変わっているような、変っていないような…。
岸波通信ARCHIVEの方で、うちのカミサンが『ケイコの東欧見聞録』がばく進中ということで、対抗するわけではないですが何か欧州をテーマにネタはないかと物色していたところ…こんなのが。
どうです、美しいでしょう?
イタリアはナポリの海岸に停泊する帆船群。遠くに見えるのはベスビオ火山でしょうか。
もちろん今の景色じゃありませんよ。これは100年ほど前の風景。
しかぁしっ!!
…この絵にはある重大な秘密があるのです。ふっふっふ。
同じ秘密を持つ絵を何枚か。まずは昔のアマルフィ海岸。
アマルフィ海岸の見晴らし台から、物憂げなまなざしの女性がこちらを見ている…。
ついでにもう一枚。
そろそろ分かるかな…??
ナポリの中心部にあるモンテオリヴェート広場です。
え、「写実的」?
そうですよね~ 実はこれ『絵』ではないんです。
絵でないとすれば写真? でも、100年以上も前に、こんなカラー写真が?
結論から行きますと、これら100年以上前のカラー写真は、白黒フィルムをカラー化する“フォトクロム”という技術で制作されたもの。
米国議会図書館がFlickrで公開している貴重な画像です。
カラー写真自体は、ルクセンブルクのガブリエル・リップマンが1891年に世界で初めて開発し、この功績で後にノーベル賞を受賞しましたが、普及するまでにはさらに時間を要しました。
カラーフィルムが商用化されたのは1935年。
コダック社が最初のカラーフィルム「コダクローム」を発売すると、数年後に日本でも「さくら天然色フヰルム」や「富士発色フィルム」が発売されています。
話を戻しまして、今度は100年前の写真と現在の風景を対比してみましょう。
まずはサン・マルティーノ修道院。
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サン・マルティーノ修道院 |
現在の姿はこんなふうに。
祭壇の十字架、その天井の宗教画といい、紛れもなく同じ場所ですね。
逆に、現時点の写真がかなり低い位置…床から撮ったのが分かります。
次は、現在ではブランド・ショップのメッカになっているマルティーニ広場。
4頭のライオンが足下に寝そべる塔が有名…うん、当時からあったか。
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マルティーリ広場 |
この塔を目印にして、Google Mapのストリートビューで歩いてみたのが下のハードコピー画像。
うん、塔以外の部分は建て替わっている感じ。
ま、100年前ですからね。
ちなみに、4頭のライオンは自由のために命を落とした者たちを象徴しているとのこと。
次は、ナポリの景勝地ポジリポから地中海を臨んだ景色。
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ポジリポからの景色 |
遠くに見えるのはベスビオ火山。
ベスビオと言えば、「まめしばのイタリア紀行」が思い出されます。
これは「イタリア紀行」で、まめしばがポンペイ遺跡からからベスビオ火山を見上げたワンショット。
う~ん、頂上のカタチが一緒です♪
さて、現在のポジリポからの景色。(夜景ですけれど…)
夜なのでベスビオ火山は見えませんが、(ちょっと視点が高い)同じ位置。
100年の間に街もずいぶん発展しています。
ベスビオが出たついでに、100年前のベスビオ火山の火口の写真も。
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ベスビオ火山の火口 |
おっと、噴煙が上がっている…怖いな。
で、下が現在。(撮影の方向は逆側からのようですが。)
うん、噴煙は出ていない。
でもって、火口への登山道が写っています。
登山道と言えば、思い出すのが岸波通信その170「フニクリフニクラの真実」の登山鉄道。
そうそう…こんな写真がありましたっけ。
この急角度!
現在は廃止されましたが、昔はこれで山頂へ登っていたのですね。
それならば… 逆に登山鉄道が写った昔の写真は~と思ったら、コレがちゃんとありました!
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ベスビオ火山とフニクリフニクラ登山鉄道 |
素晴らしい! ファンタスティック!
もう一枚は港からも近いナポリのメイン広場である、歩行者専用のプレビシート広場にあるサン・フランチェスコ・ディ・パオラ聖堂。
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サン・フランチェスコ・ディ・パオラ聖堂 |
この聖堂はローマのサン・ピエトロ大聖堂を模して設計されており、内部の白亜の大理石を用いた内装はパンテオンがモデルとのこと。
さて、現在は…?
実に美しい。
ライトアップが施され、100年前よりも更に美しさが引き立っているようです。
それでは、最後の一枚「ナポリ大通り」。
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ナポリ大通り |
行き交う馬車。
まるでタイムスリップして、その場に居るよう…。
日本とは全く違う異国なのに、ノスタルジアを感じてしまうのは何故でしょう。
《配信:2016.2.8》
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