もちろん自慢なのだが、僕は、良くスポーツ万能と評されることが多い。 実は、とんでもない間違いなのだ!
僕はウンチ君である。
子供の頃、タップントイレに落ちたんだぞということもあるが、とても、とっても、とぉ~っても、運動音痴なのである。
小学生の頃から、鉄棒でフットサークルやら、大車輪やら見せびらかしは・・・
「どんなもんでぇ~い!」
~とか、体育館で前方宙返りを見せびらかしては・・・
「どうだ、すげぇだろぉ~」とか思っていた。
実態は、逆上がりもマットでの前転すら人間ワザではないと思っていたのだ。
なんで、宙返りなんか出来ちまったかというと、それは・・・食いモンに対する条件反射なのであった。
父が文部教官だったので、御友達には体育教師の卵が沢山いた。卵に良く呼びつけられるのだ。
「ヒデユキ、今日、F大の体育館においで。美味しいアイスがあんどぉ~」
父にくっついて、ホイホイと大学へと向う僕であった。
僕はモルモットだった。体育教師の卵が、寄って集って僕をいじくりまわすのだ。
しかも、それは出来るまで色々な方法で、あれやこれや試される。
(アイスやらケーキの力は偉大である。)
僕には何人もの専属コーチがいたのだ。そりゃぁ、タコでも出来ちまうでしょう。
という訳で、個人競技で苦手なものは無い位の話しになってしまった。
反面、団体競技はからきし駄目である。
特にボール運動はまったく駄目で、ボールセンスのかけらもないから、いつも遠巻きに見ているだけだった。
かけっこなんて、下から二番目くらいの勢いである。
これには、いい訳があって、僕は早生まれで学年で二番目位のチビだし、まわりは御姉さんや御兄さんばかりだから仕方が無いのだ!
(・・・ということにしている。実際、ほんとに遅い!)
一番凄いのは水泳を習った時である。
父は水泳部の顧問だった。僕んちの伝統で、泳げないと人間扱いされない。プールに投げ込まれる! 溺れる前に引上げる!
これを、泳げるようになる迄繰り返す。指導のかけらさえ、まったく無い!
僕は、まったく泳げずにいた、兄や姉の数倍の手間が必要だった。父はこの伝統作業を学生にやらせたのだった!!
(悪魔の声) このやろ~くそオヤジィ、呪ってやるぅ~!
しかし、美味しいラーメンで騙されてしまうのであった。
御蔭様で僕は河童だ。
早さこそ実現出来なかったが遠泳なら死ぬ迄、泳いでいられる。
(んだって、ホントに殺されるところだったんだもの)
父はと言えば、それを横目に身体中を縄でがんじがらめに縛っては、
「堀の中を、捕まった忍者が城から逃げるところ」
~などと言って、古式泳法を披露したりしていた。
(悪魔の声) ばかやろぉ~、何の役に立つんだぁ!!!水泳ってば武道かぁ?????
(僕は父が嫌いであった。)
そりゃぁ、いいこともあった。
女子大生部員のマスコットであった僕は、学生寮でなんと、小学4年生位迄一緒に御風呂に入っていたのだ。うふふ・・・
(あっ、駄目、葉羽様、ここはCUTねぇ~)
←(ダメ、却下!あはははは!)葉羽
そんなこんなで、僕は水泳は大嫌いなのだ。
他に興味もないので中学は水泳部だったのだが、草むしりが一番楽しかった。
(なぜって、プールのとなりにはテニスコートがあって、あこがれの・・・あっあっ、やっぱり、葉羽様、ここもCUTねぇ~)
←(じゃ、名前だけCUT。)葉羽
とにかく、四ツ倉の海の家でトイレに落っこってウンチ君を証明してしまった僕ではあったが、空手部の塩君(のちの恩師、塩田先生)に助けられた後、水泳部の学生と3Km程の遠泳をこなす迄になってしまっていた。
あのね、天国のトウチャン、僕は水泳はホントは嫌いなんだよ。
それもね、大嫌いなの・・・
(悪魔の声) バカヤロォ~このクソオヤジィ!
普通に育てろよなぁ・・・ 僕が欲しかったのは競泳パンツじゃぁないんだよ・・・
遊星王子やナショナルキッドや七色仮面やハリマオのメンコが欲しかったんだ!
子供の頃から、無理な運動ばっかしてたから・・・発育がアンバランスで胴長短足になっちまったじゃぁないかぁ!
このやろぉ~ 後5Cmでいいから、俺に足の長さを足してくれぃ!
アイスやケーキなんかいらなかったんだぁ!
「俺に足をくれい!!!」
こうして、不運な幼少時代を過ごした僕ではあったが、アスリートとしての基本は、この時代に養われたに違いない。
スケート選手の時である。年上の選手が言う・・・
「朱雀、早いなぁ!?」
「んなこと、ないですよ、僕なんかまだまだです。」
心で思う・・・
(悪魔の声) 当り前だ、バァカ! アンタの何倍滑ってると思ってんだ。こっちは、昼飯も食わずに滑り込んでるんだぞ!
・・・実際、自分に才能のかけらも無いのは認識していたので、練習をしないと不安なのだ。
もうやめろと言われる程、練習を積むのが僕のスタイルだ。
生意気なのも、それだけやったからなのだ。
(体育教師の卵に教えてやる位の上手さだったもんね!)
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それでもスキーが・・
(photo by 朱雀RS)
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SKIでもそうだった。
「朱雀、上手いなぁ、かなわねぇや!」
「んなこと、ないですよ、僕なんかまだまだです。」
心で思う・・・
(悪魔の声) 当り前だ、バァカ!アンタの何倍滑ってると思ってんだ。アンタが寝てる時から滑ってるんだよ!
アンタが風呂入って、ビール飲んでる時だって滑ってるんだよ!
一番リフトから最終リフトまで、僕はゲレンデにいるんだよ!
皆、よっぽど好きだと思ってるらしいが、ほんとはスキーもあまり好きじゃないんだよ!
寒い、痛い、重い、辛い、疲れる・・・五重苦だもの・・・晴れた日のロングディスタンスは気持ちいいから、好きだけどね。
早くありたい!上手くありたい! そう、ただそれだけなんだ!
☆もくもくモクモク黙黙・・
やれ滑れ、ほれ滑れ・・☆
風に向って by 朱雀RS
一瞬のひらめきがある!
一瞬の心地良さがある!
一瞬だけ、神様が囁きかけてくれた気がする・・・・
一瞬だけ、背中に翼が生えた気がする時がある・・・
その一瞬を探す為だけに、
恐怖を押さえて坂を落ちていく
今日も風に向う
一瞬の浮遊感を求めて
風は・・・僕に浮力をくれるだろうか?
引力は・・・僕に速度を与えてくれるだろうか?
遠心力は・・・僕に綺麗なターンを描かせてくれるだろうか?
自然は僕を拒絶しないで、
友達にしてくれるのだろうか?
今日も風に向う
たった一瞬を求めて・・・・・・ |
だからね・・・“PRACTICE & PRACTICE!”が座右の銘になっちまってるんだ。
アスリートってホンットに御馬鹿な人達なんだ。たった一瞬の為に一年のほとんどを費やすんだから・・・
こんなことしてなければ、もっと素敵な人生があったかもしれないのに・・・この呪縛から解き放たれたら・・・
あのアイスにつられた幼少の日々がなければ、僕はきっと・・・
上を向いたらキリがない 下を向いたらアトがない
泣いてたまるかっ! 夢がある
(by 朱雀RS 2012.8.17 リニューアル・アップ)
“練習の虫”も天から与えられた一つの美しい才能。
人間、向上心を持つこと、そして初心を忘れずに、その志を持続することが結局は遠くまで行ける事に繋がるんだろう。
(“天から”と言うよりも“天国のオヤジさん”が残してくれたのさ。)
頑張れ朱雀RS。僕たちは君を応援する。 |