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 その125 石との共生
「モーニングコーヒー」Benchi time

  石のぬくもり・・。いや、岩盤浴の話ではありません(笑)

 若い時にはペットなど動物に興味を持ち、年齢と共に盆栽など植物に興味が移り、やがて晩年になると石など無生物に興味を持つようになる・・と誰かが言っていた(気がする:笑)。

 そんなワケで、最近、石に興味を持ち始めた僕は「石の建造物・構造物」について考えています。

 石の建造物と言えば、誰しも思い当たるのはエジプトのピラミッドやスフィンクス、そして英国ソールズベリーのストーンヘンジなどでしょうか。

 世界遺産にも石の構造物は多く登録されており、中でも美しいのはプラハを流れるヴルタヴァ川にかかるカレル橋。

 アーチ型の石積みはさぞや大変だったでしょう。

 そう言えば、最近のダッシュ島でもこんな石積みを造っていたような?

 

 造り方によっては、こんな長大なアーチ橋も可能なんですね。

 

 この構造を眺めていて思い付いたのが軽井沢の内村鑑三記念堂、通称「石の教会」。

 をっと、使用中でしたか。(失礼!)

 どうです、美しいじゃありませんか。石積みとガラスによって形作られた荘厳な空間・・まさに石の建築の極致!

 設計は近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトの弟子であるケンドリック・ケロッグ氏です。

 いやいやいや、石の名建築ならまだまだある。

 コチラは建築家"世界の隈研吾"による「角川武蔵野ミュージアム」。

 彼は「建築の永続性を叶えてくれる素材が石だった」と言っている。

 あたかも、1200トンもの花崗岩が大地から湧き出したような造形ではないか。

 お次は、南イタリア、アルベロベッロの石造住居群「トゥルッリ」。

 トゥルッリの語源は、ギリシア語で「ドームの形を持つ円形の建物」を表す「トロス」だそうな。

 15世紀ごろ、この地の領主であったアクアヴィーヴァ伯爵は、ナポリの王の許可を得ず町を興して私腹を肥やしていた。

 この悪伯爵は国王から課せられる税金を逃れるため、農民らに「徴税使が来た時にすぐに解体できる家を造れ」と命じ、農民たちはこの地で豊富に採れる「キアンカレッレ」という石灰岩を積み上げただけの「いつでも壊せ、造り直せる家」を考案したとのこと。

 

 この美しい街並みにも、そんな悲しい歴史が秘められていたのですね。

 なお当地は、日本の世界遺産「白川郷」と姉妹都市提携を結んでいます。

 

 なるほど・・「とんがり屋根」繋がりでしょうか?

 次は、上にも登場した”世界の隈研吾”が2015年に中国杭州に建設した「中国美術学院博物館」。

 厳密には「石」ではなく焼き物の「瓦」ですが、まっいいか(笑)

 元は茶畑だった中国学院のキャンパス内に、近隣地区の古瓦を再利用して組み上げたクラフト・ミュージアム。

 平行四辺形を単位とする幾何学的分割システムによって、複雑な地形に合せたユニットを形成し、そこに屋根を架けて繋げることにより、瓦屋根が連続する「村」のような風景が出現。

 

 集めた古瓦はサイズもまちまちだが、それがまたいい。この一角を周囲の風景に自然に溶け込ませる役割を果たしている。

 ここで問題です。さて、次の建物は何でしょう。

 日本人なら知っておかなければならない建物です。

 この威厳に満ちた石造の建物・・そう、東京都千代田区にある最高裁判所の庁舎です。(ま、お世話になることも無いと思うので知らなくてもいいか:笑)

 現庁舎は、建築家岡田新一のデザインが採用されて1974年に竣工。全面花崗岩で造られ、日本建築学会賞を受賞した由緒ある建物。

 なお、大法廷に続くホールには正義の女神ユースティティアのブロンズ像があるが、この像には目隠しがされていない。

  正義の女神@最高裁

 我々がよく目にする正義の女神のイメージは、米国最高裁にある”正義の女神”の影響によるものだろう。(※世界的には”目隠し無し”が一般的。)

  正義の女神@米国最高裁

 そういえば、国会議事堂もまた日本の代表的な石造建築だ。

  国会議事堂

 1936年に竣工した議事堂は、空襲に耐え終戦も乗り越えて日本の近代建築のシンボルとなっている。

 振り返ってみれば、ほかにも東京駅(稲田石)、日銀本店(花崗岩・安山岩)、東京国立博物館(大理石)、両国国技館(稲田石)など、我が国には石造りの名建築が数多く造られている。

  両国国技館(稲田石)

 石と共生してきた国なんだな・・とさえ思う。

 次は2016年に広島市福山にオープンした「神勝寺 禅と庭のミュージアム」の代表的施設であるアート・パビリオン「洸庭」。

 禅の世界をアートや建築と共に味わうことをコンセプトとしたミュージアム空間のシンボル施設として造られた全長46メートルの建物は石ではなく木で造られたもの。

 ならば「石」はどこにあるかと言えば、その周囲に広がる広大な「石の庭」だ。

 その佇まいは、あたかも石の海(ストーン・オ-シャン)に浮かぶノアの箱舟のよう。

 

 話はそれるが、ジョジョの奇妙な冒険第6部『ストーン・オーシャン』の意味は何ぞやと考察したことがあり、ふと気づけば、第6部の主人公空条徐倫のスタンド名が「ストーン・フリー」、第5部ジョルノ・ジョバァーナが「ゴールド・エクスペリエンス」、第4部東方 仗助が「クレイジー・ダイヤモンド」、第3部空条 承太郎が「スター・プラチナ」(第1部・2部はスタンドが登場しない)で、いずれも『鉱物』の名が入っている。

  空条徐倫

 そう・・ジョジョの系譜は「石の血脈」なのだ。ま、ここではこれ以上掘り下げないが(笑)

 さて、今回のラストは、ポルトガルにある”巨石と共生する村”「モンサント」。

 えええええ~!!!?

 実は先週、この村のことをTVで観て「石」の話をまとめたいと思ったのが今回特集のきっかけだったのだ。

 これは、住宅地に巨石が崩落してきたワケでは無く、そこにあった石をそのまま天井や壁に利用して住宅にしてしまったのだと言う。

 

 スペインへの国境近くにあるこのモンサントは人口が200人あまりというとても小さな村。

 この地に散在していた巨石は村人の信仰の対象で、いつしかその聖なる石と共生しようと、このような住宅が造られて行ったとのこと。

 家の中はこんなふうになっている。

 

 ぅわわわわ!(押し潰される心配などしてないのだろうか?)

 街中には石畳や石壁など、やはり「石」を利用した街並みが。

 

 その中にも、このように巨石が組み込まれている。

 

 岩だけ・・と思ったら、ちゃんと右側に「入口」があった!!?

 ・・うん、何とも逞しい村ではないだろうか。人間ってすごいな。

 《配信:2023.7.26》

葉羽「三匹の子豚」でもレンガで家を作った三番目だけが生き残った。やはり石の家は最強。

 

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