活字に飢えている中
 また面白い本に出会えた

 日本で教職を務める中
 とあるきっかけで中途退職して
 妻子を残して
 ネパールの辺鄙な田舎に移り住んだ人の記録だ

 ガスも電気もない
 水は谷川から汲み上げる
 移住した当初は車が通れるまともな道も無い

 日本とは真逆の無い無い尽くしの地で
 心豊かな温かい人情に触れ
 本当の豊かさとは何かと思い知らされたという

 当たり前の事が当たり前ではない世界
 本のタイトルは「OK バジ」

 読み進めながら
 40年前のラダックでの記憶が鮮明に甦る

 新月の夜の深い闇
 音の無い世界
 風が止むと心臓の鼓動が聞こえる

 

 隣の村への移動は歩き
 いつ来るかわからないバスを待つよりも
 歩いてしまう

 台所、ストーブの燃料は乾かした牛の糞
 水は近くの川から毎朝汲み上げる
 何も無い世界に戸惑いながらも
 徐々に身体が慣れてくると
 物質から解放された不思議な解放感を感じる

 

 ある夜 シャワーを浴びたいと言ったら
 時間を指定された
 部屋に入って上を見上げたら満天の星空
 そこにヒョコッと子供の顔が現れ
「OK❓」
「OK‼️」
 穴の空いたバケツから温かいお湯が落ちてきて
 終わり❗️と言うまでお湯のバケツリレーが始まった

 あの子供達もいい大人になったことだろう
 Indiaへは幾度と行ってはいるが
 あのチベットで、また来るヨと言ってから
 アッという間に40年が過ぎてしまった

 もどかしさを感じながらも
 気持ちはいつもザンスカールの山々を飛んでいる

大和伸一【2025.6.5掲載】

 Photo by 大和伸一
 MP3 by 甘茶の音楽工房「ブナの森に舞う雪」
 Essay by 大和伸一
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