私の生き方は「あてなどないけど、どうにかなるさ」みたいな感じと書きましたが(雑感 421&422)、私の専門である有機合成化学においては、しっかり合成計画を立てていました。
ある程度有機合成の学識が付いた頃には、夜な夜な一杯やりながら合成計画を考えるのが、楽しみの一つでもありました。
構想中・・
私の学位論文は、複雑な構造を有する天然物の多段階合成3報から成っていますが、その1報目の論文の合成計画の概要を示します。
微生物反応、この場合は酵母による不斉還元で鍵中間体を得て、最終目的物に導くというものです。

学位論文1報目の合成計画(筆者提供)
専門的な話になりますが、ラセミ体((±)-4)の不斉還元で得られた光学活性体は欲しい立体配置と逆のもので、還元されないものが欲しい立体配置を有していました。
ただし光学純度は低かったのですが、ある酵母を用いると、それが高純度で得られ、それを用いて光学純度の高い目的物を得ることができました。
このような形で当初の思惑とは違う形で合成できた、というのは珍しいことです。
発表の予行演習
この1報目は大学留学中で、学会発表前には教授室で予行演習しますが、私が始めると指導教官の森先生(雑感 3、他)が「おっ、訛っているな、ズーズー弁」といきなり茶化されてしましました。
でも、ある時先生は「お前の、当初の思惑とは違う、というあの発表は気に入っている」と。
森 謙治先生
出来の悪い学年で(雑感 404)、褒められた記憶なんてなく、その時が初めてでした。森先生さえも考えていなかった形で、合成が上手くいったということです。
セレンディピティ(雑感 49)の一つだったのでしょうか。
ツーさん【2025.12.29掲載】
葉羽 思惑とは違うけど偶然できちゃった話か。「終わり良ければすべて良し」ってやつだな。←(違います。)