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 その129 戦闘糧食
「モーニングコーヒー」Benchi time

 「ミリメシ」と言えばお分かりだろうか?

 戦闘糧食。いかつい名前だが、これは陸上自衛隊が戦闘時(活動時)に携行する非常食のこと。誕生したのは1954年の自衛隊が創設された年・・おっと、僕が生まれた年!

 何と僕が生まれた1954年は、福島県庁本庁舎が落成した年であり、ラーメンの幸楽苑が創業した年でもあるのだ。(お互い何の関係もないが。)

  幸楽苑のルーツ/会津若松市「味よし食堂」1954年

 この「戦闘糧食」は、東日本大震災の際、60万食が提供されたほか、南スーダンのPKO活動に出仕した陸上自衛隊に実際に使用されたものだ。

 この「戦闘糧食」の報道関係医者向け試食会が防衛省で開催され、レポートされているので、お国を守る彼らの胃袋を支えるものがどんなものなのか見ていきたい。

 まずは、代表的な「白米」・・

 これで2合。量としては十分。おかずの缶詰と一緒に食べる。

 こうした缶詰タイプは「戦闘糧食Ⅰ型」と呼ばれ、1954年から2015年まで提供された。現在はすべてレトルトタイプ(Ⅱ型、1990年~)に切り替えられている。

 味御飯タイプの「しいたけ飯」や・・

 

 腹持ちの良いもち米を用いた「赤飯」もあった。

 

 赤飯は、東日本大震災の救助活動に当たった隊員から「祝い事のようで食べる気になれない」との指摘を受け配給停止となった。

 腹持ちの良さという「効能」から、現在のレトルトタイプ「Ⅱ型」には残っている。

 実際の味はどうなのか? 試食した記者の感想によると、温めてすぐならいいが、時間がたつと粘土のように固まり、箸が入らないほどになると言う。

 あくまでも、通常の食糧・食材が入手できない環境で食する「携行非常食」なのだ。

 一方、オカズの方はと言えば、まずは「鶏肉野菜煮」・・

 ほぅ・・これは美味しそうだ。見た目も食欲をそそる。食感も申し分ないとのこと。

 次に「味付けハンバーグ」・・

 

 をっと! コレはハンバーグの原型を留めず、缶いっぱいに肉が詰め込まれている。(グリーンピースも見える。)

 そして「まぐろ味付け」・・

 

 こちらもギッシリ。そしてホラン千秋の「茶メシ」ではないが、色が濃く味も濃く塩分が多い。また、一食で1100カロリーとカロリーも多い。

 前線で活動する自衛隊員ならこれで丁度よかったのだろうが、後方支援の隊員からは「多すぎ」との指摘もあって見直し中とのこと。現代の戦闘糧食はまだまだ進化中なのだ。

 では、副食として隊員に最も人気が高いという「たくあん漬け」がコレだ・・

 

 結構、大きめにカットされ、細切り昆布や唐辛子がアクセントとなっている。やっぱり日本人ならコレか。

 なお、このたくあん漬けは、鹿児島桜島で取れた大根を青森の加工工場で漬けた手の込んだ一品であると陸幕幹部が胸を張ったと言うが、「手間」ってそう言うこと?と思う(笑)

 さて、1990年から提供開始された「Ⅱ型」を見て行こう。

 まずは「スタミナ麻婆豆腐」・・

 左のご飯は、白米に梅シソふりかけ+蟹炒飯(合計2合)、右がニンニクが効いた味噌味の麻婆豆腐。

 レトルトタイプになると、このように御飯二種+副食がデフォルトになり、副食の種類も「Ⅰ型」の8種から一気に21種にバリエーションが増えた。(計1100カロリー)

 粘土飯の時代から見れば格段に「食」らしくなっている。

 次に「牛肉じゃが」・・

 

 左は「栄養強化米+五目飯」。

 右の肉じゃがは高評価だったが、左のカルシウムを強化した栄養強化米は茶色に染まってどう見ても美味しそうに見えない。改良検討中とのこと。(最初からやれよ!)

 そして「鶏だんご野菜あんかけ」・・

 

 左は「白飯に野菜ふりかけ+中華風おこわ」。

 中華風おこわは、もち米の食感とチャーシューの旨味が本格的なもの。右の野菜甘酢あんの鶏だんごは上品な味だが、団子が4個しか入っていない??

 なお、これらの実際の食べ方だが、隊員は付属トレーの片側に飯を入れ、そこにオカズを流し込んで食べるのが一般的だそう。

 

 まあ、カレーライスを食べるような要領だろうか。

 主食はご飯だけなのかとお思いの貴方、ちゃんとパンもあるのです。ということで「ベーコンポテト」と組み合わせたメニュー・・(右上:五目炒飯)

 こちらは、ボロニアソーセージと組み合わせたメニュー・・(右下:チキンライス)

 最初のパンはシーベリーという果実が入ったパンということだが存在感はなく、長期保存パン独特の匂いが気になるという。

 後の方はドライアップルを加えたパンで匂いが緩和され、美味しく食べられたとのことだが、やはりパンの保存には課題があるか?

 なお、二番目のメニューの方は、戦地のウクライナにも提供されて好評を得ていると言う。

 ここまで見てきて、僕的に気になるのは「麺類」が無いこと。隊員の思いも同じだったようで、その強い希望に応えて考案されたのが、次の「マカロニ・ナポリタン」・・

 左は卵そぼろとチキンライス。(どうしてもご飯を付けたいんだ?笑)

 で、ナポリタンソースは中々の力作だそうだが、さすがにマカロニにアルデンテ感は望むべくもなく、これをナポリタンと呼ぶのは⤵

 ただし、チキンライスに卵そぼろをぶっかけてオムライス風にし、そこに右のソースをかけると中々のグレードになると言う。(でも皆が望んだ「麺類」じゃないよね?)

 ちなみにコレもウクライナに提供されているメニュー。

 レビューを全体を通して見てみると、一般人にとっては塩分過多で味が濃すぎる感じ。また、御飯がどうしても「めっこ飯」になって、特に炒飯のパラパラ感は再現困難か。

 ただ、飯盒も水も使えない中、最後の命綱として食べる非常食としてはやむを得ないかもしれない。

 それにしても・・もっと改良できるんじゃないのか。日本人なんだから。

 なお、これら戦闘糧食は製造後3年間保存され、消費期限の切れる3年目に隊員の訓練中食糧として供給されるとのこと。

 また、航空自衛隊の場合は、不時着や遭難を想定した特別な戦闘糧食があると言う。

 隊員の皆さん、これを食べてお国のために頑張ってくださいね!

 《配信:2023.9.20》

葉羽戦闘糧食(ミリメシ)は現在、ネットで注文して入手できるそうです。

 

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