覚えています。
浅田次郎「かくれんぼ」の豆本
それも毎週ではなくプロレスとディズニーランドが隔週で放映されていました。
楽しみだったのはプロレスの方で、今にして思えば一種のショーだったのでしょうが、当時は本気で戦っていると思いました。
空手チョップで外国人レスラーをやっつける力道山は、私の中では大鵬、長嶋茂雄に次ぐ3人目のヒーローでした。
そんな力道山はヤクザに刺されてあっけなく死んでしまい(昭和38年没)、あんなに強かった力道山が何故、と思った記憶があります。
力道山の空手チョップ
没後23年、「新・昭和30年代通信」(永倉万治:小学館)を読んで、「手術後の回復は順調だったが、三ツ矢サイダーをこっそり飲んでしまい、それがもとで腸閉塞を併発した」ことを知りました。
街頭テレビ&力道山からここまで思い出せるのは、私くらいが最後の世代ではないでしょうか。
高校の頃に読んだ名作にはよく巻末に注記がありました。例えば「伊豆の踊子」には32の注記があり、「敷島:明治37年から昭和18年まで販売されていたタバコの名」等々。
「伊豆の踊子」
やがて街頭テレビにも力道山にも注記が必要になるのでしょうね、いえいえ、既に必要かもしれませんね。
(これを書いた後に浅田次郎の「天切り松 闇がたり」を読みましたら、登場人物が吸うタバコはほとんど敷島でした。これも奇遇の一種?)
ツーさん【2021.4.26掲載】
葉羽 そうか、ツーさんは街頭テレビを見たことがないのか。僕は3歳ころに昔の福ビル前に出来た街頭テレビを親父と見に行ってたよ。人だかりが凄くて、親父が僕を肩車して見せてくれたっけ。何故かその思い出は忘れない・・。