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 その66 朱雀RSという男
「モーニングコーヒー」Benchi time

 今回は真面目な話ですいみません。(爆)

 朱雀が福島を去って一ヶ月が過ぎた。

 正確には、ほとんど単身で東京へ出稼ぎに行っていたので、奥さんを残していた福島の本拠を移したというべきだろう。

 そんな朱雀が、今朝、「今様徒然草Ⅲ」の16をアップしてきた。タイトルは「HOME-TOWN BOUND(郷愁)」。

 実家のある福島から“完全に去った”今の心境を書いたものだ。それを読んで、朱雀の記事で初めて泣いた…しばらく涙が止まらなかった。

 もともと実家に残した老母を傍で見守るために福島へ居を構えたのだが、彼の仕事は汎用機のメンテナンス。

 今どき、大型コンピュータを基幹システムにしている企業などほとんど無い。そのメンテ需要となればなおさらで、田舎には仕事が見つからなかったのだ。

 それでも彼は、妻だけでも福島に残し、夫婦が引き裂かれても出稼の道を選んだ。男らしい勇気ある決断だと思う。

 しかし、いつ果てるともない別居生活は負担だったはずだ。二軒を構えるだけで容易でない。そんな彼の背中を押したのは、当の母親だった。

 「夫婦が離れて暮らしてはだめよ、私は大丈夫だから。」

 彼は、親の言葉に従うことを決めた。多分、限界を悟ったのだろう。

 福島に残した奥さんは専門的なスキルを持った人で、それを活かせる職場が、やはり福島には無かったのだ。

 しかし。しかし、である。いざ故郷を去ってみて、望郷の念がますます募る。もともと自分は福島で生活していなかったのだから。

 郷愁の念、断ちがたく、ふるさとの思い出を綴ったのが今回の投稿だった。

 この気持ちは痛いほど分かる。おそらく震災や原発のために帰る家を失った人たちと同じものだと思う。

 手塚治虫の「火の鳥」に『望郷編』という章がある。僕の最も好きなエピソードだ。

 遥か未来、宇宙船で遭難した男女がエデンという惑星に不時着する。幸いにして人間が生きられる環境がある穏やかな星だったために、二人は協力して自分たちの生活を一から作っていく。

 子供もでき幸せに暮らしていけるはずが、二人の心には澱のようにぬぐえない感情が生まれる。

 それは「緑の地球」…狂おしいほどの望郷の念。そして二人は…というストーリーだ。

 自分のルーツを失うということは、それほどまでに喪失感があるものだ。

 朱雀RSは、おっちょこちょいだが正義感あふれる愛すべき男だ。

 おっちょこちょい…彼とはカラオケに行くべきではない。この間も同級会の二次会で一緒に付いてきたのだが、その時点で悪い予感がした(笑)

 案の定、その予感は的中。

 誰もが他人に気を配り譲り合いながら歌っている時に画面を見たら、朱雀は自分の曲だけズラーっと連続で入れているのだ。おーまいがっ!

 そんなヤツだけれど、嫌いにはなれない。

 恒例、好山園での流しソーメンで配車が不足した時があった。誰か…と言うと、ほんの一瞬、間があって「車出すよ」と言う。

 彼は大酒のみだ。三度のメシより好きかもしれない。そんな彼が運転を買って出た。

 むしろ、決断まで一瞬、間があったところがいい。みんなの中で、もともと呑まないで平気な者はたいした負担ではないのだ。

 彼は、自分の正直な欲望を理性で押さえ込んでから返事をしたのだろう。そういうところが「見える」のが人のいい証拠だ。

好山園

(火災で消失前。現在は再建。)

 結果、欠ける者もなくイベントは大盛況となった。

 彼は飲まないでも、設営などの雑事を率先してこなし、率先して盛り上げ役をやっていた。気遣いの男である。

 なんだ、やればできるんじゃない。(飲ませるとダメなのか。あはははは!)

 そんな朱雀だが、かなりハードな人生を送って来ている。彼が初めて通信の仲間になった時の記事「男は男である(青春彷徨編)」などで知った。本人いわく「挫折続きの人生」。親友を失った時の話など感涙ものだ。

 今思うと、このシリーズはずっと残すべき名作だと感じる。いつか本格リニューアルして「永久保存版」にしようと思う。

 ともあれ、朱雀はまた新たな道へ踏み出した。彼のことは、また続きを書くことがあるだろう。

 今は、愛すべき朱雀夫婦の新生活での発展を祈るのみだ。

 《配信:2011.11.29》

葉羽葉羽 頑張れよ、朱雀!

 

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