深海・超深海に棲息する奇妙な生物(クリーチャー)たち。
最初にご紹介したいのはこちらの魚。(魚?)
うわっとぉ、全身ほぼ透明!
これは南極海などに棲息する尾索動物の『サルパ』。魚類ではなく「ホヤ」の仲間。
寒天のようなプニプニした身体だが、実はコレ、地球上で最も成長が早い多細胞生物。(一時間で10%ずつ成長すると言うから驚異的!)
しかも驚くべきは、成体になると仲間同士が繋がって巨大なコロニーを形成する。
ほれ、このとおり・・
サルパの群体
なんじゃこりゃー・・という奇妙な姿。水中でこれを発見したらアッケに取られそう。
深海に大量棲息するこの『サルパ』、地球の生物で最も個体数が多い『オキアミ』を超えることもあるそうだ。
で、話はそこで終わらない。なんとこのサルパと共生するタコが居るとのこと。
その名はアミダコ。オスだけがこのような振る舞いをする。
アミダコ(オス)
アミダコのメスの外套長(頭のように見える部分の長さ)が30センチくらいなのに対し、オスの場合は約3センチと圧倒的に小さい。
上の画像は『ナショナル ジオグラフィック』に掲載されたもので、”34年ぶりに撮影された”という非常に貴重な写真。
40センチほどある「オオサルパ」の入水孔から進入し、一緒に海洋を浮遊して、メスを発見すると出て来て生殖行動するらしい。
ま、「視界」は抜群なので、見つけやすいのかも(笑)
「深海生物」の定義は水深200メーターより深い水域に棲息するもので、魚類だけで2000種以上が確認されている。
さらに「超深海生物」は水深6000メーター以上で、その実態は謎に包まれている。
この「超深海」エリアの水圧は"象1600頭分”という想像を絶するものだ。
(閑話休題)
さて、南極海から紹介したので、次は北極海。
こちらは、皆さん既にご存じの『クリオネ』。
まさに"氷の妖精"、可愛らしい姿。
生物学的には巻貝の一種だが、成長すると殻を失い中身だけで海中を浮遊する。
見た目は「天使」のようだが、獲物を捕食する時はガブリと噛みついてジュルジュル啜り込むので、その有様は「悪魔」と言われる(笑)
続いて、どこかで見たような漫画チックな姿をしている『オオグチボヤ』。
はい、ゲームの「パックン」ですね!(実際、コレをモデルにしたのかも?)
頭部が5センチ~7センチほど。大きく開いた入水孔からプランクトンや小型の動物を捕獲する「肉食性のホヤ」の一種。頭部の上にエントツのように突き出ているのが出水孔だ。
ユーモラスな姿をしているが「パックン」同様”凶悪”なのだ(笑)
大口を開くと、おーコワ!
次は東京湾や相模湾の水深30メーターから1300メーターに棲息するサメの一種『ミツクリザメ』。
スタイリッシュで俊敏そうな姿をしているが、このサメの最大の特徴は頭から伸びるブレード状の「吻」と呼ばれる器官。
コレは武器にもなるが、本来の機能は獲物を探すレーダーの役割。
だが、僕が着目したのはソコではなく、「吻」の下にある「口」の構造だ。
それはこんなもの・・
をわ~っ、エイアリアン!!! 口が身体から飛び出している。
きっと「エイリアン」の造形はコレを参考にしたのではないかと思うがどうか?
次は今回のラスト、その知名度では”深海魚の代表選手”とも言うべき『チョウチンアンコウ』。
主に大西洋の深海に多く棲息するとされるが、生きた状態で捕獲されることは少なく、大抵は底引き網漁で死骸が捕えらえるケース。
2020年に、江の島の定置網漁に漂着個体の死骸がかかったことがあり、すぐさま新江の島水族館で標本にし展示が行われた。
新江ノ島水族館でも過去53年間に三例しか入手実績がなく、”死骸”でさえも入手困難な深海魚なのだ。
ちなみに、チョウチンアンコウの「発行器」はそれ自体が自力発光しているのではなく、共生する発光バクテリアから光が発せられており、そのバクテリアの由来は分かっていない。
今回、チョウチンアンコウを採り上げたのは、その発光器の秘密やユーモラスな姿に着目したからではない。最も奇妙なのは「生殖方法」だ。
実は、発光器を持っているチョウチンアンコウはメスのみで、オスはとても小さく(メスの十分の一)、全く別の姿をしている。
チョウチンアンコウのオス(左)
成魚になったオスはアゴが発達し、深海でメスに巡り合うとその頑丈な顎でメスの腹に噛みついて離れなくなる。
恐ろしいのはその後で、オスの身体は次第にメスの身体と同化し、最終的にはメスに吸収されてしまうのだ。(おーまいがー!)
同化の過程で心臓も脳も消えていき、残るのは「精巣」のみ。こうして「精巣」を獲得したメスはいつでも産卵できるようになる。
水族館の3D映像
まだまだ謎の多い深海生物の生態。
第一回は、このへんでお開きとしたい。
《配信:2024.7.24》
深海生物は種類が多いので、シリーズ化することとします♪ |