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 その133 異形の翼
「モーニングコーヒー」Benchi time

 それは奇妙な、余りにも奇妙な‥。

 まずは最初にこの宇宙船を。

 

 はい、ご存じ「スタートレック」のUSSエンタープライズ号ですね。初めてこの船体を見た時には驚愕しました。何て奇妙な形の宇宙船!

 ところが、このエンタープライズ号にはモデルがあったのです。しかもそれは、実際に飛んでいた飛行機。コレです・・

 えええ~となりませんか? この背中に付いている円盤は何のため!?

 これは今から90年ほど前、1934年にマイアミ大学の学生らにって製造された「ネメスパラソル」。

 よく見るとこの機体には「主翼」が付いていません。そう・・この円盤こそ「ネメスパラソル」の「主翼」なのです。

 円形の「主翼」でも立派に空を飛ばせることを立証するために作られた実験機でした。まあ、エンタープライズ号の円盤は「主翼」ではなく「管制室」ですけどね(笑)

 「〇」がOKなら「✕」はどうなんだ、と言わんばかりの飛行機がコチラの「Xウィング」。

 この機体には「主翼」が付いているので、いったい何のためと思われるでしょうが、これはジェット機の高速性とヘリの垂直離着陸の能力を合体させるために、NASAとDARPA(国防高等研究局)が1983年からシコルスキー社に開発させた機体。

 そう・・上部の「X機構」はプロペラなのです。

 残念ながらこの計画は失敗し、5年後に開発が打ち切られています。

 艦上機にとって「短い滑走距離で離着陸できる」あるいは「垂直離着陸できる」能力は重要なマターであり「夢」でした。

 現在はアメリカのオスプレイやハリアーなど垂直離着陸機が運用されていますが、これらもいきなり実現したワケではありません。

  オスプレイ

 その雛型となったのが、1944年からアメリカ海軍がチャンスボート社に開発させた艦上戦闘機「チャンスボートXF5Uー1」です。

 ごらんのとおりの「円形翼」。とすれば、最初に紹介したマイアミ大学の「ネメスパラソル」がヒントとなったのは、想像に難くありません。

 円形翼は通常の前方飛行に耐えられるのはもちろん、ホバリング「空中静止」に大きな能力を発揮するのです。

 トXF5Uー1は、翌年に太平洋戦争が終結したとこと「致命的欠点」のため、一年で開発中止となりました。「致命的欠点」というのは、垂直離着陸性能は抜群であったものの、前方の大きな4枚ブレードのためミサイルが発射できないというものでした。(気づけよ!)

 なお、この機体は「フライング・パンケーキ」という愛称で親しまれました。なるほど。

 さて次は、「Xウィング」のように、異なる二つのものをかけ合わせたハイブリッド飛行機として2006年、ロッキード・マーティン社が制作した「P-791」。

 これも、えええ~ですね。なんと胴体が三つ!?

 これは見ての通り、飛行船の空中静止能力と飛行機の高速性をいいとこどりした機体。底の四つの「足」はクッションだそうです。

 乗員が二人で、搭乗者19名と20トンの貨物を搬送することができ、実際に運用されています。

 なお、高度2万フィート(約6000メートル)の上空に、最長3週間浮かんでいられるということです。(観測船としても有用か?)

 さて次は、なぜ飛べるのか不思議な飛行機エクラノプラン。

 1967(昭和42)年、アメリカの偵察衛星がカスピ海に面するソ連のダゲスタン共和国で飛行機のようなものをキャッチ。

 巨大な機体の割に翼が小さく、CIAでも「おそらくソ連の新兵器」と推測したものの正体不明。CIAはこの謎の物体に「カスピ海の怪物」という愛称を与えました。

 後にソ連のグラスノチ(情報公開」で、この機体は実は水上を滑空できる「船」であることが判明。

 背中に六つの発射口を備えていますが、もちろんコレは軍用船で、ここからミサイルが発射できるのです。

  ミサイルを発射している様子

 上空を飛行することはできませんが、水上(あるいは平らな陸上?)では、その高速性により大きな脅威を及ぼす「地面効果翼機」(エクラノプラン)であることは間違いありません。

 次は「全翼型爆撃機」のノースロップB49。

 写真は、1947年にテスト飛行中の試作機YB49。何と「翼」だけで飛んでいます。

 最大時速797キロ、航続距離は爆弾を4.5トン搭載して約6,400キロの能力があります。

 しかし見てのとおり、翼の高さが無いためにアメリカの虎の子、大型原子爆弾を搭載することができませんでした。

 このため、爆撃機ではなく偵察機としての運用が検討されましたが、試作機の墜落事故などがあり、お蔵入りとなった幻の飛行機です。

 次は”最も醜い飛行機”と呼ばれる「プレグナント・グッピー」(妊娠した魚)。

 何て不格好!? しかし、この形にはワケがあるのです。

 1960年代のアポロ計画など宇宙事業に用いるロケットの部品は巨大な物が多く、しかも全米各地で生産されるため、コレラを輸送する手段が大きな課題でした。

 そのために、NASAがパンナム377をベースにBOAC(英国海外航空)の胴体を組合せ、全長約40m、全幅43mというオバケ飛行機をエアロ・スペースライン社に作らせました。

 このコンセプトはその後、「スーパー・グッピー」などの後継機に引き継がれ、現在も運用されています。(※右の背景画像も「スーパー・グッピー」)⇒

  スーパー・グッピー

  同上、荷下ろし風景

 さて今回のラストはコチラ・・

 え、ナニナニ!? どうなってるの!!!? 実はコレ、二機の飛行機が連なった世界最大の飛行機、ストラトローンチ社の「ロック」。

 ちょっと見、さほど大きなようには見えないかもしれませんが、翼の端から端まで約117mという超巨大な機体。特筆すべきは約250トンの貨物を搭載して上空まで飛ぶことができるペイロード(有効搭載量)。

 で、この能力を持って何を運ぶかと言えば、宇宙ロケット。そう、この「ロック」は宇宙船をぶら下げて上空まで運び、そのまま打ち出すために作られたロケット発射母機なのであります。その全貌が分かる画像がコチラ・・

  ロックの全貌

 オマケに「ロック」を格納できる巨大格納庫がコチラ・・

  ロック格納庫

  ただ、同時に開発されていた「ロック」打ち上げ用ロケットが相次いで開発中止になるなど、「待ち」の状態が続いています。

 う~ん、維持費や整備費だけでも大変そうだな。では、お後がよろしいようで。 

 《配信:2023.11.15》

葉羽 JIJI.COMほかのサイトから情報を引用させていただきました。

 

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