ネジの飛んだノーミソの僕は絶好調だった!
残り数種目は空を飛ぶ勢いで滑り終えた。
大回り系の種目など自分ではない程の速さだ!
最後の種目、苦手の「総合滑降」(自由演技)でのことだ。
「採点の着眼点:積極性、シュプールレイアウト」って、
なんだそれぇ~訳わかんねぇ!!!
仕方がないので、僕の前の受検者が
「サロモンSKI-NOW!」なんてTVにでてる奴だったので、
マネッコすることにした。
(我ながらなんて姑息な奴なんだ!!!)
ところがっ、驚愕!!!
真似なんて出来ねェ~スゲェ!!!
ホントに飛んでっちまったよアイツ!
いいや、行っちまえぇ!
COAT一杯を使って命懸けの速度!
コケルコケル…あぶねぇ、キャッホーイ!
終盤はSTEP-STEPルンルンるん!
ぐぉおおおる(GOAL)!!
あれっ? なんて気持ちいいんだ・・・
SKIはこうでなくっちゃぁね!
「ユキ、どうしちまったんだ???」
「えっ、駄目だったのぉ???」
「いや、凄く良かった!
全日本の決戦みたいだった。
ユキじゃなかったぞ、今の!」
「フェ~イ、うれぴぃ~」
だが、どうしたって、何度自己採点したって、
ギリギリの結果にしか思えない。
お馬鹿な頭にネジが戻ってきて、
焦燥感と不安の虜となっていた。
結果の集計・判定会などで、半日ほど待たされる。
北海道から九州迄、電話が飛び交っている。
(悪魔の声) いまさら、情報収集してどうなるの・・・?
ナオは、折角だからと滑りに行ってしまった。
受検者の雑踏が耐えられなかったので、
僕は高原ホテルのビュッフェへと、
トボトボ・・・限りなく空虚だった。
ぼぉ~、トボトボ・・・エントランスへ向った。
ゴン、ガラガラ・ガシャーン!!!!!!!
訳が判らず、立ち竦んでいた!
エントランスと思ったそこは、
3m四方ほどの飾り窓だったのだ!
(悪魔の声) このやろぉ~
田舎の山にこんな、気取ったモン作るんじゃねぇ!!!
僕は只、おろおろするだけだった。
騒ぎを聞き付けて、ナオが駈け付けてくれた。
支配人との交渉の末、弁償が決まり、
職人さんを呼んで、見積もりを出してもらった。
¥298、000-也・・・・・・・・・って、
一・十・百・千・万・・・・・・・・・
えっええ~にじゅうきゅうまんはっせんえんん~
僕はその場に倒れ込んでしまった!
職人さんが言う。
「アンちゃん、なんともねえかやぁ?」
「よかったなぃ!」
「こんだけ、厚くて重いグラァースだと、
腕の一本もぶっとんじまうぞぃ!」
「いやぁ、えがった、えがった・・・」
合格発表の時間となった。
高原ホテルのロビーに掲示される。
大学受験の合格発表の雰囲気だ!
「あっあっ、在ったぁ~」
その日僕は、千葉で93人目の全日本公認指導員となった。
人口比率でいうと、
弁護士・公認会計士にも勝るとも劣らない
その資格を手にしながら、僕はちっとも嬉しくなかったのだ。
なんたって、にじゅうきゅうまんはっせんえんん~が
頭から離れないのだ!
合格の喜びより、金策の大変さにめげていた。
公認指導員なんだぞぉ~
あの、きっと飛び跳ねる程、
嬉しい筈の泣き出す程の感激がある筈の・・・
合格の瞬間を返せぇぇ~
僕は、思う!
ちっちゃな失敗でさえ、
大きな喜びを台無しにしてしまうことがある。
ほら、純白のドレスにちっちゃなシミがついたら、
なんとなく、着るのも気が引けるでしょう???
注意して注意して、
丁寧に生きて行かなければと・・・
喜びは初心として残して、
失敗は、忘れ去られ・笑い話になるんだ!
でもねェ~
返せぇ~
にじゅうきゅうまんはっせんえんん~!!
上を向いたらキリがない 下を向いたらアトがない
泣いてたまるかっ! 夢がある
(by 朱雀RS 2012.9.16 リニューアル・アップ)
友の支えで前半の失点を挽回し、
見事、公認指導員の座を射止めた朱雀。
おめでとう!本当におめでとう!!
・・・となるはずだったのに、298,000円!?
それもまた人生。ドンマイ!!! |