Rei　今回は不思議な出会い、再会があったコンサートについて書いてみようと思います。 　なお、『思い出に出会う旅』に登場している場所、人物については説明を省きました。 ◆再会コンサート 　ドイツ南西部黒い森に、Königsfeld (ケーニヒスフェルト)という小さな町がある。 　 　ここはインさんの町 フィリンゲンとハイデさんの町 シュランベルクのちょうど中間に位置する。 　人口数千人の小さな町だが、歴史のある古い町で、昔の修道院の建物Zinzendorfplatz (ツィンツェンドルフプラッツ)の一部が小さなコンサートホールになっている。 　この音楽ホールKirchensaal (キルヒェンザール)では、当時(1992〜97)から定期的に演奏会が催されていた。 　この会場での、ある日のコンサート。18歳でショパンコンクール優勝というポーランド出身の若い青年ピアニストだった。 　プログラムは覚えていないのだが、非の打ち所がない完璧なテクニックだけが印象に残った。 　髪とたくわえた髭が、黒に近い濃い色だったのも覚えている。しかし、以来ピアニストの名前も記憶の彼方、忘れていた。 　それから長い年月が流れ、2021年秋、福島市音楽堂に、当代 ピアノの巨匠の一人といわれるピアニストが来ると聞いた。 　名前はクリスチャン・ツィンメルマン、コンサート直前までプログラムを明かさないとか。興味を惹かれ、聴きにいった。 　 　演奏会当日、厳かに登場したピアニスト、髪と髭はすっかり白くなっていたが、一目で、あのKönigsfeld で聴いた青年と同一人物であることがわかった。 　完璧なテクニックは変わらないが、燻し銀のような渋さとまろやかさが加わった素晴らしい演奏だった。29年ぶりの再会(正確には再見？) には、感慨深いものがあった。 　ところで、この町 Königsfeld には 1952年にノーベル平和賞を受賞したシュバイツァー博士(Albert Schweitzer)の家がある。 　 シュバイツァー邸 　博士はフランス領コンゴ(現ガボン共和国)のランバレネで医療と伝道に邁進。 　彼の家族がこの家で留守を守っていたが、ランバレネから帰ると、博士は家族と共に、この家で、くつろいだ時間を過ごしたそうだ。 　 Rei【2024.4.3掲載】