五木寛之の著書の一つに「他力」(私が読んだのは幻冬舎文庫)があります。
「TARIKI」という題名でアメリカでも売れたそうです。
「TARIKI」五木寛之
ここでいう他力とは、他人まかせという他力本願ではありません。
私が感じた他力の一例を紹介します。専門用語が多くなりますが、気にしないで読み進めて下さい。
有機合成化学を仕事としていた頃に、KI0116という酵母を用いた速度論的分割で光学純度94%くらいの光学活性中間体を得て、光学活性なプロスタグランジン誘導体を合成しました。
同じ光学活性中間体を用いて、とある生物活性を持つ天然物を合成しようと思いました。
ところが酵母は植え継ぎの過程で形質を変えることもあり、KI0116で得られる光学活性中間体の光学純度は80%くらいに低下してしまいました。
他力を感じた筆者の論文(※クリック拡大)
それでも先の工程に進めましたら(全合成工程は30数工程でした)、ある中間体が結晶となり、2回ほど再結晶化を行うと、光学純度はほぼ100%となりました。
これは化学的に見て驚異的なことでした。
そして光学純度100%の最終物合成に成功しました。
あの中間体で光学純度が上がらなければ、この合成は成功しなかったでしょう。
合成ルートを考えたのは自力ですが、ある中間体で光学純度が100%になったのは、まさに他力と思います。
私なりに他力を解釈すれば、自力だけでは生きていけない、他力の風が吹くことがある、その時他力に感謝する。
ツーさん【2019.8.19掲載】
葉羽 同級会でのカラオケお世話様。いやぁ、時々あることだけど、今回ほど画像チョイスが難しいのは無かったわ(笑)