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 その171 ローリング・アーキテクチャ

「モーニングコーヒー」Benchi time

 まわって まわって まわって まわる~。

 僕が「回転」という言葉で真っ先に思い浮かべるのは、荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』第7部「スティール・ボール・ラン」の主人公の一人、ジャイロ・ツェペリの「黄金の回転」だ。

 正体不明の「スタンド使い」らと闘う彼の武器は「鉄球」。

 小さな鉄球に”黄金の回転”を与えることで、その波動は次元さえも超えて行くのだ。

  JOJO「スティール・ボール・ラン」

 ・・とは関係なく、今回のテーマは「ローリング・アーキテクチャ」(回る建築)。

 代表的なのは、一時爆発的に流行した「回転レストラン」だろうか。

ホテル・ニューオータニの回転ラウンジ

 これは宿泊する外国人観光客に富士山を堪能してもらおうと開発されたもので、その回転機構には「戦艦大和」の主砲を回転する技術が用いられた。

  ニューオータニのラウンジ内景

 これが人気を博し、日本各地のホテルやデパートに同様なスカイラウンジが拡散。

 バブル期の1980年代には、50か所余りの回転ラウンジが営業していたが徐々に縮小。ニューオータニの回転ラウンジも、老朽化により2018年に回転を中止している。

葉羽観光客を55年間楽しませたワイキキの回転式レストラン「Top of Wikiki」も、老朽化・コロナ禍の影響により2020年に廃業した。

  Top of Wikiki(廃業)

 しかあしっ!!

 この「回転する建築」というコンセプトが見直され、世界各地に新たな『回転建築』が作られ始めている。今回は、その最前線をレポートしたい。

◆ジラソーレ(イタリア)

 まずは、1935年にイタリアで建設された『回転建築』の創始とも言うべきL字型の建物「ジラソーレ」。

ジラソーレ(イタリア)

 イタリアのヴェローナ市近郊に建てられたもので、2基のディーゼルエンジンにより円形の土台ごと毎秒4mmの速さで回転する。

  設計図

 内装はEttore Fagioliという建築家が設計したもので、電動式のブラインドや多彩なモザイクを駆使した浴室などがある。

 

 なお、「ジラソーレ」はイタリア語で「ヒマワリ」のことであり、太陽の方向に向いたまま建物を回転させるコンセプトを表している。

◆デヴォン・ハウス(イギリス)

 次は、イギリス南部のデヴォンに作られた「デヴォン・ハウス」。

デヴォン・ハウス(イギリス)

 建物は円形で、敷地ごと回転する。アイディア開発から10年をかけて種々の許可を取り実現にこぎつけたものだ。

 上空から見ると、天板はひしゃげた正三角形のような形になっており、眺望と採光を最大限楽しめるように設計されている。

 

 建物の壁面は大きなガラス壁なので、部屋の中まで光が差し込んでくる。

 

 夜には星空を望むことができ、まるで天然のプラネタリウムのようだ。

葉羽カーテンが見えないが、おそらくブラインドが降りるようになっているものか?

◆スリー・ヘリオトロープ・ハウス(ドイツ)

 続いて、ドイツの「スリー・ヘリオトロープ・ハウス」。

  スリー・ヘリオトロープ・ハウス(ドイツ)

 をっと、これは主軸が細くてちょっと怖い気もいたしますが、1994年から95年にかけてドイツのフライブルク・イム・ブライスガウ市とオッフェンブルグ市、そしてヒルポルトシュタイン市に同時に建てられたもの。

 手すりを縦に繋ぐパイプが特徴的だが、実はコレ「バルコニーレーリング太陽熱温水器」という装置で、手すりの中に蓄えられた「水」が太陽光によって温められ、それを全館給湯に用いると言う「エコ住宅」。

 屋上の太陽光発電板も太陽の向きに合わせて回転するように作られている。

 

 これらの装置により、消費する以上のエネルギーを生み出しているとのこと。

◆スイートヴォラール(ブラジル)

 お次は、「スリー・ヘリオトロープ・ハウス」のコンセプトを巨大化して高層マンションに応用したブラジルの「スイートヴォラール」。

スイートヴォラール(ブラジル)

 2001年、パラナ州のクリチバ市にオープンしたもので、高さ50メートルの11階建。1時間で一回転するように作られている。

 左の写真で「黒い衝立」のような部分が見えるが、以下のような構造になっている。

 

 コレを見ると「水回り」が集約されているので、もしかするとこの部分は「固定」で円形部分だけが回るのかもしれない。(不明)

◆The Revolve House(アメリカ)

 今度は逆にタイニーハウス(小さな家)。サクラメントで開催された「タイニーハウス・コンペティション」に学生達が共同で出展したもの。

The Revolve House(アメリカ)

 コンセプトは、規模を縮小したサスティナブルな住宅ということで、このサンタクララ大学の学生達は、回転動力自体をソーラーパネルによって生み出す『回転建築』を企画した。

 建築費もできるだけ低コストに抑えられるようにしながら、家の中も非常に機能的に配置されている。

  家の中

 現在は、退役軍人の自立を促進し補助犬を訓練するための非営利組織Operation Freedom Pawsに提供され、活用されているという。

◆ダイナミックタワー/ ドバイ(アラブ首長国連邦)

 別名「ダヴィンチ・タワー」と称されるこのビルは、建築家デビッド・フィッシャーが2008年に計画した高さ420mの回転する高層ビル。

ダヴィンチ・タワー(ドバイ)

 このビルの凄い所は「各階がバラバラに回転する」ことで、各階の間には風力タービン、各階と屋上の屋根にはソーラーパネルが設けられてエネルギーを得る構造だ。

 実現すれば、下の画像のように動く。

 

 だが、まだ実現してはいない(笑)

◆リアクター(アメリカ)

 今回のラストは、ニューヨークの「OMI International Art Center」で展示されたコンセプトハウス「リアクター(ReActor)」。

 何が凄いって、見て下さいこの中心杭・・細っ!!

リアクター(アメリカ)

 長さ13.4メートルの直方体の家は、4.5メートルの中心杭だけで支えられており、「風の向き」に合わせて回転する。(つまり動力は無い)

 しかも、それだけではなく、この両脇の人物が室内を移動すると・・傾く!

  動くと傾く!?

 なかば「冗談」みたいな建物ですが、イベントに合せて実際5日間、この家で生活するパフォーマンスが行われたそう。

葉羽夜も寝返り打ったりして、オチオチ眠れなさそう(笑)

◆オマケ:移動する回転ビルMigrant Skyscraper

 もう一つオマケして、災害時などにはビルごと逃げ出せるという回転式ビル「Migrant Skyscraper」。

Migrant Skyscraper

 巨大なタイヤの内部に居住ビルと立体農場を完備し、自給自足できるというコンセプト。

 中のビルは「不動点」になっており、タイヤが回転しても「水平」を保つことができる。

 

 居住ビルには、キッチン、リビング、テラス、シャワー、トイレなども完備し、「タイヤの中」だけで生活ができると言う。

 でもコレ、買う人居ないんじゃないかな・・と思いますけど。

 「下水」はどうすんだ、肥料か?

 横風の突風が来たら、「ハイ、それまでヨ」・・じゃない?(笑)

 《配信:2025.7.13》

葉羽調べてみて思いましたが、やはり僕は今住んでいる純日本式家屋の方がいいです。うん、回らなくても(笑)

 

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