【昭和 listen】#281〜女優いしだあゆみさん、さようなら
ずいぶん前のことだが、小説家檀一雄(女優檀ふみの父)の私小説とされる長編小説(遺作)を映画化した『火宅(かたく)の人』(昭和61年、東映)のDVDを観たことがある。
妻のほか、脳性麻痺を持つ息子のほか4人の子を持ちながら、女優を愛人として、通俗小説を量産しながら、自宅をよそに放浪を続ける作家の生き様を綴ったもの。
監督は深作欣二、主演の檀一雄役を緒形拳、愛人の女優役を原田美枝子、妻役をいしだあゆみ、母役を檀の実娘の檀ふみが演じ、檀との濡れ場を演じる島の女役には当初女優役を予定していた松坂慶子が充てられた。
この作品で、いしださんは第10回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、第30回ブルーリボン賞主演女優賞、第41回毎日映画コンクール 女優主演賞などを受賞した。

また、男はつらいよシリーズ第29作『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』(昭和58年、松竹)のBlu-rayを持っている。
マドンナはいしだあゆみ。当代屈指の陶芸家(片岡仁左衛門)の仕事場で働く美人役。
控えめに見えるが内に情熱を秘め、寅次郎に好意を寄せる大人の女性を見事に演じ、第6回日本アカデミー賞主演女優賞を獲得した。
高倉健の妻役を演じた『駅 STATION』(昭和56年、東映。これもBlu-rayあり)も忘れられない。
フジ系『北の国から』(昭和56年〜)、テレ朝系『やすらぎの刻~道』(平成31年~)、TBS系『金曜日の妻たちへ』(昭和58年~)、NHK『阿修羅のごとく』(昭和54年〜)などテレビドラマでも活躍した。
振り出しは一世を風靡した歌手だったが、自分的には女優のいしださんの印象のほうが強烈だ。
たしかショーケンこと萩原健二と結婚したが実際には入籍していなかったと記憶する。
そのいしだあゆみさんが11日に死去。享年76歳。同世代の人がまた一人去った。残念だ。R.I.P.。
昭和 listen 通算281曲目は、大ヒットした「ブルーライトヨコハマ」でも「あなたならどうする」でもなく、彼女の隠れた名曲を。作詞は義弟のなかにし礼(1938-2020)だ。
♬ 喧嘩のあとでくちづけを(昭和44年)/ いしだあゆみ
(いしだあゆみリサイタル(昭和44年)でのライヴ・バージョン)
毒舌亭(2025.3.19up)
    
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