鞍馬 茨城県牛久市長が、職員の夏期休暇を廃止して論争になっているようです。
公務員は、報道によると、有給休暇とは別に夏期休暇という特別枠があって、有給を使わずに夏休みをとることができるようです。
つまり、各年度の有給休暇とは別に、期間限定の有給休暇があるということですね。
私が今いるところは勤務形態が不規則なので比較対象にならないとして、前いた会社の例を挙げると、夏休みって、休みたい人が有給使って勝手に休むものだったわけで、確かに市長の指摘するとおり、「民間とかけ離れて」いるのかもしれません。
私の経験は所詮、弱小企業の例なので、大企業ではひょっとして公務員みたいな制度が採られていたりするのでしょうか?
ですが、私の知っている大企業の職員はみんな馬車馬のように働いていて、有給なんて「病気のときぐらいしかとったことない。」というのが実情です。
私自身も、自分か子どもの病気以外では休んだことないですね。
(私も子どもも体調を崩すことが多いのでかなり消化はしていますが・・・。)
「給料もらって休んでいい」というと、さも労働者の権利を守っているようで聞こえはいいけど、結局活用されてないじゃないかと皮肉のひとつもいってやりたくなります。
◆ 消化されない有給
毎日新聞の報道を見ると、市職労が「過去5年間で約100人が削減され、有給休暇も消化できていない。」と反発しているとのことです。
つまり、それがいいかどうかは別として、有給はあまっているということになります。
だから別に、「夏期休暇を廃止します。(あまってる)有給休暇で対応してください。」というのは、それほど職員の権利を害してないのではないでしょうか。
市職労に言わせれば、「有給休暇が取れないぐらい仕事を与えておいて、夏休みまで取り上げるとは何事だ。」ということなのでしょうが、実情は本当にそうなのでしょうか?
どうせ行使できない権利ならば、浮世離れしていることだし、廃止してしまえという市長の意見にも一理あるように見えます。
今回の論争は、誰のどんな権利を害しているのでしょうか?
◆ 行使されない権利
以前何かの記事で、「行使されない権利」というトピックを見たことがあります。
内容はかなりうろ覚えなのですが、その例は、零細レンタル着物店が「次回の着付け無料」というサービスを始めたところ、急激に売り上げが伸びたけれど、無料で二度目の着付けに来た人は今のところいないというものです。
二度目の着付けに来た人がいない理由の分析結果は忘れましたが、この事例はとても大事な2つのことをあらわしています。
つまり、人は商品を選んだり、自己の満足度を測るとき、必ずしも行使されない権利であっても勘定に入れるということです。
そして、その権利を顧客に付与しても、行使されないので、提供者側にはほとんど損失が発生しないということです。
要するに、行使しもしない権利を与えられて顧客は満足し、行使されないので提供側は持ち出しなしという好循環が生まれる「場合がある」ということです。
考えてみると、別にどこで買っても同じだけれど、ポイントカードがあるからいつもの店に行くくせに、ポイントがたまってから使おうと思っていると期限切れになっているなんてことは良くありますよね。
これも行使されない権利が店の選択に好影響を与えているいい例です。
◆ 奪われたのは満足感を得る権利
牛久市の例もそう考えれば、結果は違っていたはずです。
つまり、あってもなくても結局行使されないんだから、そんなものの廃止で対立して組合との関係が悪くなるぐらいならば、何かもっと別の「実際行使されていて、負担になっている権利」で廃止や縮小が必要なものをめぐって対立したほうがお互いの労力の使い方として合理的なんじゃないかと思うわけです。
今回のケースは、有給も夏期休暇も消化している一部の恵まれた(?)職員の権利を害しただけというわけではなく、その他の全職員の「とりあえず休む権利は与えられている。」という満足感を得る権利を奪い、労働意欲を少なからず損なわせてしまったと考えるべきです。
一方の市長は、「私の信念で廃止した。」と、強気な姿勢を崩さないようです。
信念を持って行動することは、とてもいいことですし、リーダーとして当然のことだと思うのですが、今回のケースは、その信念のために無駄に職員との溝を作るという、経営者としては失敗な行動だったのではないかと私は思います。