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  by Suzaku-RS / Site arranged by Habane
"let down" by My World

朱雀RS スキー教師になって何年もの月日が流れていた。嫌いだった基礎スキー、“クソスキー”って馬鹿にしていたのに・・・

 

 実際、スキー教師には、冬の間、比較的自由な人が多い。
 農業に従事されている方が多いのだ。

 『夏はトラクター、冬はインストラクター』

 ~などと言っては、
 インちきラクターなどと呼称して相手にしなかった。

記念すべき初講習

記念すべき初講習

 いざ、自分がインちきラクターになってみると、
 これが、結構スゴイ世界なのだった。

 人前で転ぶのは恥とされるし・・・
 なにより、ゲレンデでは絶対的存在でなければならない。

 胸に輝くバッチにかけてってなもんである。
 いささか、武道に似た感触があるのだ。

(悪魔の声)やめてよぉ~
 精神論や方法論で済むならば、夜を明かして語り合えば、
 上手くなっちまう訳ェ~???
 もっと、リベラルなものでしょう、スポーツって!!!
 だから、日本スキーは世界で勝てないんじゃないの~?

一番弟子とともに

一番弟子とともに

←白い世界の中で練習じゃあ!

 僕は、自分の道を歩むことにしていたのだが、
 やはり、胸に輝くバッチにかけて、下手クソと呼ばれるのは嫌だった。

 実際、良く練習したし、感覚もイメージも格段に上がっていた。

朱雀RS(選手権では、勝てなくなっていたが・・・)

 確かに僕はどんどん上手くなっていた。

【滑り続けるということ】

 クソスキーも、その採点基準に’速さ’ってモノサシを取入れて
 正しい道筋を歩むようになっていた・・・
 が、反面、僕の選手権での成績は落ちる一方だった。

朱雀RS(だって、遅いんだもん、僕ってば!!!)

 競技から基礎へ転向する選手が物凄く増えていた。

(悪魔の声)生まれた時から、スキー板を履いて、
 スキーで学校に通っていた人達に勝てるわけないでしょう!!!
 雪無し県の千葉のスキーヤーなんだぞぉ!
 サンデースキーヤーなんだぞぉ!!!
 ふん、あんまりくやしいから、続けてやるんだ。

 ボロボロの成績で滑り続ける老兵が何年たってもそこにいた・・・。

あれぇ、朱雀さん、まだ続けてるんですかぁ?長いですねぇ!」

(悪魔の声)オマエなぁ、毎年同じこと言ってんじゃぁねぇぞ!
 御願いだから、ほっといて!
 俺はゼッケンを着けるのが好きなんだよ!

 審判員が同僚や後輩になっていた。
 済まなそうに低い点を出してくる・・・。

(悪魔の声)偉そうに採点してんじゃねぇ!
 俺と一緒に滑ってみろって・・・
 講釈ばっかたれてないでさぁ、
 滑って見ろってば、君達には負けないよ、絶対!!!
 役員面して、口と頭でスキーしてなさいって・・・
 身体でするんだよね、スポーツって!

 滑らなくなった人達は指導員資格を返上するべきだよ!
 生涯資格なのはおかしい!

 まぁ、運営する人達がいなければ、成り立たないけれど。

朱雀RS(とても感謝しているのだけれどね)

 滑らない人達にスキーを語って欲しくないなぁ!
 まぁ、昔教えた人に採点されるって妙な気分なんだな!

 やがて、ベテランスキーヤー選手権
 なんてのが開催されるようになった。
 僕みたいなオヤジを締め出す作戦らしい。

『40歳以上の方はこちらへどうぞ』だってさ!
 出てやろうじゃないの、はい、3位入賞!!!

 県で3番目に上手いオヤジスキーヤーになっちまったい
 ・・・って、ちっとも、うれしくないぞぉ~。

 だって、6人しか出場してないんだもの・・・・・・
 しつこいけれど、僕の上二人はオヤジ道産子だかんね!

【EVOLUTION】

 長い板を操るのが誇りだった。

 200Cmの板がインチキラクターの間では基準だったので、
 わざわざ、メーカーに御願いして202Cmだの、
 203Cmだの変な長さの板を作ってもらったものだ。

朱雀RS「俺の方が長いぞぉ~」って、御馬鹿な話をしたものだった。

 そんなある日、遂にソイツはやって来た!
 バブルが崩壊してスキー人口が激減した頃だった。

 スキー用具のEVOLUTIONが勃発していた。

 

 カービングスキーとか称して、オシャモジみたいな
 幅の広いショートスキーが出現したのだ。

カービング・スキー

カービング・スキー

 スキー界全てがカービングスキーに浸蝕されてしまった!
 あっという間だった。

 SKI-BOOTSもカービング対応とかで
 ハイヒールに変貌してしまった。

 道具に思いきり依存するスポーツである。
 まさに僕には“青天の霹靂”だったのである。

 拠り所のYAMAHAはスキー業界から撤退してしまった。

 地球で唯一、
 CAD(コンピューターオートマティックデザイン)による
 生産をしていたそのメーカーは
 新しいマテリアルのデータベースを持っていなかった。

晴天の霹靂

晴天の霹靂

 職人を持たない唯一のメーカーは開発費を捻出できずに、
 その輝ける長い歴史に幕を引いた。

 世界で始めて、グラスファイバーという心材で、
 木材以外のスキー板を世に送り出した
 そのメーカーの終焉に僕は涙し、YAMAHAのウェアを脱いだ。

 早々に他のメーカーから引合いが来た。

他のメーカー「朱雀君、これ履いてみてよ!」

 始めてのカービングスキー・・・・・・・だめだぁ!!!
 どうしても、狙ったラインをトレース出来ない!

 板があらぬ方向へ進むので、
 上体と下半身のコンビネーションがとれない!

 長年愛用した板の消滅と共に僕も終わってしまうのか????

悩めるSKIマン

悩めるSKIマン

←ヘタクソになっちまって
鯵の開き状態の朱雀。

 ちきしょう~いまさら短い板なんて使えるかぁ!
 うっうっ・・・終わってしまった。

 模範演技を演じれないスポーツ教師なんて・・・僕は許せない!
 革命に僕は負けてしまったのだ。

 こうして僕は、長年連れ添った命とも言える
 SKI-BOOTSを脱いだ。

 くそぉー泣いてたまるかぁ!
 こんな事で辞めてたまるかぁ!
 ちょっと休むだけなんだ。

 I’LL BE BACK!!!

 思考錯誤の日々が僕を待っていた・・・。

 上を向いたらキリがない 下を向いたらアトがない 泣いてたまるかっ! 夢がある

(by 朱雀RS 2012.10.24 リニューアル・アップ)

葉羽青春をかけたスケートを思わぬ事故で断念し、一時は自暴自棄にもなりかけたが、生涯を通す友人とめぐり合い、そこから見果てぬスキーへの挑戦。

 やっと栄光を手にしたのもつかの間、今度はスキー板の技術革新の大波にさらされ、頼みのYAMAHAが業界から撤退。

 さあ、八方ふさがりの朱雀は本当にスキーブーツを脱いでしまうのか?

 いよいよクライマックス。次号必見!!


 


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