1 文字通り消失させるトリック
①犯人が死体を食べる。(ロード・ダンセイニ「二瓶のソース」)
②犬に食べさせる。(水上勉「眼」)
③鳥に食べさせる。(アーサー・ウィリアムズ「この手で人を殺してから」)
④ニシキヘビの消化液をタンクに溜め、その中に人間を入れて溶かす。
(海野十三「爬虫館事件」)
⑤死体を薬で溶かす。
(谷崎潤一郎「白昼鬼語」、松本清張「眼の壁」)
⑥死体を焼却する。
(江戸川乱歩「湖畔亭事件」、エラリイ・クイーン「七匹の黒猫」ほか作例多数)
⑦海辺に男が倒れている。駆け寄って脈を取ると反応がない。死んでいると思って人を呼びに行き、戻ってくると死体がなくなっている。→実は倒れていた男は死んでいなかった。テニスボールを脇に挟んで脈を止めていたのである。そして、発見者がいなくなってから歩いて移動したのである。
(ジョン・ディクスン・カー「暁の出来事」)
死体を焼却し、残った骨を砕いて焼き物作品に加え、誰も実現できなかった色を出す…というのが浅見光彦ミステリにありました。その動機が泣けるんですけれど…。
2 居場所を誤認させるトリック
①ドアがたくさんある長い廊下の奥に偽の壁を作り、部屋を誤認させる。
(歌野晶午「長い家の殺人」)
3 意外な場所に隠すトリック
①土の中に埋める。(作例多数)
②古井戸を埋めると称して地中に埋める。(江戸川乱歩「双生児」)
③馬の腹を切り裂いてその中に死体を入れ、馬ごと埋葬する。
(佐野洋「牧場に消える」)
④発掘済みの古墳の中。
(H・C・ベイリー「長い墓」)
⑤架空の人物の墓地を作り、埋葬する。
(ジョナサン・ラティマー「モルグの女」)
⑥水中に沈める。(作例多数)
⑦数日後にダムができて水没することになっている場所にある古井戸に死体を埋める。
(江戸川乱歩「十字路」)
⑧風船に縛り付けて空中埋葬する。(水谷準「お・それ・みを」)
⑨まだ雪が積もっていて森を覆い隠しているときに崖から転落して雪の上に落ちる。雪が解けて森が露出した時、森の上の方に引っ掛かってそのままになる。(角田喜久雄「死体昇天」)
⑩煉瓦または壁の中に塗りこめる。
(エドガー・アラン・ポー「黒猫」、江戸川乱歩「パノラマ島奇談」)
⑪トランクの中。
(江戸川乱歩「湖畔亭事件」、エラリイ・クイーン「三つのR」)
⑫コントラバスの箱の中。(横溝正史「蝶々殺人事件」)
⑬1つの棺に2人の人間を入れる。
(コナン・ドイル「フランシス・カーファックス姫の失踪」、エラリー・クイーン「ギリシャ棺の秘密」)
⑭樽の中。(F・W・クロフツ「樽」)
⑮冷蔵庫の中。(大下宇陀児「紅座の庖厨」)
⑯大きなゴミ箱の中。
(江戸川乱歩「一寸法師」、G・K・チェスタートン「孔雀の家」)
⑰雪だるまの中。
(ニコラス・ブレイク「雪だるま殺人事件」、江戸川乱歩「盲獣」、ヒルダ・ロレンス「雪の上の血」)
⑱ホテル内の1室で男女の死体が発見される。しかし、現場には男の下半身と女の上半身しかなかった。それぞれの半身はどこに消えたのか。→犯人は事故のため下半身がなく、いつも車椅子に乗っている第一発見者だった。彼は外で殺した男の下半身を自分の義足の部分にあてがって室内に持ち込んだ。そして、代わりに女の下半身を義足の部分にあてがって室外に持ち出そうとした。
(法月綸太郎「重ねて二つ」)
⑲洋服掛けの外套の中。(G・K・チェスタートン「翼ある剣」)
⑳鏡の扉のついた押入れの中
(エラリイ・クイーン「気ちがいティーパーティー」)
㉑将軍が負けるとわかっている戦闘を開始して戦死者の山を築き、その中に自分が殺した死体を混ぜる。(G・K・チェスタートン「折れた剣」)
風船に縛り付けて空中埋葬…って、埋葬してねーし。どっかに落ちてくるし。
4 死体を他のものにするトリック
①死体を死蝋にする。(江戸川乱歩「白昼夢」)
②死体をミイラにする。
(オースチン・フリーマン長編、コナン・ドイル短編など)
③死体にメッキをして銅像のようにしてしまう。
(ジョン・ディクスン・カー長編、ドロシー・L・セイヤーズ短編)
④死体を案山子にする。(水上勉「案山子」)
⑤軍隊の射的人形の中に混ぜる。(ジョン・ディクスン・カー長編)
⑥死体をバラバラにして人体標本にする。
(高木彬光「人形はなぜ殺される」)
⑦セメントの炉に投入してセメントの粉にする。
(葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」)
⑧死体をバラバラにしてパラフィンで固め、その後、材木を削る機械に掛け、紙のようにして捨てる。(松本清張「影の地帯」)
⑨パルプに混ぜて紙にしてしまう。(楠田匡介「人間詩集」)
⑩人間を液体空気の中に入れ、その後粉々に砕く。気球から湖にばらまき、魚の餌にする。(海野十三「人間灰」)
死体にメッキというのがありますが、裏切った女性に金箔を施し、皮膚呼吸をできなくして殺害した007『ゴールドフィンガー』は衝撃的でした。皮膚呼吸をとめるだけで人間が死ぬという事も初めて知りましたし…空前絶後の殺害方法でしょう。 |