読んだのはもう去年の秋頃になりますが、吉行淳之介編「酒中(しゅちゅう)日記」「また酒中日記」(共に中公文庫)は2冊合わせると60人を超える作家の執筆による、酒にまつわるエッセイ集です。
多くは、作家仲間同士でどこぞの居酒屋、料亭、バーなどで飲んだという話ですので各編、まあ、肩肘張らずに読める内容です。
「酒中日記」二巻
何軒かのお店は複数の作家のエッセイに登場していました。
ほとんどのエッセイは昭和に書かれたもので、今はどうか知りませんが、かつては文人たちが集まるお店があったのですね。
文壇バーなる言葉は最近耳にしなくなりましたが、私としましては林忠彦が太宰治を撮影した銀座「ルパン」が思い出されます。
銀座「ルパン」
「酒中日記」にルパンは出てきませんでしたが、同じく文壇バーと言われる銀座「魔里」は何度か出てきました。ちょっと驚きましたが、どちらのお店も現役なのですね。
肩肘張らずに読めるのはよいのですが、渡辺淳一が「・・・家に戻ったら、やはり午前三時。二日続きで、さすがに深夜原稿を書く気力なし。「酒は止めよう」。にわかに自己嫌悪にとりつかれて床にもぐり込む・・・」と書いてあるのを読めば、二日酔いくらいで禁酒なんて絶対にあり得ないことと思ってしまいます。
作家:渡辺淳一
そして、誰それとどこどこで飲んで翌日は二日酔い、なんて話は誰でも書けそうです。
私もこの雑感の中で、酒肴シリーズと題して酒にまつわる話を書いていますが、「酒肴1:最後の親孝行(雑感 204)」などは自画自賛ではあるものの、「酒中日記」に加えてもらっても遜色ない内容と思っています。
ツーさん【2024.3.25掲載】
葉羽 「最後の親孝行」は余韻が残るいい記事だったね。ウチの親父は癌になっても養命酒飲み続けたからなぁ。