<<INDEX | <PREV | NEXT>

雑感146 顧客本位




by Tsuji
Reported by Tsuji
MP3"くつろぎ時間" by 音楽の卵
Site arranged by 葉羽

 昨年は直木賞&芥川賞作品を精力的に読み、一気に読める作品も多かったのですが、中には読むのに苦労する作品もありました。

  直木賞&芥川賞作品

 例えば、句点(。)がなく延々と一文が続き、改行も少なく、見開き2頁が文字で埋め尽くされている頁が続くような作品。

 短編でしたので何とか、ようやくの思いで読み終えました。

  文字がびっしり・・違っ!

 また例えば、通常漢字で書かれるところが平仮名で書いてある作品。

 この文章が「またたとえば、つうじょうかんじで書かれるところがひらがなで書いてあるさくひん」のような感じで、頭の中で漢字に変換する必要があり、短編であったにもかかわらず、その作品だけは最後まで読めませんでした。

 小説の顧客は文学賞選考委員ではなく、あくまでも読者。

  天童荒太氏

 直木賞受賞作家天童荒太の「永遠の仔」(幻冬舎文庫)のあとがき「文庫化に際して、読者への報告」を読んで、とても腑に落ちました。一部引用させていただきます。

「・・・単行本と文庫では1ページごとの文字数と行数の量が変化します。

 ・・・最も読みやすいだろう〈かたち〉を選択することが、読者に向け、より確かにテーマを届けられるのではないかと判断し、

 ・・・細心の注意を払って、ごくわずかな調整をいたしました。

 ・・・同時に、フリガナを少し増やしています。

 ・・・できるだけ多くの読者に、誤解のないかたちで読んでいただきたいと思っての判断です。・・・」

  ツーさん【2020.6.15掲載】

葉羽葉羽 天童氏の指摘はもっともだと思う。読者を前提に置かないで文学性、あるいは評者受けを狙って書かれることが、読者からどんどん見放されている原因のように思う。雑誌が廃刊され新聞社経営が赤字になる現代、文字を読む人口はどんどん減っているし、小説ならなおさらだと思う。ネットや動画に押されてマンガ雑誌でさえ廃刊が続いているもんね。顧客志向・・そればかりでは駄目だけれど、抑えなくてはいけない重要なところだと思う。


永遠の仔/天童荒太

PAGE TOP


 

 Copyright(C) Tsuji&Habane. All Rights Reserved.