Rei 今回はドイツのケーキに纏わるエピソードを前・後編で書いてみようと思う。はじめに「計らないケーキ」。
当時はスマホもなかったので写真がない。記憶をたどりつつ、ネットから似た画像を探して紹介したい。
◆ドイツのケーキ(前編)【計らないケーキ】
30年前のこと。当時、薬局の仕事が忙しかったハイデさん。家事を手伝ってくれる家政婦さんを雇っていた。
ハイデさん宅を訪ねたその日は、たまたま家政婦のヴォーカンマーさんがいて、ケーキを焼いてくれることになった。
すると、ヴォーカンマーさんは、戸棚から小麦粉、砂糖の大袋を、冷蔵庫からはバターや卵を取り出した。大量のりんご(ドイツのりんごは小さくて形も不揃い) も。
「手伝ってみたい」と言うと「りんごを洗って芯を取り、スライスするように」との指示。「何個ですか?」と聞くと「やってみないとまだわからない」との返事。
大きなボールに、卵、砂糖、バターを適当に入れて?! かき混ぜ、そこに大袋から、バサバサと小麦粉を加える。
ちょっと見て足りないと思うと、足したり。生地を味見し、今度はまた、袋から砂糖をササッと加えたり。
りんごの準備をしつつ、呆気にとられた。なぜなら、日本では、お菓子作りで最も大切なことは「分量を正確に計ること」と言われていたからだ。それに生のケーキ生地を舐めたりしない。
ヴォーカンマーさんは大きな天板に、できた生地を流し入れた。その上にスライスしたりんごを隙間なく敷きつめていく。
りんごが足りないとみると、りんごを剥き始め、並べていく。天板の全面がりんごで埋まったら、予熱しておいたオーブンに入れ、タイマーをセット。
焼きあがった「りんごのケーキ」は、素朴ながら、とても美味しかった。
ヴォーカンマーさんは、5人の子供を育て上げた農家の主婦で「ドイツのお母さん」という感じの人だった。
家事は何でもこなし、その上庭の手入れも上手で、薬局の裏庭にあった、芍薬や紫陽花など、きれいに咲かせていた。
ハイデさんによると、大家族のヴォーカンマー家、ケーキを買うのは経済的にも大変。作り慣れているから、レシピは頭に入っているし、分量は計らなくとも感覚でわかるのだろう、ということだった。
初めて会ったヴォーカンマーさんが手品師に見えた。
ドイツの家庭では、ケーキを焼くのは普通のよう。
昔は、日曜日には家族揃って教会に行き、帰るとお昼にご馳走を食べ、デザートは手作りのケーキ、そういった習慣があったそうだ。
【2024.7.28掲載】
Rei 冒頭でお断りしたように、写真は当時のものではなく、ドイツの一般的な家庭での手作りケーキの画像を収集したものです。 |