漕ぎ出せ!人生の大海へ。
 
 その24 彼を最後に見たのは 

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“Walking Man” by Music of my Mind

鞍馬 会社の後輩が自殺しました。前の会社での事です。彼は私の一歳年下の後輩でした。

 私と同じ部署に配属され、初めてできた後輩なので、個人的には目をかけているつもりでした。

 ある夜、9時ごろ、いつものとおり、他に誰もいないフロアで二人だけで背中合わせで仕事をしていました。

 私は同期から飲み会に誘われており、その後輩も誘ってやろうと、彼が帰りがけに私に挨拶するのを待っていました。

 ですが、彼は何も言わずに帰ってしまいました。

 私は彼を見た最後の同僚です。

 翌日、時間になっても彼は会社に現れませんでしが、誰かが休暇の連絡を受けているものと思い、誰も何も言いませんでした。

 昼前になって、課長が「誰か休暇の連絡を受けているか」とたずねて廻り、初めて無断欠勤であることが分かります。

 さらに翌日課長が彼の部屋を訪ね、管理人に鍵を開けてもらい、彼が倒れているのを見つけます。

 彼は死んでいました。

 遺書らしいものは見つからず、結局原因はわかりませんでした。

 原因が分からないので、なんとも言えませんが、あの夜飲み会に誘っていれば救えたのかなと今でも気にやんでいますし、死ななければ逃れられないほどの問題を抱えていたのに、先輩連中(私を含む)はまったく何も知らなかったということについて、自分達のふがいなさを悔やんだりしたものでした。

 

◆ 死なないように生きるということ

 何を勉強するか、どんな仕事に就くか以前に、生き続けること、死なないように生きることをまず教えなければなりません。

 皆さんもお子さんがいれば既に始めているはずです。「ストーブに触るな」「白線の内側を歩け」というのは死なないための教育の一環です。

 私はこれを意図的にやっています。

 まだ小さいので、「台所に入り込んでヤカンをひっくり返したが、中に入っていたのは水だった」とか「表通りに勢いよく飛び出したが、車は来ていなかった」ようなことがよくあります。

 このような事件を、「運良く死なずに済んだ事件」と考え、彼らがどれだけ自分の命を危険にさらしたか、彼らが死ぬようなことがあったらばどれだけ私たちが悲しむかを、私自身の反省を促す意味を込めて彼らに教えています。

 彼らがどれだけこれを理解しているか、どれほどの効果があるかは分かりませんが、自分の子どもをあの後輩のような目に会わせないために、「死なないように生きること」が一番大事であることを教え続けます。

鞍馬【2020.1.28 リニューアル・アップ】

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