少し前に読んだ、霜村悠康の新薬開発を巡る医療ミステリー「特効薬」(二見文庫)に、次のような件(くだり)がありました。
『・・・「〇×製薬のほうの情報は?」「臨床第三相に入るというのに、化合物の構造式がまったくわかりません。特許を申請していないようです」・・・』。
『特効薬』(二見文庫)
医薬品開発を少しでもかじったことのある方なら誰でも分かっていることですが、特許の申請なしで医薬品の開発を進めることはあり得ません。
それも単に特許出願するだけではなく、普通には綿密に特許戦略を立て、少しでも独占権の維持できる期間を延ばそうとします。
また臨床第三相試験中間検討会で、当該開発品の方が対照薬(同薬効の既存医薬品)より副作用が少ないとの記述がありますが、臨床第三相は二重盲検法で行われますので、臨床途中での当該開発品と対照薬の比較は不可能です(ぼんやりと推測することは可能ですが、あくまで推測です)。
特許庁
小説は全てフィクションと言ってしまえばそれまでですが、小説とは言え基盤は現実社会と思います。現実の規制や常識の中で、物語が展開されるのが普通です。
現実に起きる可能性は低くても、可能性として全くないわけではない、現実の延長線上にはある、だから物語として面白い、そういうことだと思います。
夢の世界を紡ぐSFなどは別にしまして。
SF小説
小説としては面白い部類でしたので、「その殺人事件は福島市のタワーマンション(20階以上)の密室で起こった」で始まるミステリーを読んだ感じ、と書こうと思いましたが、何と福島市にもタワマンはあるのですね。
書く前に何でも一応チェックすべし、と肝に銘じました。
シティタワー福島
ツーさん【2025.8.11掲載】
葉羽 その通り。「シティタワー福島」が建ったのは、もう19年も前の話になる。ちょうどその頃、道路向かいのビル5階に僕が勤務している事務所があって、立ち上がるのを座席からずっと目撃していたよ。←(ずっと?)