「一日のうちで一番好きな時っていつ?」って聞かれたら、私は「まだ街が起き出していない早朝」と答えますね。
早朝は人通りの少ない閑散とした風景、前日の人間の営みがまだ残っている道路、それとは逆にその人間の営みを道路から消そうと掃除している人、通勤客のために開店準備をし始めるカフェなど、これから街が起き出そうとしている風景が混在していますよね。
空に表情があるように、早朝の道路にも日によって、また場所によって表情があるように思います。
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グアテマラの風景 |
ロンドン赴任中にロンドンのいろいろな場所の早朝(特に土日)の道路や閑散とした街をカメラに納めていきたいなと思ってるんですが、やっぱり休日だと遅くまで寝てしまい、結局未だに実行していません。ダメですね。
旅に出ると、よく早朝の風景に出会いませんか?
例えば、早朝の国境を越えるバスに乗るために宿からバスターミナルまで歩いたりとか、早朝の街に着いて安宿を求め歩いたりとか。
私にとってはバックパックを担いで、まだ起きていない街を歩く時、あー自分は旅してるんだなと実感する一コマなんです。
で、前回も言いましたが、そこで必ず谷川俊太郎の詩「朝のリレー」が頭に浮かぶのです。
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早朝のグアテマラ |
話はそれますが、旅に出て朝食をゆっくり食べ、さて今日は何しようかなと考えている時って贅沢ですよね。
別に取り立てて豪華な朝食ではないのに、お店に入って時間を気にせず朝食を食べ煙草を吸い今日の予定を考えるという行為自体が、私の平日の生活にはないからでしょうかね。
高級レストランでどんなにいい食事をしたとしても、旅先での朝食の時に味わう贅沢感にはかないません。
ということで、というか何の脈絡もないままに書いていますが、年末年始に中米を旅してきました。
日本から中米に行くよりは、英国から行った方が近いだろうと思いきや、そんなこともなかったですね。ロンドンから飛んだ方が2~3時間ほど所要時間が短かったという程度でした。
グアテマラシティに飛行機で夜遅く着いて、次の日、早朝発の国内線のフライトでマヤ文明の遺跡がある街に辿り着きました。
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グアテマラの古都アンティグア
(メルセー教会) |
で、その街で1泊して国境を越えてベリーズシティへ行く早朝発のバスに乗ったわけです。
ベリーズという国ですが、あまり日本人にとっては馴染みのない国かも知れませんね。
人口も29万人くらいの小国(郡山市と同じくらいの人口)で、グアテマラの右隣に位置しています。
グアテマラはコーヒー、エルサルバドルやニカラグアは内戦のニュース、コスタリカはコーヒーやきれいな海、パナマはパナマ運河などで知名度があるかも知れませんが、ベリーズってあんまり聞かないですよね、何々が有名とか。
マリンスポーツが好きな方の間ではダイブスポットとして知られているようですが。
ベリーズのような小国が主要各国に大使館を持ったりするのは結構大変なのかなとか、国民の一体何割が公務員なのかなとか思ったりします。
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ベリーズシティへのバス |
ベリーズはもともとグアテマラに属しており、スペインの植民地だったようです。
グアテマラの太平洋側の地域は開発が進んでいたのですが、大西洋側(現在のベリーズ)の地域は開発が遅れていました。
そこに英国人がやってきて移住して出来た国らしいです。なので、悪く言うと英国の不法占拠で出来た国らしいです。
(語弊があるかも知れませんが。)
そんなこともあって、ベリーズは中米諸国のなかで唯一公用語が英語(その他の国は公用語がスペイン語)の国となっています。
まあ、それはともかく、早朝の国境を越えるバスに乗り、グアテマラ出国手続き、ベリーズ入国手続きを終え、無事ベリーズに入国。国境でベリーズビザ発給に多少時間がかかったことを除いては。
というのも、近隣諸国やEU諸国のパスポート所持者はビザ不要であるため、バスの乗客のうち日本人の私だけがビザが必要だったのです。
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ベリーズ行きバスの車内 |
余談ですが、以前、私はシリアからレバノンに入る時に乗っていたバスに国境でおいていかれた経験があります。
(でも、そのバスは40分後に私が乗っていないことに気づいて戻ってきてくれましたが。)
当時、日本赤軍の岡本被告?という方が3週間前くらいにその国境で捕まったため、いろいろ訊かれて時間がかかったわけです。
で、イミグレの係員の最初の質問が「Are
you Japan Red Army?」でした。
もちろん「No!」と言いましたが。
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ベリーズの街中 |
ベリーズ国境に近い側のグアテマラの道路の舗装状態は悪くガタガタの道でしたが、ベリーズに入った途端、道路がきちんと舗装されているんですよね。
バスもあまり揺れないし、今朝の早起きもあって、私は程なく爆睡状態に入りました。
さて、数時間の眠りから覚めて、車窓から標識を見ると、ベリーズシティ○○kmとかという標識ではなく、チェトマル(ベリーズとメキシコの国境の地名)○○kmという標識が目に入ってきました。
時間的にはそろそろベリーズシティなんだけどなと思いながらバスに揺られること30分。
やっぱりおかしいと思って、運転手に聞いたところ、「ベリーズシティ?40分前に通過したよ」とのことでした。
「!!!!」
実は私は爆睡して降りそびれたことは初めてじゃないんです。以前もそんな経験をしたことがあるんですよね。
まあ寝過ごしたことは既成の事実なので、このままバスに乗って(もちろん追加料金を払って)メキシコに入るか、それともバスから降ろしてもらって、適当な交通手段を見つけてベリーズシティに戻るかですよね。
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ベリーズの街中 |
私はせっかくビザ代を払って国境でビザを取得したので、通過するだけではもったいないと思い、ベリーズシティに戻ることにして、バスの運転手に適当なところで降ろしてもらい、その辺の車を持ってるおじさんに頼んでベリーズシティに向かいました。
(もちろん、謝礼を支払いました。)
その日はベリーズの祝日で国内のバスの路線は運休だったので、それしか方法がなかったんです。
それにしても、恥ずかしかったですね、バスから降りる時。地元の人や他のバックパッカーに「あの日本人、寝過ごしたらしいよ」なんて言われてるんですよね、きっと。
というわけで、「バスで爆睡事件」でした。またいつかどこかで同じようなことがありそうで怖いですね。
《リニューアル配信:2019.12.8》 nemoto |