鞍馬 アメコミヒーローの王道「バットマンビギンズ」を観ました。
主人公・敵共に強い信念を持って戦っていたり、若い主人公が個人的な復讐と公の正義の狭間で悩んでいる姿も、アメリカンコミックヒーローの王道をいっているのかなと思いました。
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バットマン
ビギンズ
(C)2005
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ゲーリー・オールドマン(「レオン」の悪徳警官)やモーガン・フリーマンが脇役で出ているのもなんだか嬉しいです。
そう思って「いい映画だったかも」という感想をお送りしようと、内容を思い出している内に、ふつふつと「ストーリーおかしくないか?」という感情がわきあがってきました。
考えれば考えるほど、いってやりたいことがたくさんあるのですが、とりあえず登場する数々の道具についてお話します。
【「バットマン
ビギンズ」のストーリー】
少年時代、ゴッサム・シティ一の資産家である両親を凶弾で失ったブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)。
ゴッサムの治安と経済の悪化が招いた悲劇に遭遇したことで、ブルースは弱者を痛めつける悪を倒して生きることを決意。力を身につけるために世界中を放浪するブルースは、犯罪がうずまく裏社会に身を投じブータンの刑務所に収監される。
そこで出会うデュカード(リーアム・ニーソン)という謎の男。彼は、怪人物ラーズ・アル・グール(渡辺謙)から送られた使者であり、グールは強力な自警団“影の同盟”のリーダーだった。正義のためなら手段を問わない危険な結社でもある。
苦行を積んだデュカードは、ブルースの師匠として心身のトレーニングを指導し、敵の目を欺く術を教え込む。そしてブルースは、ゴッサム・シティへと舞い戻ってきたが、街は、かつて以上に悪の組織と暴力、腐敗が進んでいた。
そんな時、ブルースはもう一人の自分の存在に気づく。それが知力、体力とハイテク機器を駆使して悪と戦う仮面の戦士、バットマンだった…。
●監督 クリストファー・ノーラン |
◆ ウェイン産業の憂鬱
ウェイン産業は、この物語の主人公ブルース・ウェイン(=バットマン)が経営する、巨大コングロマリット企業の名前です。
劇中でバットマンが使用する様々な道具や機械はすべてウェイン産業の一部署が、巨費を投じて開発しては、誰からも必要とされずに打ち捨てられてきた最先端技術という設定です。
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バットマン
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ここでふと、「この会社本当に儲かっているのか?」といぶかしんでしまいます。
そんな部署を、何十年も塩漬けにしているなんて、ゴッサムシティの腐敗はウェイン産業の中枢まで迫っているなという感じです。
【最新技術の例】
1 谷を飛び越え橋を架けるための車
バットマンが乗り回す巨大な車がこれです。
後部にはジェットエンジンが搭載されており、何でも「谷を飛び越えて対岸までケーブルを張るために作られ、実験には成功したが実用化されなかった」車だとのことです。
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バットマン
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実用化されなかったのは、輸送用のヘリコプターを使えば要が足りることに誰かがこっそり気づいたからだと思います。
2 超軽量防護服
バットマンのボディーを形作っているのがこの素材です。
モーガン・フリーマンの言葉によると、「直撃でなければ鉄砲の玉も通さない。軍に勧めたが費用が高すぎて採用されなかった。」とのことです。
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バットマン
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いまどきニューヨーク市警でも、至近距離から撃たれても大丈夫な防弾チョッキを着ているはずですが…。
誰か、「軍にテイく断れたんですよ」と教えてあげてください。
3 マイクロウェーブ発生装置
物語の一つの鍵を握る装置です。「強力なマイクロウェーブを発生させ、周辺の水を瞬時にして気化させる」恐ろしい機械です。
街なかで作動させると地中の水道管が次々に破裂し、そこらじゅうが水蒸気だらけになる代物です。
ですがその割には、人体にまったく影響がない、ひとにやさしいテクノロジーとなっています。遠くはなれた水道管の中にある水だけを的確に狙えるなんてまさに奇跡です。
脚本家は人体の約60%が水でできていることを知らなかったのでしょうか?
◆ 間違いに気づかない大人たち
バットマンの秘密道具に、科学的根拠や開発した必然性をつけようとした努力は認めますが、はっきり行って矛盾だらけです。
これはもうフィクションというよりもただのでたらめ、ほら話です。
ハリーポッターのように魔法ならば魔法と言い切るとか、ドラえもんのように、できるかもと思うことはいつかはできるものだという、根拠は無いが嘘でもない説明をつけるとかしてくれれば、でたらめでも納得できます。
ですが、バットマンは無理に根拠や理由をつけようとして、それがあまりにも稚拙なのです。
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ハリーポッター
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前にも書いたかも知れませんが、ヒーローというのは子どもに夢を与える存在でなければなりません。と同時に、間違った知識や嘘を教えてもいけないと思います。
だから余計に、この手のストーリの破綻や明らかな誤りが入り込まないように注意して製作しなければならないのです。
たくさんの大人がかかわっていながら、本当にこの程度の間違いにも気がつかなかったのでしょうか。
それとも、これぐらいの子どもだましでお茶を濁してもいいやと思ったのでしょうか。いずれにしてもちょっとがっかりです。
鞍馬【2019.10.15 リニューアル・アップ】
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